投資・資産運用
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2020.12.26

銘柄選びに役立つ「営業利益率ランキング」の読み方、解き方、活用法

(写真=tippapatt/stock.adobe.com)
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株式投資では、投資を検討している銘柄の財務分析も重要なスキルです。さまざまな指標があるなかで、当記事では「営業利益率」に着目したいと思います。営業利益率とはその企業の収益力、つまり「稼ぐ力」を読み取ることができる数値です。営業利益率が高い企業は収益力が高く、投資価値も高いと判断できるでしょう。しかし、後述するように、それだけで企業を評価するのは早計です。

そこで当記事では、株式情報サイトなどで見ることができる営業利益率の読み方や、ランキングの活用法、さらにそこから深掘りした営業利益率の活用法を解説していきます。

財務分析力を強化して株式投資のスキルを磨きたい方は、営業利益率と営業利益率ランキングの使い方をぜひマスターしてください。
 

そもそも営業利益率とは?

営業利益率は株式投資の銘柄選びに役立つ数値です。しかし、その全容を理解するためにまず押さえておきたいことがあります。それは営業利益率の計算方法と計算の根拠となる「5つの利益」についてです。複雑で難しそうですが、これを理解すると営業利益率による銘柄選びは、ほぼ習得したといえるでしょう。

知っておきたい5つの利益

企業の財務諸表には、貸借対照表、損益計算書、そしてキャッシュフロー計算書の3つがあり、これらは「財務三表」と呼ばれています。このうち損益計算書は企業の損益を示すものであり、利益が出ている場合もこの損益計算書にその詳細が記載されています。

そしてこの損益計算書には、5つの利益が登場します。それぞれ1つずつ解説しますが、営業利益率を知るうえで概要だけ掴んでいただければ問題ありません。

▽損益計算書に見る5つの利益
 
利益の名称 利益の計算方法と意味
売上総利益 売上 - 売上原価 = 売上総利益

売上から仕入れ原価を差し引いて算出します。この時点では売上を作るための経費が差し引かれていないので「粗利」とも呼ばれています。

営業利益 売上総利益 - 販売管理費 = 営業利益

先ほどの粗利から人件費、光熱費、広告、オフィス賃料などを差し引いた利益です。営業利益からわかるのは本業の儲けなので、営業利益率の算出にも用いられます。

経常利益 営業利益 + (営業外収益 - 営業外費用) = 経常利益

本業以外で上がった利益と費用を差し引いたものを、営業利益に足したものが経常利益です。企業の財務が正確にわかりますが、本業の収益力まで知ることはできません。

税引前当期純利益 経常利益 - 特別損益 = 税引前当期純利益

不動産の売却や災害による損害など、一時的な損益を経常利益に加味した利益です。スポット的な損益が加味されているだけなので、あまり重視はされません。

当期純利益 税引前当期純利益 - 税金 = 当期純利益

先ほどのスポット的な損益を加味したうえで税金を差し引いたものが、当期純利益です。これが企業にとっての手残りになるため、最終利益とも呼ばれています。


これら5つの利益は、最初に算出される粗利に対してさまざまな経費や損益などを加味していくことにより、最終利益を導き出すために用いられています。株式投資家がこれらすべてに精通している必要はありません。重要なのはこのなかでも本業での収益力を示す営業利益です。

ほかの利益と比べたときの「営業利益」の意味合い

なぜ、ほかの利益と比べて営業利益が特別な意味を持っているのでしょうか。その答えは、前述した本業での収益力にあります。企業にとって最大の経営資源は本業です。そして本業で発揮される優位性こそが企業の強みなのです。その企業のビジネスモデルや優位性が発揮され、営業利益が高くなれば、今後も高い収益性が維持できるという見通しも立ちやすくなります。

営業利益率を算出する際にも、この営業利益を用います。それは算出時に本業による収益力を正確に知る必要があるからです。つまり投資対象として優れている企業の基準となる営業利益率おいて、営業利益は大事な数値であることがわかります。
 

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営業利益率の指標とは?

それでは営業利益率はどの程度あるのが「普通」なのでしょうか。ここでは国が行っている「中小企業実態基本調査」の平成30年度版をもとに算出してみたいと思います。使用したデータは、調査対象全企業の売上高と営業利益です。

▽図1:中小企業実態基本調査 売上高及び営業費用
出典:中小企業実態基本調査(e-Stat)

それでは、実際に計算をしてみましょう。

18,553,102 ÷ 511,383,207 × 100 ≒ 3.628

約3.628%が全体の平均値ということがわかりました。この数値をベンチマークとすると、3.628%を超えていれば平均以上の営業利益率、その逆に下回っている場合は平均以下であると判断できます。

時価総額上位10社の営業利益率ランキング

誰もが知っているような有名銘柄の営業利益率は、どうなっているのでしょうか。ここでは日本株の中でも時価総額が上位10銘柄にランクインする銘柄について、営業利益率でランキングを作ってみました。ランキングのデータ元は、2020年11月13日現在の株価です。

まず、時価総額の上位10社は以下の通りです。誰もが知っているような有名企業がずらりと並びます。

▽日本株の時価総額上位10銘柄
 
順位 銘柄名 時価総額(百万円)

1

トヨタ自動車(7203)

23,823,145

2

ソフトバンクグループ(9984)

14,814,694

3

キーエンス(6861)

12,817,045

4

NTTドコモ(9437)

12,507,710

5

ソニー(6758)

12,300,367

6

日本電信電話(9432)

9,753,923

7

ファーストリテイリング(9983)

8,866,697

8

中外製薬(4519)

8,064,514

9

第一三共(4568)

8,025,299

10

リクルートHD(6098)

7,801,416


それではこの10社について、それぞれの営業利益率を算出したうえで、あらためてランキングを組み直してみると、下記のような結果になりました。

▽日本株時価総額上位10銘柄の営業利益率ランキング
 
順位 銘柄名 営業利益率(%)
1 キーエンス(6861) 48.90
2 中外製薬(4519) 38.20
3 NTTドコモ(9437) 24.69
4 日本電信電話(9432) 17.65
5 ソニー(6758) 13.37
6 第一三共(4568) 12.17
7 リクルートHD(6098) 11.87
8 ファーストリテイリング(9983) 11.31
9 トヨタ自動車(7203) 8.16
10 ソフトバンクグループ(9984) -22.06

いかがでしょうか? 1社も元の順位通りになっていないことがわかります。

ソフトバンクだけは営業利益がマイナスになっているので営業利益率もマイナスになっていますが、それ以外の企業はいずれも先ほどご紹介した平均値を大きく上回っており、大企業だけあって高い収益力を維持しています。

時価総額は発行済み株式数や一時的な株価上昇などの影響を受けやすくなりますが、営業利益率でランキングを組みなおしてみると、どの企業が「本業の儲け」をしっかりと上げているのか、一目瞭然です。なお、営業利益率が48.9%と群を抜いて高いキーエンス(6861)は社員の平均給与が日本で最も高い企業であることでも知られ、高い収益性が社員の待遇にも反映していることが窺えます。

営業利益率が高い企業の特徴を知って投資に活かそう

企業の真の実力を知るためにも役立つ営業利益率ですが、実際に営業利益率が高いことは何を意味しているのでしょうか。それを知るために、営業利益率が高くなる要素について考えてみましょう。

具体的には2つの視点があります。1つは売上総利益率を高くすることで、もう1つは販売管理費を低く抑えることです。つまり「売上を効率よく出している」ことが、営業利益率のアップにつながります。そこで、営業利益率を上げるための4つの要素を意識しましょう。

営業利益率が上がる要素1:独自のビジネスモデルが確立されており真似しにくい

ビジネスモデルや商品、サービスなどに優位性があり、他社がかんたんには真似できないようなものである場合、おのずと利益率は高くなります。他社の参入が難しくなるためブルーオーシャンになりやすいのも特徴です。競合が少なければ顧客獲得のために価格を下げるなどをする必要もないため、営業利益率も高くなる傾向にあります。

ただそのような環境だとしても、いずれ他社によって真似をされてしまったり、より優れたビジネスモデルが誕生して優位性を発揮できなくなってしまったりするかもしれません。そこで、ブルーオーシャンが維持できている間にどれだけ利益を上げられるのか、そして次の事業への投資は可能なのか、それらが将来の営業利益率を左右します。

営業利益率が上がる要素2:仕入れ値を低く抑えられるIT系、無形商材系

ビジネスモデルに強みがある企業は、先ほど挙げた2つの視点のうち1つめの「純利益が高い企業」に該当します。もう1つの視点である販売管理費を低く抑えることができる企業も、同じ売上であっても多くの利益を残すことができるので収益性が高く、営業利益率が高くなります。

IT系や無形商材(知的財産など)を商品としている企業はこうしたコストを抑えやすいため利益率が高く、営業利益率を高くすることができます。

営業利益率が上がる要素3:高価格製品で差異化ができている

企業や商品のブランド価値を確立したビジネス展開はその利益率も高いため、その結果として営業利益率が高くなります。これはブランディングによる企業努力の結果です。そのために大きなコストをかけたとしても、ブランド価値がそのまま企業への付加価値となっていますので、戦略上は成功しているといえるでしょう。

そのビジネスモデルの成功例は、「ルイ・ヴィトン」や「エルメス」といった高級ブランドでしょう。つまり、他社がまったく同じ品質の製品の販売を始めても、これらの高級ブランドと同じ価格で販売することは容易ではないはずです。

営業利益率が上がる要素4:プロモーションの必要がない

すでに企業のブランド価値が確立し、安定した顧客を確保している企業は、広告やプロモーションの必要がありません。こうした企業は販売管理費に多くの資金を投じる必要がないため、売上に対しての営業利益の占める割合が高くなり、それが営業利益率の高さとなって表れます。

大手コーヒーチェーンの「スターバックス」はテレビや新聞といったマスコミでの広告活動を行っておらず、独自の戦略でブランド価値を確立してきました。このため販売管理費が低く抑えられており、こうした戦略が奏功している企業は営業利益率が高くなります。

売上高営業利益率を見る際の注意点

ここからは営業利益率について、売上高との対比で分析をしていくうえでの注意点について解説します。重要なのは絶対額ではなく、相対的な評価です。

売上至上主義ではなく、営業利益の割合が重要

売上高が大きいということは、それだけ営業活動が活発であることが推測できます。企業としても活気があるでしょうし、実力のある企業であるように錯覚することもあるでしょう。

しかし、この記事で営業利益率を重視するように解説をしているのは、このような売上至上主義に陥ってしまうことの弊害を防ぐためでもあります。先ほど時価総額の上位10社に関する営業利益率のランキングをご紹介しましたが、時価総額と営業利益率のランキングが一致しないことはおわかりいただけたと思います。

これと同じく、売上高だけで企業を評価すると、そのためにどれだけのコストを要しているのかがわかりません。最悪の場合は営業利益がマイナスになっていることもあるため、営業利益率を見ないと企業の本業での業績は読み取れないわけです。

競合他社との利益率を知ることも大事

同業の競合がある場合は、それらの競合についても営業利益率を知ることが重要です。いくら売上高が大きくても同業他社と営業利益率を比較してみて大きく下回っているようであれば、収益力が決して高くないことがわかります。

売上高が大きいということは、単に企業規模が大きいだけかもしれません。企業規模が大きい一方で営業利益率が低いという結果は、スケールメリットや自社の強みをいかせていない可能性が高く、将来的な収益力の維持に疑問符が付きます。

競合がある場合は必ず、それらの営業利益率もチェックしたうえで投資判断をしましょう。

マザーズ銘柄の特性も知っておこう

スタートアップ企業が多く上場しているマザーズでは、企業の財務基盤がそれほど強いとは限りません。そのためマザーズ銘柄のなかにはトップラインという、売上高の拡大に経営の優先順位を置いていることもあるため、営業利益率が低いからといって評価に値しない企業と決めつけるのは早計、となることがあります。

マザーズ銘柄の場合は「利益が後からついてくる可能性」も踏まえつつ、見極めることが重要になります。

繰り返しますがトップラインとは売上高のことです。語源は損益計算書の一番上(トップ)に記載されているからで、逆に一番下にある当期純利益はボトムラインと呼ばれることがあります。

営業利益率の推移にも注目

単年度だけの財務分析をしても、企業の実力を知るには情報として足りないことがあります。単年度だけ突出して利益率が高くなると、その年の決算では営業利益率も突出して高くなることがあるからです。しかし、それは外的要因など、その企業だけに当てはまる理由ではない可能性もあります。よって、営業利益率を含む財務分析はそれまでの推移を見ることが大切です。その上で今後も継続が可能かどうかを見極めましょう。

逆に、これまでの推移が大きく転換することもあります。営業利益率が悪かったことを課題として捉え、改善していく取り組みをしている企業の営業利益率が好転したとしたら、それは今後に向けて明るい材料になります。

このように財務分析では、これまでの推移と企業の取り組みを考慮した転換点を探るのも、優良銘柄を見つけ出すヒントとなります。

まとめ:財務分析をマスターして株式投資のスキルを高めよう

当記事では財務分析のなかでも、営業利益率に着目した分析手法を解説してきました。本業で儲ける力は企業にとって真の実力ともいえるもので、それを分析することは今後の株価を展望するうえで大いに役立つといえるでしょう。

これまでの推移や競合との比較など、相対的な評価にこだわって投資を検討していると、企業の立ち位置も見えてきます。こうして発見した銘柄に中長期的な投資をすることで株価にも成長が見込まれ、大きく資産を増やすことができる道が開けるはずです。

こうした分析に威力を発揮するのが、証券会社から提供されている財務分析ツールです。特にネット証券各社には充実したツールが目立つので、マネックス証券の「銘柄スカウター」やSBI証券の「分析の匠」、楽天証券の「マーケットスピードII」などを利用することで、効率のよい財務分析が可能になるので、情報をご確認してはいかがでしょうか。
 
文・
エンジニアやWeb制作などIT系の職種を経験した後にFXと出会う。初心者として少額取引を実践しながらファンダメンタルやテクニカル分析を学び、自らの投資スタイルを確立。FXだけでなく日米のETFや現物株、商品などの投資に進出し、長期的な視野に立った資産運用のノウハウを伝える記事制作に取り組む。初心者向けの資産運用アドバイスにも注力、安心の老後を迎えるために必要なマネーリテラシー向上の必要性を発信中
 

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