住宅・不動産
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2020.6.19

【連載#2】税制改正で変化した「海外中古不動産」への投資

昨年末に閣議決定した「2020年度税制改正大綱」によって、一気に多額の減価償却を行って収支を赤字にするという海外中古不動産の節税スキームを使えなくなります。具体的にどのような見直しが行われるのかについて、きちんと把握しておきましょう。

税制改正後は「簡便法」による短期集中の減価償却が不可能に!

見直しのポイントについてクローズアップする前に、まずは海外中古不動産を用いた節税スキームを簡単におさらいしましょう。海外で所有する不動産で得た収益に対しては、必要経費を差し引いたうえで日本の税金が課されます。

最も大きな必要経費となるのが減価償却費で、通常は取得価額を法定耐用年数で割った金額となります。ただし、法定耐用年数を超えて現存している中古物件については、「簡便法」を用いて耐用年数を見積もるルールになっていました。

法定耐用年数は建物の構造によって異なりますが、「簡便法」を用いるとそれらの20%に当たる年数(端数は切り捨て)に短縮化されます。たとえば、レンガ造・石造の物件は法定耐用年数が38年で、その20%(7年)で取得価額を一気に減価償却できます。

したがって、償却期間中は家賃収入を上回る減価償却を計上し、その赤字を他の所得と損益通算することで所得税を節税できたわけです。多くの資産家がこのスキームに殺到したことから、2016年に会計検査院は海外中古不動産の耐用年数判定を見直すべきだと指摘し、密かに検討が進められ今回の税制改正に至りました。

残念ながら税制改正後は、「簡便法」によって判定した耐用年数を用いた海外中古不動産の減価償却費は経費として計上できなくなり、他の所得との損益通算は不可能となります。
 

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出口戦略(転売)では税制改正が有利に働くケースも!?

節税スキームの無効化は、税制改正で「国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例」という制度が新設されることで実施されます。簡単に説明すると、「海外中古不動産における収支が赤字となっている場合はその減価償却費を計上できない」という新たなルールが用いられるのです。

具体的に計上できなくなることに言及しているのは減価償却費のみで、物件の管理費などといった経費は改正後も計上できるものと目されます。とはいえ、赤字の収支にして他の所得と損益通算するという手法は完全に不可能となりました。

ただし、その一方で今回の改正は、出口戦略(転売)を実行する際においては有利に働く可能性があります。前述の特例に基づいて経費に計上できなくなった海外中古不動産の減価償却費は、転売時に不動産の購入価格から差し引かなくて済むようになるからです。

通常なら、転売時に譲渡益課税を計算する場合は、実際の購入価格からそれまでの減価償却費を差し引いた金額を取得価格とみなします。そして、売却価格との差額(譲渡益)に税金が課されます。

減価償却費を購入価格から差し引かなくてよくなれば、売却価格との差額はおのずと少なくなり、その分だけ譲渡益課税の負担が軽くなる可能性が出てくるわけです。

今回の税制改正内容が適用されるのは、2022年以降に実施する確定申告(2021年分)からになります。ただ、2020年度税制改正大綱の内容から判断する限り、その前から取得していた海外中古不動産の減価償却についても、さかのぼって適用される可能性も考えられます。

このように、今回の改正は海外中古不動産を用いた資産運用に大きな影響を及ぼしそうです。もっとも、節税スキームが完全に封じ込められて、どのようなパターンでも用いられなくなったわけでもなさそうです。

いったい、どういった手法を用いれば、これまで通りの節税を図ることが可能なのでしょうか? 次回において、詳しく説明することにします。
 

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