(本記事は、木下 たかゆき氏の著書『
不動産投資「勝者のセオリー」』ぱる出版の中から一部を抜粋・編集しています)
まずは「借りる」ことを優先する
続いて、金利の交渉について解説します。
CFを増やすために、調達金利はできる限り抑えたいところですが、最初の段階では金利交渉を考えなくても大丈夫です。
・まずは、借りることを優先する
・金利交渉はその後
ということでごちゃごちゃと交渉せず、借りることを最優先しましょう。
金利は後からいくらでも下げられるので、ある程度のロットを借りられるだけ借りてしまうのです。その後、下げられるタイミングが来たら、バチっと下げてもらってください。
また、融資を引くため、そして金利交渉をしていくためには、融資金額、期間、金利、元金返済の猶予期間など、様々な事項があります。
どの交渉についても、「決算書を良い状態にしておく」ということが重要です。
もちろん節税も大事ですが、ある程度税金を納めていかないと、銀行がついて来ないのです。
特に、物件を買いすぎると決算書が悪くなります。
物件を購入した年は、一過性の諸費用や修繕費、広告費など、色々な経費が掛かってくるので、下手をすると営業利益はマイナス、経常利益もマイナスで赤字になってしまいます。
きちんと説明すれば理解してもらえることもありますが、なるべく利益をきちんと出した上で、銀行のスコアリングを良くすることを心がけましょう。
ただし、スコアリングの仕方は、銀行によって異なります。
マイナス利益を、物件購入に伴う一過性の経費と捉えるのか、そうでないかは銀行によって違うので、そのあたりを担当者に率直に聞き、決算書の着地内容をすり合わせるといいでしょう。
「来期の営業利益と経常利益は、これくらいでいこうと思うけど大丈夫ですか?」
この問いかけが、融資に積極的な銀行や、これから融資が開くであろう銀行とのパイプ作りに、効果的に作用します。
融資が引けなくなるパターンとは?
1~2棟物件を買えた後で融資が引けなくなり、それ以上買うことができない、というパターンに陥っている人をよく見かけます。
その多くは、最初の物件を購入するときに、決算書や必要書類をすべて人に任せており、物件選定も融資つけも業者任せという「依存系」の人たちです。
こういう人たちは、そもそも良くない物件を買ってしまっている場合が多く、当然ながら、銀行開拓も全くしていません。
最初にラクをしたツケが、後になって出てきているのです。言ってみれば、自業自得です。
融資の仕組みを簡単に説明しましょう。
最初の1棟目は、個人の属性に頼った融資を引くことができるため、物件の評価がイマイチだったとしても、意外にあっさり買えることが多いものです(先に出た「一法人一物件スキーム」は、この1棟目は買いやすいという融資の特性を利用した手法です)。
しかし、2棟目3棟目となると、銀行から事業者として評価されるため、融資を引くことが簡単ではなくなります。
決算書の影響もあります。物件を買うことで、諸費用の他にも修繕費や広告宣伝費などもかかってくるので、現金が減っています。
特に決算期間際で買った物件は、まだ売上が決算書に反映されていない状態で、長期借入金だけが載ってくるので、自己資本比率も債務償還年数も悪くなります。
そうすると、決算書の内容がどうしても悪くなってしまうのです。
不動産以外の事業が儲かっていて、悪い決算書をカバーできるならそれでも問題なく買っていくことができますが、属性に頼った融資の引き方をしていると、債務超過として見られてしまいます。
その場合は、地道に残債を減らし、銀行の評価を上げていくしかありません。
買値と同額程度で売れそうであれば、一旦売却してリセットすることもできますが、それができる人ばかりではないでしょう。
メガ大家を目指すのに、この段階で躓(つまづ)いていてはいけません。
何棟も買い続けることを想定して買っていくには、スタートの段階からしっかり銀行の開拓をして、各銀行の融資に対する特徴を押さえておくことが必要です。
・属性や決算書を重視するのか
・担保評価を重視するのか
・買いたい物件に、どのくらいの評価を出すのか
それらをしっかり把握して、なるべく多くの銀行から評価を出させた上で、評価の高い物件を買うことが重要です。
物件評価を重視する銀行の場合、融資額が物件評価を上回らなければ、次に買いたい物件の融資づけの際に足枷になることはありません。それどころか、融資余力があれば2棟目を買うときに、1棟目を他の銀行で共同担保にすることもできます。
さらに、複数の銀行が評価を出してくれるのであれば、いざ売却となったときにより高く、スピーディに売れる可能性も高くなります。
評価の出る物件を選ぶには、次の点を意識することです。
・積算評価が売価より高い物件
・収益性の高い物件
言い換えれば、「相場より安い物件」を買うということです。
ちなみに、銀行の担保評価は積算評価を採用するのか、収益還元評価を採用するのか、それらの混合なのか、銀行によって方法が異なります。
そのため、同じ物件でも、融資が出る銀行と出ない銀行があるのです。各銀行の評価方法を知ることで、それに合った物件を持ち込むことができます。
以上をまとめると、
・評価の出る(積算評価が高く、相場より安い)物件を買うこと
・銀行を開拓し、各行の評価方法や評価額を押さえること
・出口を意識して買うこと
この3つが、物件を短期間で買い続けるための、重要なポイントになります。
補足になりますが、もしも、ダメな物件を買ってしまい、次の融資を引くことが困難な場合は、どうしたらいいのでしょうか。
打開策としては、次のようなものがあります。
・小ロットのボロ物件を現金で買って再生する
・銀行では融資が付かない高利回り物件を、ノンバンクの融資を引いて買う
ボロ戸建など、小ロットの物件を再生して、売却を絡めながらキャッシュを増やしていくのです。このやり方を選択肢の一つとして知っておくと、苦境から抜け出すための武器になってくれるでしょう。
木下 たかゆき
不動産投資家。1982年生まれ。大阪府和泉市出身。関西学院大学商学部卒業後、求人広告の営業などを経て2010年12月に不動産投資をスタート。問題有りの物件を相場より圧倒的に安く購入して再生する方法で規模を拡大。35才で満室想定家賃約7億円を達成する。トータル売却益も10億円以上ある。 8年間の投資総額は60億円以上。2018年6月時点で住居系マンション、アパートを中心に、オフィスビル、テナントビル、ソシアルビル(スナックビル)など計70棟1200室弱の不動産を所有する。7億円の家賃収入以外に毎年数千万~5億円の売却益があり、現在も資産を拡大中。趣味は旅行とグルメ。毎月、国内外を旅しながら各地の名物を食すことが何よりの楽しみ。
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