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2019.9.30

相続時精算課税制度とは?制度の概要と活用方法

(写真=kan_chana/Shutterstock.com)
(写真=kan_chana/Shutterstock.com)
財産を生前に次世代へ渡す方法の一つとして「贈与」があり、贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類の方法があります。今回は暦年課税制度を簡単に説明し、相続時精算課税制度の概要と活用するメリットや注意点について詳しくお伝えします。

暦年課税:年間110万円まで贈与税が非課税

まずは2種類の贈与の方法のうち「暦年課税」について簡単にお伝えします。

贈与税は、受贈者(贈与を受ける人)が1年間(1月1日から12月31日まで)に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。従って、1年間に贈与を受けた財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかからず、贈与税の申告も不要です。誰から贈与を受けても構いませんが、直系尊属(父母や祖父母など)から20歳以上の者(子や孫など)への贈与(特例贈与)とそれ以外の贈与(一般贈与)とでは、適用される税率が異なります。特例贈与のほうが一般贈与よりも低い税率が適用されます。

相続時精算課税:2,500万円まで贈与税が非課税

それに対して「相続時精算課税」は、この課税制度を選択した贈与者(贈与をする人)ごとに1年間(1月1日から12月31日まで)に贈与を受けた財産の合計額から2,500万円の特別控除額を控除した残額に対して一律20%の贈与税がかかるものです。

この特別控除額は複数の年にわたって適用されますので、一人の贈与者から受けた財産の合計額が2,500万円を超えるまで贈与税はかからないことになります。なお贈与税がかかるかかからないに関わらず、この制度を選択した場合には贈与税の申告(この制度を選択した旨の届け出)が必要となります。

原則は親族間の贈与に適用。ただし事業承継税制の特例措置もある

相続時精算課税制度の贈与者は「60歳以上の父母又は祖父母」、受贈者は「20歳以上の者のうち、贈与者の直系卑属(子や孫)である推定相続人又は孫」と定められています。つまり上の世代から下の世代への親族間の贈与に適用される制度となっています。なお年齢は贈与の年の1月1日時点となります。

ただし近年、中小企業の事業承継において親族以外の人が後継者となるケースが増えていて、その後継者が自社株式の贈与を受ける際に贈与税の負担が大きくなりスムーズな事業承継が行われない問題も発生しています。このような問題を解決するために「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」という制度があり、この制度を利用して自社株式を取得する場合には、受贈者(20歳以上)が「贈与者(60歳以上)の直系卑属である推定相続人以外の人」であっても、相続時精算課税を利用して贈与を受けることができます。

なお、相続時精算課税と暦年課税を併用することはできず、一人の贈与者からはいずれかの課税制度を利用して贈与を受けることになり、途中で変更することもできません。

相続時精算課税制度を活用する際の注意点とメリット

相続時精算課税制度の注意点としては、2,500万円までは無税で贈与ができますが、贈与をした人に相続が発生した場合には、相続時精算課税を利用して贈与した財産の全額を贈与時の価額で相続財産に加算しなければならない点です。2,500万円を超えた部分には20%の税金がかかりますが、実際の相続税額を計算したうえで払い過ぎた贈与税部分は相続税から差し引かれますので、贈与財産の価額が相続時までに大幅に値上がりしていない限り基本的に節税効果はありません。

また土地を贈与した場合には、相続発生後にその土地については「小規模宅地等の特例」を適用することができません。自宅など、相続後にこの特例が適用できる見込みの土地については相続時精算課税を利用しないほうが賢明です。

一方でメリットとしては、暦年課税と比較して多額の財産を一度に次世代へ移転できるという点です。財産の価額が大きくなる土地・建物などを贈与する場合には活用を検討しても良いかもしれません。また、財産の価額は相続時ではなく贈与時の価額で相続財産に加算されますので、値上がりが見込める財産について相続時精算課税を利用して贈与することで、値上がり分の相続財産の圧縮が見込め、相続税の軽減にもつなげることができます。

相続時精算課税制度はどのようなケースで活用できるのか?

相続時精算課税制度は、例えば住宅購入資金を子や孫に贈与する場合に活用できます。その場合には贈与者が60歳未満でもこの課税制度を利用できる特例があります。また条件を満たせば「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」との併用もできますので、一度に多額の住宅購入資金を贈与したい場合にも活用できます。

また、賃貸マンションやアパートなどの収益物件の贈与にも活用できます。相続発生後に加算する不動産の価額が贈与時の価額に固定することができ、さらに贈与後の賃料収入による相続財産の増加を回避することも可能です。贈与者の所得税率も考慮して贈与するかどうかを検討しても良いでしょう。

事業承継を考える場合には、上述したように「非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例」を活用したうえで、この課税制度を適用する方法もあります。自社株式は評価額が高くなるケースもありますので、次世代にスムーズに事業を承継させるという点では、検討の余地があります。
 

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一括で財産を移転させたい時に有効な制度

財産の前渡しである相続時精算課税制度は、基本的には節税効果は見込めませんが、一度に財産を移転させたい場合には活用の余地があるでしょう。どのように活用できるのかを検討されてみてはいかがでしょうか。
 

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