(本記事は、谷口 弘和氏の著書『
100年安心できる! 「いい家」の建て方』ぱる出版の中から一部を抜粋・編集しています)
住宅展示場に行く危険
土地探しは、どんな家を建てるかをふまえて決めることが大事です。また、そのようにして、良い土地に巡り合うまで親身にサポートしてくれる業者に巡り合うことがとても大切だといえます。
ところが、あるハウスメーカーが実施したアンケート調査によると、「マイホーム購入を検討しだして、真っ先に足を運んだのは住宅展示場だった」と回答した人が、なんと65%にものぼるのです。
そうした際にも、資金計画がきちんとできていれば良いのですが、そうでない場合は、どうなるでしょう。
モデルハウスを見ていたら、家を買いたい気持ちが強くなった。
↓
借り入れ可能額ギリギリの高価な家を購入してしまった。
↓
住宅ローンが家計を圧迫し、子供の教育費まで手が回らなくなった。
↓
家計をやり繰りするために生命保険まで解約し、老後の不安が増した。
というようなことが現実に起きているのです。この失敗は、事前にきちんと資金計画を立てるという手順を踏まなかったことが原因です。
住宅展示場で豪華なつくりのモデルハウスを見てしまえば、
「私もこんな素敵なデザインの家に住みたい!」
「このモデルハウスと同じシステムキッチンにしたい!」
と、誰しも多少は心を躍らせるでしょう。
ひとたび心が舞い上がってしまうと、もう冷静な判断はしにくくなります。借り入れ可能な限界ギリギリまでローンを組み、「家は立派だけれど、家族は不幸せ」ということになってしまいがちです。
限界ギリギリの融資のリスク
「いくらまで借りられるか」と「家づくりにいくら使えるか」とは異なります。住宅ローンを組む際は、「いくらまで借りられるか」でははく、「月々いくら返せるか」をしっかりとおさえて考えることが鉄則です。
より具体的にいうと、この先5年間、そしてさらにその先の5年間、月々の返済額をいくらに設定すれば無理がなく、何年で完済するのか、ということをシュミレーションする必要があります。
子供の教育費、家電製品や車の買い替え、家のメンテナンス費用、旅行、医療など、家族の暮らし全体にかかる費用を見越して、無理のないプランニングをしていただきたいと思います。
現在は、35年ローンが一般的で、ローン完済時に60歳を超えるとしても融資が受けられるケースもあります。中には、完済時80歳まで貸与を認める金融機関もあるようです。
しかし、実際に35年間以上もローンを払い続けるというのは、とても大変なことです。35年、あるいは40年という長いスパンで考えるのではなく、これからの5年、10年というように短いスパンで、月々(あるいは年間)確実に払える額を割り出し、自分がいくつまで働けるか、いざというときはどのようにして家計を支えるか、などを考えたうえでローン設計をすることが望ましいでしょう。
現実をしっかり見据えた資金計画は、幸せな家づくりの基盤となります。
また、家づくりには家そのものを建てるための費用「本体工事費」の他に、必要に応じて、次のような費用がかかることを忘れないでください。
・付帯工事費(全体額の約15~20%)
(設計、敷地整備、地盤整備、上下水関連工事、電気引込工事、ガス工事、冷暖房工事、内装、門や植栽といった外構など)
・諸費用
(住宅ローン契約に関連する費用、契約時の収入印紙代、不動産登記に関連する費用、税金、火災保険料、上下水道加入金、地鎮祭費用、上棟式費用、引っ越し費用、家電製品や家具の購入代金など)
入居後には、不動産取得税や毎年の固定資産税、都市計画税もかかりますので、手元に資金を残しておくこともお忘れなく。
こうした諸々の費用と予算組みに関して、「家づくり」を任せる建築業者が相談にのってくれると心強いですね。でもそこで、やり手の営業マンが出てきて、
「お客様、どのようなことでもご相談ください。やはり気になるのはご予算のことですよね。ではさっそくですが、頭金はいかほどご用意なさっていますか。年収は、だいたいどれくらいでしょう。それでしたら、このぐらいまでローンが組めますよ。この物件がお気に入りでしたら、これとそっくり同じ仕様で、お値段は限界ギリギリまで引かせていただきます。ぜひぜひご検討ください」
などと、押し付けがましいセールスをされると嫌ですよね。
限界ギリギリの値引きと、限界ギリギリの融資。それが本当にお客様のためになるのでしょうか。
私の工務店では、もちろんそんなことはいたしません。私たちはファイナンシャルプランナーと提携し、顧客の資金計画相談に無料で応じています。その模様を少しご紹介しましょう。
お客様が家づくりのご相談にみえ、資金計画がまだきちんと立っていないようなら、ファイナンシャルプランナーと相談する時間をつくっていただきます。そして、まずは家の資金調達法として「自己資金、住宅ローン、贈与」など、さまざまな方法があることを確認していただきます。
続いて、住宅ローンの金利や返済方法にも各種タイプがあることをご理解いただくようにしています。
また、住宅購入により受けられる優遇措置、贈与税の非課税措置などについても、わかりやすく解説し、無理のない返済計画を立てていただけるようサポートしています。
こうして徐々に資金計画が明確になっていくと、家づくりプランもはっきりしてきます。
谷口 弘和
株式会社木の家専門店谷口工務店代表取締役。1972年、滋賀県蒲生郡竜王町生まれ。仕事一筋の父親である大工の家に育つ。彦根工業高校にて建築の勉強をした後、大手ハウスメーカーに就職。全寮制の会社で修業をしながら大工として働きはじめる。独立を決意し、4年後の22歳の時に独立する。現在、年商14億円、年間新築着工数33棟の会社と成長している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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