住宅・不動産
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2020.4.21

個人事業主が絶対に押さえておくべき税金の基礎知識

(写真=Andrey_Popov/Shutterstock.com)
(写真=Andrey_Popov/Shutterstock.com)
大きな組織では埋もれてしまいがちなスキルや独創的なアイデアも、「個人」であればスポイルされることなく発揮される――毎日のように新たなテクノロジーが生まれるビジネスの世界において、ベンチャー企業よりもさらにクリエイティブなフリーランス、つまり「個人事業主」の存在感が増しています。

とはいえ、クリエイティブな人ほどおろそかにしがちなのが「手続き」です。その最たるものが、税金の申告ではないでしょうか。

企業では複雑な税務を経理担当者などがやってくれるので、自分に課せられている税金を正しく理解している社員は、そう多くはないはずです。しかし個人事業主は、たとえ税理士に依頼したとしても、領収書の管理や申告作業のすべてを丸投げできるわけではありません。

申告に不備があれば追徴金が課されたり、最悪の場合は刑事罰を受けたりすることすらあります。取引先とトラブルが起これば、ビジネスにも大きなマイナスとなるでしょう。

逆に税金のことをしっかり理解すれば、年間で数十万円から百万円以上の節税が可能になることもあります。税金の仕組みは複雑ですが、これだけは必要というものに絞って、個人事業主に必要な基礎知識を解説します。

個人事業主に課税される税金は主に4つ

まず、個人事業主が納めなければならない主な税金を確認しましょう。税金には国に納める国税と、地方公共団体に納める地方税の2種類があります。

・国税
  所得税
  消費税
・地方税
  住民税
  個人事業税

細かくいえば、事業用の不動産を取得した場合には不動産取得税や固定資産税が、事業用の自動車を所有していれば自動車税が課税されますが、自宅の一部を事務所にしたり、自家用車を仕事でも使っていたりするケースも多いので、ここでは割愛します。

ほかには国民健康保険料も自治体によっては「国民健康保険税」として徴収される場合もありますが、この記事では個人事業主が特に注意すべき点をテーマとしていますので、上記の4つの税に絞って解説します。

所得税

所得税額は「課税所得×税率」で決まる

1月1日から12月31日までの1年間に得た「所得」に課される国税です。

「所得」とは、簡単にいえば報酬や売上など年間に得た「収入」から、収入を得るための仕入や購入した事務用品代、修理費、交際費、事務所の家賃、光熱費、交通費などの「経費」を差し引いて、残った「儲け」のことです。

所得にはいくつかの分類があり、個人事業の本業で得た所得は「事業所得」に分類されます。ほかに、不動産売買で得た利益は「不動産所得」、金融取引や配当などの「雑所得」、個人事業とは別に得た給与は「給与所得」と分類されます。これらの合計が「合計所得金額」です。

所得税の課税は、合計所得金額から「所得控除」を差し引いた額が対象となります。この額を「課税所得」といいます。課税所得額に一定の税率を掛けたものが、事業主が支払う所得税額となります。

所得控除とは?

この「控除」という言葉が分かりにくいのですが、単純にいえば税金の「値引き」にあたります。「所得控除」とは、納税者ごとの事情を考慮し、課税対象となる所得を小さくする、つまり税金を安くするための措置です。

例えばパートで働く主婦が、夫の扶養範囲から外れてしまわないよう、年間の収入を103万円以下に抑えるべくシフトを調整する、といった話を聞いたことはないでしょうか?これは「配偶者控除」という制度によるものです。夫が会社員でその合計所得が900万円以下、妻のパートでの収入が103万円以下であれば、夫の収入に対し38万円の所得控除が受けられます。

妻自身の所得税も、パートも含む給与所得者が対象となる「給与所得控除」が最低65万円、さらに2019年度申告分まではすべての納税者に一律38万円の「基礎控除」があったため、103万円以下の収入は全額が控除される仕組みとなっていました。この2つの節税効果は数万円になるため、103万円を超えないように働く人が多かったのです。

ちなみに2020年度申告分の所得税からは、基礎控除は下表の額に改定されます。所得が2,500万円を超える人の基礎控除はなくなりますが、多くの人にとっては税額が軽減されることになります。

図:基礎控除
 
個人の合計所得金額 控除額
2,400万円以下 48万円
2,400万円超2,450万円以下 32万円
2,450万円超2,500万円以下 16万円
2,500万円超 0円

(出典:国税庁ホームページ)

ほかには、子どもがいる家庭は「扶養控除」の対象となりますし、認定された団体などへの寄付金にも「寄附金控除」が認められます。「医療費控除」「障害者控除」「社会保険料控除」「生命保険料控除」「障害者控除」など、15の所得控除があり、それぞれの事情を加味した税の軽減が図られています。

確定申告の際に所得控除を申告し忘れると、数十万円単位で税金を払いすぎることになりかねません。申告作業を始める前に、どの所得控除を受けられるのかを確認しておきましょう。

税率はどのように決まる?

では、実際に「いくら稼ぐと何%の税金がかかる」のでしょうか。

図:所得税の速算表
 
課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円を超え4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

(出典:国税庁ホームページ)

この速算表にも【控除額】という言葉が出てきますが、先ほどの「所得控除」とは別のものとお考えください。
仮に課税所得が700万円だったとすると、税率は23%です。単純に考えれば、

700万円×23%=161万円

が所得税額となりそうですが、実際の税額はもっと安くなります。所得700万円のうち、「0~195万円の部分に5%」「195万0,001円~330万円の部分に10%」と、段階ごとに課税される方式になっているからです。実際の課税額は以下のようになります。

      0円~195万円の部分:195万円× 5%=9万7,500円
195万0,001円~330万円の部分:135万円×10%=13万5,000円
330万0,001円~695万円の部分:365万円×10%=73万円
695万0,001円~700万円の部分: 5万円×23%=1万1,500円
…………………………………………………………………………………
                     合計97万4,000円

よく見ると、先ほど単純計算した161万円から、税率23%の場合の【控除額】63万6,000円を引いた額と同じです。速算表は、段階ごとに計算しなくても、単純に税率を掛けた額から【控除額】を引けば所得税額が求められるように作られています。

なぜ源泉徴収が必要なのか

職種によっては、受け取った報酬から10.21%の「源泉徴収額」が引かれていることがあります。企業に勤めて給与を受け取っていたことがあれば、給与明細書にやはり源泉徴収額が記載され、年末調整で戻ってきたという経験もあるのではないでしょうか。

報酬を受け取る側が納める所得税を、報酬を支払う事業者が肩代わりし、納税漏れをなくすことが源泉徴収の目的です。こうして払われる税を「源泉所得税」といいます。

よく「個人事業主は企業ではないから源泉徴収の義務がない」と誤解している人がいますが、「個人」に対して仕事を発注し報酬を支払う場合は、源泉徴収の義務が生じます。また、必要に応じて従業員を雇い給与を支払う場合でも、給与から源泉徴収し、自ら税務署に源泉所得税を納付しなくてはなりません。

個人事業主の事情がやや複雑なのは、「差し引く側」であると同時に「差し引かれる側」であるという点です。ほとんどの人が意識するのは、自らが受け取る報酬から差し引かれる源泉徴収の方ではないでしょうか。差し引かれた源泉所得税の一部は、確定申告後に還付金として戻ってくる場合もあるので、申告作業を終わらせるモチベーションになっている人も少なくないでしょう。

しかし自身が雇用主や発注主になるケースでは、必要に応じて源泉徴収を行い、源泉所得税を税務署に納付する必要があることを知らない人も多そうです。ここではまず、個人事業主が「差し引く側」の場合の源泉徴収について解説します。

(1)個人への発注は源泉徴収しなければならない場合がある

企業だけでなく個人事業主であっても、従業員を雇い給与を支払っていれば、源泉徴収の義務が生じます。この場合は雇用をしてから1か月以内に「給与支払事務所等の開設届出書」を税務署へ提出しなければなりません(届出書は国税庁のホームページからダウンロードできます)。

従業員以外にも、税理士、弁護士、司法書士などへの報酬も源泉徴収しなければなりません。原稿料や講演料も源泉徴収の対象となります。

差し引いた源泉所得税は、翌月10日までに税務署か金融機関に納付しなければなりませんが、給与を払う人員が常時10人以内の場合は、税務署に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申込書」を提出することで、年2回にまとめて納付することもできます。

発注する仕事の内容によって源泉徴収の有無が変わり、計算方法も変わってきます。納付が遅れれば延滞税の対象にもなりますので、外注する機会が多い方は各地の国税局の相談窓口か、税理士に相談するのがいいでしょう。

図:源泉徴収が必要な報酬
 
(出典:国税庁ホームページ)
(2)受け取った報酬の源泉徴収分は戻ってくる場合がある

「合計所得―所得控除」が「所得税額」であることはすでに解説しました。またしても少しややこしくなるのですが、所得税額から「配当控除」「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」などを差し引いた額を、「基準所得税額」といいます。

控除には、課税前の所得から差し引かれる控除と、税額そのものから差し引かれる控除があるわけですが、どちらも「控除」なので混乱しがちです。

図:所得税額から差し引かれる控除

「所得税額から差し引かれる金額」(主なもの)
 
種類 控除を受けられる場合
配当控除 配当所得がある(申告分離課税を選択したものなどを除きます)
(特定増改築等)
住宅借入金等特別控除
家屋を住宅借入金等で新築や購入、増改築等をしたり、バリアフリー改修工事や省エネ改修工事、多世帯同居改修工事等、耐久性向上改修工事等をして、6ヶ月以内に居住の用に供した
政党等寄附金特別控除 特定の政治献金のうち政党や政治資金団体に対するものがある
認定NPO法人等寄附金特別控除 認定NPO法人等に対して支出した寄附金がある
公益社団法人等寄附金特別控除 一定の公益社団法人や公益財団法人、学校法人等、社会福祉法人、更生保護法人に対して支出した寄附金や、国立大学法人や公立大学法人などに対して支出した一定の寄附金がある
住宅耐震改修特別控除 居住の用に供する家屋の耐震改修をした
住宅特定改修特別税額控除 家屋のバリアフリー改修工事や省エネ改修工事、多世帯同居改修工事等、耐久性向上改修工事等をして、6ヶ月以内に居住の用に供した
認定住宅新築等特別税額控除 認定住宅の新築又は新築の認定住宅の購入をして、6ヶ月以内に居住の用に供した

(出典:国税庁ホームページ)

所得税は課税所得が対象ですが、2037年度まで課税される2.1%の「復興特別所得税」は、基準所得税額に課税されます。報酬が100万円以下の請求書や支払書では、源泉徴収税率が10.21%で計上されていることが多いのは、所得税率10%と復興所得税率2.1%を単純に足した率で計算されているからです。

図:原稿料や講演料などの源泉徴収額
 
支払金額(=A) 税額
100万円以下 A×10.21%
100万円超 (A-100万円)×20.42%+102,100円

(出典:国税庁ホームページ)

あくまでも便宜的に10.21%を掛けているだけなので、厳密に計算すれば所得税率や経費額の大きさにより、源泉徴収額と実際の課税額と過不足が出てきます。それを確定申告後の追加徴収や、還付金で調整する仕組みになっています。ちなみに会社員の人が年末に受け取る「年末調整」は、給料天引きで預かりすぎていた所得税・住民税からの戻し金であり、いわば社内レベルでの還付金です。

消費税

多くの個人事業主は免税事業者のため、消費税を「納める」こととは無関係でしたが、2023年10月開始の「インボイス制度」によりそれが大きく変わろうとしています。どうすれば得で、どうすれば損なのかを理解するために、まずは消費税の仕組みから理解しましょう。

消費税とは?

商品を購入したりサービスを受けたりしたときに、その取引に対して課税されるのが消費税です。消費税を負担するのは消費者ですが、消費者が自ら国税局に納税するわけではなく、商店やサービス提供者への支払いに10%上乗せして払っていることはご存知の通りです。

商店や事業者は消費者から預かった消費税を申告した上で、国税局に納めます。このように税を負担する人(担税者)と納める人(納税者)が一致しないのが、消費税や酒税、たばこ税、揮発油(ガソリン)税などの「間接税」の特徴です。

「内税方式」の罠

例えば個人事業主が企業に製品を納品し、その代金を得るときは、代金の10%にあたる消費税も一緒に預かっていることになります。しかし取引によっては、支払書に消費税額が記載されておらず、対価のみが支払われているケースもあります。この場合は「内税(税込)方式」として、代金にすでに消費税額が含まれていることになります。本来は契約成立時(口頭の約束でも契約は成立します)に「内税方式」も確認されていないといけないのですが、そうなっていない取引もあるのが実情です。

しばしば起こるケースですが、消費税分が支払われないので取引先に問い合わせると、「あなたは『免税事業者』のはずだから消費税を払う必要はない」と言われることがあります。この「免税事業者」は、今後の税制改正についての重要なキーワードですので後ほど詳しく解説しますが、結論からいえば「免税事業者に消費税を払う必要はない」は誤りです。

事前に「請求額は税込み」という約束がされていないのであれば、堂々と消費税分を請求しましょう。もちろん一番大事なのは、受注や契約の段階で、請求額は外税か内税かをしっかり確認することです。

消費税については、もう1つ注意が必要な点があります。
例えばあなたが企業に税抜100円の製品を、毎月1個ずつ納品していたとしましょう。2019年9月までは消費税率8%の消費税込みで108円の支払いだったのが、10月の消費増税を経ても108円のままであれば、企業が増税分を支払わずにあなたに肩代わりさせていることになります。これを「消費税の転嫁拒否」といいます。

消費税の転嫁拒否については、各地の公正取引委員会が「消費税転嫁対策調査室」を開設しており、相談窓口になっています。

免税事業者とは?

さて、先ほど少し触れた「免税事業者」について説明します。企業か個人かを問わず、「課税売上高」が1,000万円以下の事業者は消費税納税の義務が免除され、このような事業者を「免税事業者」といいます。

課税売上高とは、消費税がかかっている売上高のことです。消費税がかからない取引は有価証券や介護用品、教科書などごく一部ですので、個人事業主の売上高はほぼ課税売上高になります。

課税事業者になるかどうかの判定基準は、個人事業者の場合は原則として前々年の課税売上高です。ただし、前年の1~6月の課税売上高が1,000万円を超える場合は、前々年の課税売上高が1,000万円を超えていなくても消費税納税が義務付けられた「課税事業者」になります。

「免税事業者は得だ!」となりそうですが、必ずしもそうではありません。

消費税は最終消費者に課せられる税ですので、本来は原材料などの仕入れには課税されないことになりますが、実際は仕入れの段階でも消費税を上乗せして支払っています。そのため、課税事業者は納付する消費税額から、一定の方式で仕入れ時に支払った消費税額を差し引くことができ、この制度を「仕入税額控除」といいます(差し引かれた税額は「仕入控除税額」です)。

免税事業者の場合、消費税納付の義務を免除される代わりに、仕入税額控除を受けることができません。個人事業主の場合「仕入」に該当する取引がない場合も少なくありませんが、売上をつくるためにはさまざまな経費を使っていて、同時に消費税も支払っています。経費に消費税を払い、売上でも消費税を払うと一種の二重課税になってしまうため、免税事業者を選択できるようになっています。

そのため、事業者が個人事業主に対して「免税事業者なのだから報酬に消費税を払わない」と消費税を払わなければ、税額の分だけ報酬を減らしていることになります。内税方式にするなら初めから明示する必要がありますが、内税方式で1万円の報酬が提示された場合、実際の報酬額は9,091円です。額面と実際の報酬額の間には差があることに注意しましょう。

課税事業者が得な場合もある!

課税売上高1,000万円以下の事業者でも、課税事業者になったほうが得をする場合もあります。例えば開業年度に機器購入や設備投資などの経費が大きくなり、売上高よりも経費の消費税額が高くなった場合です。

また海外に商品を輸出する場合、仕入に消費税はかかっても、輸出品には消費税が課税されません。そのため事業者は消費税を払う一方になってしまうので、課税事業者であれば支払った消費税の還付(通称「戻し税」)を受けることができます。輸出主体の事業であれば課税事業者になるメリットがありますし、届け出をすれば年1回の申告を3か月に1回、もしくは毎月にでき、申告から1か月程度で還付を受けられるので資金繰りも改善します。

課税事業者になるには、課税を適用する期間の前日までに所轄の税務署に「消費税課税事業者選択届出書」を提出する必要があります。期間が始まって2年間は免税事業者に戻れませんが、その後は「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出すれば免税事業者に戻ることができます。とはいえ2年間は戻れないので、事業の内容と売上推移をシミュレーションして選択することが大事です。

2023年に免税事業者は消滅する?

このように免税事業者、課税事業者にはそれぞれメリットとデメリットがあるのですが、この制度が大きく変わることになりそうです。それが、2023年から始まる「適格請求書等保存方式」、通称「インボイス制度」です。

適格請求書=インボイスとは、下図のア~カが記載された請求書や納品書のことです。
 
(出典:財務省広報紙「ファイナンス」)
2023年10月以降は、インボイスの発行がない取引では、仕入控除税額を受けることができなくなります。そして、インボイスを発行するためには「適格請求書発行事業者」に登録しなければならないのですが、これは課税事業者しか登録できません。インボイス制度は段階的に移行していくことが発表されていて、まだまだ不透明な部分も多いのですが、「企業が免税事業者とは取引しなくなるのでは」と心配する声も上がっています。

なぜこのような制度が必要になったかというと、さきほどの図のエとオの部分に原因があります。2019年の消費増税に伴う「軽減税率」の施行により、同じ取引のなかでも消費税率が変わってしまうケースが生まれたため、仕入控除税額を一律に計算できなくなったからです。

詳細まで触れると分かりにくくなってしまいますので、一般的な個人事業主に当てはまる部分だけを解説します。「仕入」として物品を購入することがない個人事業主が課税事業者になった場合、売上ごとにかかった仕入額を差し引いて消費税額を計上するという方法(「原則課税」といいます)が取れないので、一定の「みなし仕入率」を用いて計算する「簡易課税方式」が認められています。

ほとんどの個人事業主は「第五種事業(サービス業等)」となり、みなし仕入率は50%です。第五種事業者の納付税額はこのように求められます。

納付税額=課税売上高×税率-課税売上高×税率×50%

これまで免税事業者だった個人事業主が、インボイス制度開始後に取りうる選択肢は2つです。1つは「免税事業者のままで消費税は受け取らない」、もう1つは「課税事業者になって受け取った消費税の50%を納める」です。仮に課税売上高が500万円とすると消費税は50万円ですが、免税事業者のままで50万円すべてを受け取らないか、手続きをして25万円だけ受け取るかの二択ということになります。

これまでは、確定申告後の所得税還付金を当てにしていた個人事業主も多かったはずです。しかし税制改正で、還付金のかなりの部分が納付する消費税と相殺されることになりそうです。どのように施行されるかまだ不明な点もありますが、「損か手間か」の選択を迫られることは間違いなさそうです。

住民税

国内に戸籍があり、前年に所得があった人は、住んでいる都道府県に都道府県民税を、市区町村に市区町村民税を支払う義務があります。個人の場合はその年の1月1日に住んでいた市区町村が2つを合わせて徴収するので、まとめて「住民税」と呼ばれています。

住民税は「均等割」と「所得割」により計算されます。「均等割」は所得額に関わらず均等に徴収され、多くの場合で都道府県民税は1,000円、市区町村民税は3,000円です(独自の税額を設定している自治体もあります)。ただし2023年度まではそれぞれに復興特別税の500円が加算されています。

所得割は、都道府県税が課税所得の4%、市区町村税が6%の計10%となっています。ただし、住民税にも基礎控除、配偶者控除、扶養控除、医療費控除などの所得控除と、寄付金や配当などへの税額控除があり、税額が軽減されるようになっています。

個人事業税

個人事業税は、地方税法などで定められた以下の70の個人事業(法定業種)に対してかかる税金です。

4 法定業種と税率
 
区分 税率 事業の種類
第1種事業
(37業種)
5% 物品販売業 運送取扱業 料理店業 遊覧所業
保険業 船舶定係場業 飲食店業 商品取引業
金銭貸付業 倉庫業 周旋業 不動産売買業
物品貸付業 駐車場業 代理業 広告業
不動産貸付業 請負業 仲立業 興信所業
製造業 印刷業 問屋業 案内業
電気供給業 出版業 両替業 冠婚葬祭業
土石採取業 写真業 公衆浴場業(むし風呂等)
電気通信事業 席貸業 演劇興行業
運送業 旅館業 遊技場業
第2種事業
(3業種)
4% 畜産業 水産業 薪炭製造業
第3種事業
(30業種)
5% 医業 公証人業 設計監督者業 公衆浴場業(銭湯)
歯科医業 弁理士業 不動産鑑定業 歯科衛生士業
薬剤師業 税理士業 デザイン業 歯科技工士業
獣医業 公認会計士業 諸芸師匠業 測量士業
弁護士業 計理士業 理容業 土地家屋調査士業
司法書士業 社会保険労務士業 美容業 海事代理士業
行政書士業 コンサルタント業 クリーニング業 印刷製版業
3% あんま・マッサージ又は指圧・はり・きゅう・柔道整復
その他の医業に類する事業
装蹄師業

(出典:東京都主税局)

多くの事業が当てはまりますが、たとえば「文筆業(作家、ライター)」や「画家」「音楽家」「漫画家」など、芸術家に類する業種は第1~3種事業には当たらず、個人事業税は課税されません。

「事業主控除」で290万円まで控除される!

個人事業税の算出方法もおおむね所得税の算出方法と同じですが、大きな違いは年間290万円までの「事業主控除」です。さらに生計を共にする親族(親や配偶者、子どもなど)に給与を支払っている場合は、青色申告事業者ならその支払額を全額控除できますし、白色申告なら配偶者が86万円、それ以外は1人50万円まで控除できます。

逆に所得税申告では受けられる青色申告控除(複式簿記形式で電子申告した場合は65万円)や白色申告控除(10万円)が受けられないという違いもありますが、ほかの控除で所得を290万円以下に抑えられれば、個人事業税は非課税となります。
 

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税金の仕組みは複雑で、以前は製品版の会計ソフトや確定申告ソフトで申告作業をしようとしても、処理の仕方が分からなかったり数字が合わなかったりすることも多く、1週間以上も申告作業にかかりきりになる人も少なくありませんでした。

最近は、ネットバンクやクレジットカードと同期するクラウド型会計ソフトの登場で、日々の決済がほぼ自動で記録され、申告書類もソフトの質問に答える形式で入力していけば完成するなど、慣れた人なら数十分で確定申告を終えられるようになりました。

しかし、それでも税金の仕組みが分かっていないと取引や申告で損をすることもありますし、納税のミスを犯す可能性もあります。

何より、ここ十数年で最も大きな税制改正といわれるインボイス制度の開始が、目前に迫ってきています。一度で税金のすべてを頭に入れることは難しいですが、所得税と消費税だけでも理解することで、大きなトラブルを未然に防げるのではないでしょうか。


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