住宅・不動産
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2020.5.3

老後の住まいは賃貸それとも購入?家を買うときに注意すべきポイントは?

(画像=Dariusz Jarzabek/Shutterstock.com)
(画像=Dariusz Jarzabek/Shutterstock.com)
自由な持ち家がいいか、その時々のライフスタイルに合わせて賃貸住宅に住むべきか。この2つの選択肢のどちらを選ぶかは、結局のところはその人が「住まい」に何を求めているかで変わってきます。どちらにも長所と短所があり、永遠に答えの見つからない問いなのかもしれません。

とはいえリタイア後の、またはセミリタイア後の穏やかな日々を、自分のこだわりに満ちた気兼ねのない環境で過ごしたいと思うのも自然なことです。毎日通勤し、お子さんたちと同居していた頃とは広さや立地に求める条件も変わってくるため、「終の棲家」にふさわしい手頃な物件もあるかもしれない、そう考える人も多いことでしょう。

「老後の住まい」にふさわしいのは賃貸か購入か、じっくりと比較していきましょう。

老後の住まいをどう考えるべきか?

子育て世代が住まいに求める条件と、子どもたちが巣立ったあとの老後の住まいに求められる条件とでは、当然のことながら大きく異なります。その違いを順に見ていきましょう。

夫婦だけで暮らす

まずは広さです。お子さんが2人以上いるご家庭なら、家族が暮らしやすい賃貸物件の少なさに直面した経験をお持ちではないでしょうか。これは分譲住宅が基本的に住む人の利便性に沿って設計されるのに対して、賃貸物件は投資収益性を高めるように設計されやすいからです。

例えばファミリー向け1戸分の面積があれば、ワンルームが3戸は作ることができ、面積当たりの家賃収入は単純計算で1.5倍となります。子どもの成長とともに子ども部屋と広いリビングのある賃貸物件を探そうとすると、急に高級マンションの価格層になってしまうことが多いのは、このような事情のためです。

ところが夫婦2人で快適に暮らせる広さとなると、賃貸物件の選択肢は格段に多くなります。足音などの騒音や、通学の便も考える必要はありません。リタイア後に田舎暮らしをする人が多いのは、住まいに求める条件が変わることも大きく影響しているのでしょう。

時間ができる

子育てや仕事が手離れし自由な時間ができることで、これまでやったこともなかった趣味に目覚める人も少なくありません。DIY、ガーデニング、サーフィン、ロードバイクなど……本格的にやろうと思うと、どうしても庭付き戸建てが欲しくなってしまいます。

体力が低下し健康面の不安が増える

その反面、健康面の不安も加齢とともに増えていきます。階段などの段差や部屋ごとの寒暖差も気になります。自動車運転免許を返納すれば駐車場も必要なくなりますし、お子さんの育児を手伝いに行けるのか、逆にお孫さんたちが気楽に来られる距離なのかどうかも条件として浮上してきます。

近所付き合いがライフラインになる

仕事に忙しいうちはご近所付き合いも必要最低限になりがちですが、高齢になってくると万が一の災害発生時に、お互いに助け合える人が近隣にいるかどうかが大きな問題になります。大雪が降る地域であれば、戸建てでは屋根の雪下ろしをどうするのかという問題が発生しますが、マンションであればその心配はなくなります。

いつでも引っ越せる

持ち家だとそうはいきませんが、賃貸物件ならライフスタイルや周辺環境の変化にあわせて、柔軟に居住地を変えることも可能です。高齢化したニュータウンなどでは、スーパーや病院、公共交通機関などのインフラがどんどん失われてさながらゴーストタウン化していくこともあり、引っ越しはそれらの問題を自ら解決する方法でもあります。

こうして見ると、単純に「賃貸vs.持ち家」「マンションvs.戸建て」と比較して優劣がつけられる問題ではないことがわかります。結局は「どういう生活をしたいか」を軸にして、「老後の住まい」に求める優先順位をしっかりと考え、最もマッチする選択肢を選ばないと後悔することにもなりかねません。

賃貸と購入のメリット。デメリットはまだあります。詳しく比較していきましょう。

賃貸のメリットとデメリットは?

子育て世代の希望条件にかなう物件探しは難しくても、2人暮らしの住まいであれば選択の幅は広がります。

賃貸のメリット 

・自由に住み替えができる
一口に「老後」といっても、その期間は20~40年と思いのほか長いものです。その間にライフスタイルも変わりますし、周辺環境も変わります。家自体も徐々に老朽化し、補修や建て替えが必要になることもあります。そんな時にパッと住み替えや引っ越しができるのは、賃貸住まいの最大のメリットです。

・メンテナンスは貸主負担
入居者による不具合やキズを除けば、経年劣化等による補修などのメンテナンスは貸主側の義務です。ただし契約書に貸主の修繕義務免除の特約が記載されていればこの限りではありませんので、契約時には契約書をしっかりチェックしましょう。

・グレードの高い「分譲賃貸」
投資収益率が重視される賃貸物件よりも、「一生の買い物」として購入される分譲物件の質が高くなりやすいのはすでに説明した通りですが、住み替えのために売却された分譲物件が賃貸物件に転用されることがあります。また、転勤などで別の地域に転居している間に物件を貸し出す「リロケーション」により、期限付き(定期借家契約)で借りられる物件も、数は多くないですが存在します。賃貸住まいの選択肢には「分譲用」の物件も入ってきます。

また最近は、バリアフリー機能を強化したシニア向け賃貸物件も増えています。生活援助員の巡回や、自立志向の強い高齢者向けのサービスを充実させた物件もあります。高齢化が加速する中、新たな住宅市場として注目されています。

賃貸のデメリット 

・高齢者への入居審査が厳しい
貸主から見ると、リタイア後の高齢者は収入が少なく、家賃滞納してもすぐに転居させにくい存在です。また単身の高齢者の場合、孤独死のリスクも考えないといけません。遺体の発見が遅れると物件の損傷も激しくなりますし、事故物件は借り手がつきにくくなるからです。そのため高齢者の入居審査は厳しいものになりやすく、お子さんなど現役世代の連帯保証人も必要になってきます。

・家賃が払えなくなるリスク
年金だけで家賃が払えればいいのですが、家賃と生活費が年金を上回る状況では、資産を取り崩しながら暮らしていくことになるので、しっかりとしたマネープランが必要です。

購入のメリットとデメリットは?

購入のメリット

・家賃がない
ローンが完済している場合は月々の支払いがないので、リタイア後の生活はだいぶ楽になります。賃貸と持ち家で生涯に払う金額を比較した記事などをよく見かけますが、購入額や頭金の設定、ローン年数などで条件が大きく変わってしまうので、あまり参考にはなりません。それよりもどの年代で支払いを多くできそうかを、転職や独立の見込みを考慮しながら自分なりにプランニングすれば、少なくとも金銭面では購入のハードルだけが高くなることはありません。

・リフォームやリノベーションが自由
これも持ち家ならではのメリットです。もちろん分譲マンションの場合は制約がありますが、建物の構造に関わらないリフォームは可能です。

・住み替えも可能
「家は一生の買い物」ではありますが、住み替えローンなど住み替えを支援するサービスや制度もあり、必ずしも生涯住み続けなければいけないわけではありません。

・住宅市場の変化
これまでは新築に偏重し、近年は供給過多傾向の強い日本の住宅市場ですが、人口減少にともなう空き家問題の拡大などもあり、国の政策は中古住宅や空き家の活用、流通促進を推進しています。それを受けて、欧米諸国に比べて寿命が短いといわれていた住宅の寿命も、規制強化などにより伸びる傾向にあります。

人口減少は今後ますます進行しますので、手頃な価格で質の高い中古住宅が、多く市場に流通することが予想されます。さらに新築住宅についても現在の供給過多が続けば値崩れを起こし、購入しやすくなる可能性もあります。

購入のデメリット

・住み替えが困難になる場合もある
新築住宅の飽和が起これば、新規に購入する人にとっては安く買いやすくなりますが、持ち家を売却して住み替えを図る人にとっては売りにくい状況となり、空き家の数も増え続けることになります。国は空き家の再活用を政策目標に掲げていますが、それは新築・中古市場ともに大きなインパクトとなり、価格の下落にもつながっていくでしょう。

図1:2033年までの空き家数・率の予測
 
(出典:野村総合研究所「2030年の住宅市場と課題 ~空き家の短期的急増は回避できたものの、長期的な増加リスクは残る~」)
近年、空き家の除去(解体して更地に戻すこと)は各自治体で加速しており、住宅価格への影響はこの予測よりも低減されるかもしれませんが、人口減少は確実に加速しますので、少なくとも住宅市場が需要過多になることはなさそうです。

・ローンの負担
新規購入や住み替えローンで老後の住まいを購入した人の多くは、数十年にわたりローンを返済していくことになります。再就職したとしても、年齢とともに賃金は下降せざるをえません。家計への負担が減ることはあまり期待できないかもしれません。

・メンテナンス問題
これには2つの側面があります。

まず、持ち家の修繕などの作業や費用の大きさの問題です。購入時には見えにくいのですが、個人の住宅に限らずあらゆる建築物には、イニシャルコスト(建築あるいは取得時にかかる費用)とランニングコスト(光熱費や修繕・回収・清掃等のコスト)があり、住宅の場合のランニングコストはイニシャルコストの4倍前後といわれています。

もうひとつは、マンションには一定のサイクルで大規模修繕の必要があり、国土交通省は新築12年目に1回目の修繕を推奨しています。この時に、修繕積立金が十分に貯まっていないと、その費用をどうするのかという問題が発生します。購入しやすくするために修繕積立金を低く設定しているマンションや、高齢者比率が増え修繕積立金を滞納する世帯が多くなったマンションでは、しばしば大規模修繕をめぐる住民間の紛糾が起こります。

賃貸の場合はオーナーが賃料収入の一部を修繕積立金に充てることもできるため、賃貸比率の高いマンションは大規模修繕をしやすい傾向があります。さらに、あらかじめ契約期間が定められている定期借家契約の多いマンションは、家賃や修繕積立金の滞納者が少なくなりやすいので、トラブルを回避しやすくなります。

マンション購入の際は、修繕積立金が適切に貯まっているか、賃貸戸数がどれくらいあるかなどをチェックするといいでしょう。

それでも魅力的な老後のマイホーム暮らし

ここまでは賃貸と購入のメリットとデメリットを比較してきましたが、結局はどちらを選んでも必ずメリットとデメリットの両方が存在します。どのメリットを優先し、どのデメリットを極力避けたいのか、ご自身やパートナーの老後のライフスタイルとの兼ね合いになります。

ここからは、いくつかのデメリットを引き受けてでも、持ち家で暮らすメリットを手に入れたい場合に知っておくべきポイントをご紹介していきます。

場所の選択

お子さんの通学もご自身の通勤も終わってしまえば、住む場所の選択肢も広がりますが、改めて考えなくてはいけないポイントもあります。

田舎暮らしや海辺の暮らしを望む場合には、自動車は不可欠です。都市部でなければ駐車場の心配はありませんが、ご自身が何歳まで運転するのかはしっかり考えておきましょう。何らかの事情で突然運転できなくなって、買い物難民になったり病院に通えなくなったりする可能性のある場所は、その後の暮らしの難易度は高そうです。

都市部であれば交通の便は良くなりますが、購入費用は高くなります。また高層階のマンションに住んでしまうと、体力の衰えとともに外出が億劫になってしまい、結果として運動不足で健康を損ねる可能性もあります。

また現在は公共交通機関が充実していても、転出増で人口が減ると、本数が減ったり廃線になったりということも起こり得ます。実際に、高度成長期に大規模開発されたニュータウンなどではこのような現象が起こっています。

加えて共働きの夫婦が増える中、祖父母で孫の面倒を見る機会も増えていますし、逆に介護や買い物でお子さんたちに頼る場面も増えてくるかもしれません。ご自分のライフスタイルだけを重視して居住地を決めてしまうと、後々不都合が生じることもありそうです。

ご自身あるいはパートナーの故郷にUターンする場合でも、長い老後に起こりうる事態をしっかりと想定し、パートナーやお子さんの賛同を得るようにしましょう。

最近少しずつ増えているのは、生まれ故郷に近い都市部にマンションを購入して、週末に出生地を訪ね農作業などにいそしむという「Jターン」です。これなら平日は都市部の便利さを享受できますし、故郷との心理的な距離感も近くなります。出生地が豪雪地帯であっても、雪下ろしの心配もなくなるなど、災害への備えにもなります。東京都内よりも購入費用が抑えられるのも大きなメリットです。

住み替えローンの活用

すでに持ち家があれば、その売却資金を老後の住まいの購入費用に充てることになります。ローンが完済していて、売却金額が新居の購入費用をまかなえれば問題ありませんが、実際には元の家のローンが残っている状態での新居購入になるケースが多いのではないでしょうか。売却金額でローン残債が完済しきれなかった場合は、住み替え(買い替え)ローンを活用するのも一つの方法です。

例えば3,500万円のローンのうち、2,000万円まで返済しているケースを考えてみましょう。この家が1,200万円で買い手がつき、新たに購入する住宅が2,000万円だったとします(売却、購入にかかる諸経費は割愛します)。

まず残債は1,500万円なので、300万円が担保割れ、すなわち「オーバーローン」となります。新規購入費用の2,000万円に、オーバーローンが上乗せされた2,300万円で住み替えローンが組まれることになります。

これだけ見ればとても使い勝手の良いローンなのですが、注意すべきなのは、通常の住宅ローンよりも住み替えローンは審査が厳しく、金利も高いということです。住宅ローンでは購入する家そのものがローンの担保となるので、購入する金額以上のローンは組めません。ところが住み替えローンでは購入額よりもオーバーローンの分だけ高い金額のローンとなるため、金融機関側のリスクが高く、金利も高くなるのです。

例えば退職金でローンが完済できる、あるいはご両親に資金を借りて繰り上げ返済ができるといったケースは、通常の住宅ローンを組んだほうが老後の資金繰りは楽になります。住み替えローンは最後の手段としてとらえたほうが無難かもしれません。

再び賃貸への住み替えも可能

老後の住まいを新たに購入したからといって、必ずしもそこに生涯住み続けなければならないわけではありません。例えば移住・住み替え支援機構(JTI)は、住宅を貸したい人と、JTIが契約し借り上げた賃貸物件を借りたい人に、定期借家契約でJTIが貸す「マイホーム借上げ制度」を行っています。

借り手がつかなくても一定の賃料が保証されるので、賃料収入がゼロになる恐れもなく、また定期借家契約で貸し出すので契約期間終了後は元の家に戻ることも可能です。また、「マイホーム借上げ制度 最低家賃保証型」の場合は最長35年間保証賃料が変わらないので、経年劣化にともなう賃料収入の低下も防ぐことができます。

図2:マイホーム借上げ制度 最低家賃保証型
 
(出典:一般社団法人 移住・住み替え支援機構ホームページ)
最低家賃の保証があり、さらに借り手にとっては通常よりも家賃が安いことがメリットの定期借家契約のため、近隣の相場より安くなります。制度利用に初期費用がかかること、維持管理費用がオーナー負担であることなどがデメリットとして挙げられます。また、制度利用中は一般募集をすることはできないので、住宅の評価価値や周辺の賃貸需要をよく考慮してからの利用をおすすめします。

リバースモーゲージの利用

高齢化の進行とともに金融機関が力を入れているのが「リバースモーゲージ」と呼ばれる融資制度です。これはいわば自宅を担保にした年金のようなもので、社会保障が弱く家を相続する習慣があまりない米国などでは早くから普及していました。

自宅を担保(モーゲージ)にして借金をするという点は普通のローンと同じですが、違いはその借金を年金として毎月(あるいは毎年)受け取るという点が大きく違います。このため通常のローンと違い、借入残高がどんどん増えていくことからリバース(逆)モーゲージの名が付けられました。

リバースモーゲージには、契約が満期になるか契約者が死亡した時点で相続人が住宅を売却、利息とともに返済するプランと、銀行が「代物弁済」として住宅を清算するプランとがあります。前者の場合、契約期間中に住宅価格が下落すると返済が困難になるリスクがあり、後者の場合は、借り入れ金額より売却金額が高い場合も超過分が本人・遺族に支払われることはありません。

日本の不動産業界では建造物は「ウワモノ」と呼ばれ、土地よりも評価が低いだけでなく、土地の価値を下げる場合も多くありました。ところが近年は中古住宅も少しずつ評価されるようになり、このような融資も可能になってきました。

また最近ではリバースモーゲージの仕組みを活用し、申し込み時点では住宅を所有せずとも、購入する住宅を担保にローンを組むことができる「リバースモーゲージ型住宅ローン」も増えています。これまでは定年退職後にローンを組むことは難しかったのですが、これによりそれまで賃貸住まいだった人が退職を機にマイホームを持つ例も増えています。

通常の住宅ローンよりも金利が高く、不動産価格が下落した場合に返済が難しくなるというデメリットはありますが、子育て中よりも老後の住まいを充実させたい人にとっては有力な選択肢といえるでしょう。(売却金額との差額が要求されない「ノンリコース型」の商品もあります)
 

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老後の住まいを手に入れる方法をいくつかご紹介してきましたが、危険なのは「退職金でパッと買う」という考えです。退職金以外に十分な蓄えがない場合には、老後の生活そのものが困窮してしまうことにもなりかねません。

繰り返しになりますが、賃貸にも購入にもそれぞれメリットとデメリットがあり、正確な将来予測は簡単ではありません。老後にどんな暮らしをしたいのか、何をしたいのかを明確にし、不測の事態にも対応可能なライフプランを立てることで、自ずと「賃貸か購入か」は決まってくるのではないでしょうか。


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