米国5大IT企業であるGAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)をはじめ、魅力的な優良企業が多数上場している米国株式市場。
実は少額投資非課税制度のNISAを使って、米国株に投資することができます。NISAで米国株投資にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。米国株投資を始めるのにおすすめの証券会社とともに紹介します。
米国株の魅力
NISAは外国株式を購入した場合にも適用されます。世界経済の中心である米国株式市場の銘柄に投資する魅力やメリット・デメリットを確認しましょう。
世界の優良企業へ投資できるのが米国株投資の魅力
米国株式市場には、GAFAM(グーグルを傘下に持つアルファベット、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)をはじめ、
魅力ある優良企業が多数上場しています。国際的な優良成長株に、日本に居ながらにして投資できるのが米国株投資の魅力です。
米国の株価動向が世界の株式市場に与える影響は多大なものがあります。NYダウ、S&P500、NASDAQの3つの株価指数が、日本の株式関連番組でも発表されます。前日の米国株価指数が、当日の東京株式市場にも大きな影響を与えることはよく知られているところです。
米国株式市場で取引できるのは米国株だけではありません。
中国や欧州、新興国の大企業も上場しているため、世界規模の投資ができるのも魅力です。
米国株に投資する方法
米国株に投資するには、取引している証券会社に「外国株式取引口座」を開設する必要があります。米国株はほとんどの証券会社で取り扱っています。外国株式取引口座は総合口座を持っていれば15時30分までの申し込みで翌日には開設でき、取引を始められます(マネックス証券の例)。
日本株は証券会社の取引ツールを使って瞬時に発注できますが、米国株は基本的に取引ツールでは取引できません。そのため、ホームページの米国株取引画面から発注します。米国株の場合、証券コードはなく、ティッカーと呼ばれる企業名を連想させるアルファベットの組み合わせで区別しています。たとえば、アップルならAAPL、マイクロソフトならMSFTという具合です。似たような組み合わせもあるので、入力は慎重に行いましょう。
株数は1株から取引でき、購入価格を指定する「指値」、具体的な価格を指定せず期間中の一番安い価格で購入する「成行」の、どちらでも発注できます。希望の価格で購入したい場合は指値買い、すぐに買いたい場合は成行買いが向いています。
決済方法には「外貨決済」と「円貨決済」があります。外貨決済はあらかじめ為替取引をして外貨を用意しておく必要があります。円貨決済は、国内株口座にある日本円の買付余力の範囲なら為替取引をしなくても発注できるので便利です。
NISAで米国株投資をするメリット
NISAで米国株投資をすると、以下のようなメリットがあります。
NISAで米国株投資をするメリット1:売却益や配当金が非課税
NISAは米国市場で取引された銘柄でも
売却益や配当金が非課税になります。米国企業は原則として四半期ごとに年4回配当を実施しています。米国株は配当利回りが高い銘柄が多いので、NISAのメリットを受けやすい市場といえるでしょう。
そのメリットは、国内株と比較すると明らかです。たとえば、国内株で年1回配当企業の株を持っている場合、配当金が入金されたら1年経過するまで次の配当金が入ることはありません。しかし、米国の有配企業であれば3ヵ月経過すればまた配当金が入金されますので、
短期間の保有でもNISAのメリットを享受できるのです。
NISAで米国株投資をするメリット2:米国株は1株から投資できるので120万円の枠を分散投資しながら最大活用できる
米国市場には単元株制度はありませんので、基本的に1株から投資することが可能です。対して国内株の場合は100株が単元になっています。株価1万2,000円の銘柄を100株購入すると、1銘柄だけでNISA 枠の120万円を使い切ってしまうことになります。
その点、
米国株は1万円以上する銘柄も1株から購入できます。GAFAMの株をすべて買うことも可能ですし、様々な業界の株を買い、分散投資を狙うことも可能です。NISA 枠を最大活用しながら分散投資によるリスク軽減も実現できるのが、米国株をNISA で購入する大きなメリットです。
NISAで米国株投資をするメリット3:中長期投資向き、米国経済自体が右肩上がりで上昇中
インデックス投資信託で株価指数に投資すると、NYダウやS&P500などの株価指数に連動して投資成果を得ることができます。SBI証券の調査によると、平成の30年間で日経平均株価が約26%下落したのに対し、
NYダウ工業株30種平均は約12倍に上昇しています。米国経済自体が右肩上がりで上昇した結果とみることもできます。その意味で、米国株は長い目でみて資産を増やせる中長期向きの投資対象といえるでしょう。
米国株取引におすすめの証券会社は?
最後に、米国株取引におすすめの証券会社をいくつかご紹介しましょう。これから投資を考えるならネット証券で口座開設すると手数料コスト面を削減できます。
米国株は証券会社によって取引できる銘柄が異なります。ネット証券のなかでは、SBI証券、楽天証券、マネックス証券などが比較的多くの米国株を扱っています。
▽ネット証券3社の米国株取扱銘柄数と取引手数料(税込)※2020年10月19日現在
|
取扱銘柄数 |
米国株手数料 |
最低手数料 |
最大手数料 |
為替手数料 |
SBI証券
|
3,040 |
0.495% |
0円 |
22米ドル |
25銭 |
楽天証券
|
3,519 |
0.495% |
0円 |
22米ドル |
25銭 |
マネックス証券
|
3,529 |
0.495% |
0円 |
22米ドル |
0円(買付時)
25銭(売却時)
|
※取扱銘柄数は各社とも随時変更になります。最新のデータをご確認ください。
3社の手数料体系は横並びですが、マネックス証券が買付時の為替手数料を無料にしているのが目立ちます。取扱銘柄数でもマネックス証券がやや多く、米国株取引に関して強みがあるといえそうです。
NISAで米国株投資をするデメリット
NISAで米国株への投資を行うとき、意外にメリットが多いことはわかりました。一方、デメリットはあるのでしょうか。確認していきましょう。
NISAで米国株投資をするデメリット1:為替リスクがある
外国株に投資する場合、最も心配なのが為替リスクです。同じ100ドルの株価でも、為替が1ドル110円なら1万1,000円の価値があるのに対し、1ドル100円の円高になると1万円に価値が下がってしまいます。ただし、逆のケースもあるため、為替の変動が常にマイナス要因というわけではありません。
NISAで米国株投資をするデメリット2:値幅制限がない
米国株にはストップ高・ストップ安の値幅制限がありません。したがって、株価が乱高下した場合、「成行注文」にするといくらで約定されるかわからないという不安があります。また、2020年3月のようにサーキットブレーカーが発動され、取引が突然停止される場合があります。
NISAで米国株投資をするデメリット3:情報を得にくい
日本株に比べて米国株の情報を得にくいというのは事実でしょう。企業のIR情報は日本でも閲覧できますが、英文が読めなければ正確な情報を得ることはできません。英語力の有無がハンディとなりかねません。ただし、最近ではインターネットの金融系サイトでは米国株の分析を行う記事も多数掲載されています。おおよその企業動向はわかるようになっているので、参考にしたいところです。
NISAで米国株投資をするデメリット4:配当金の外国税額控除が利用できない
米国株の配当金は二重課税されるデメリットがあります。米国で配当金に10%課税され、さらにそこから国内で20.315%課税されるため、手取り配当は72%弱まで減ってしまいます。そこで用意されているのが「外国税額控除」という制度です。外国税額控除とは、外国で納付した外国税額を、一定の範囲で所得税から控除できる仕組みです。
しかし、NISAでは国内の税額が非課税で二重課税にならないため、外国税額控除を利用することができません。つまり、NISA口座に振り込まれる配当金であっても、
米国でかかる10%の税額は非課税にならないというデメリットがあるのです。ただし、前述したように、他の口座では課税される国内での20.315%はNISAなら非課税となるので、有利であることは変わりません。
NISAのメリット、デメリット
次に、NISAにはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
NISAのメリット
NISAの最大のメリットは、株式や投資信託などの投資で得た売却益や配当金・分配金が最長5年間非課税になることです。株式の売却益や配当金には通常、20.315%(復興特別所得税を含む)の税金がかかります。通常の投資において年間10万円の利益を得ても2万円以上が税金で引かれますが、NISAを活用すればそれがゼロになるということです。
さらに、NISA口座で保有している金融商品を非課税期間終了後、翌年の非課税枠に移す「ロールオーバー」ができるのも大きなメリットです。たとえば、非課税期間終了時点で150万円に値上がりしている銘柄を、そのまま新規のNISA枠に移せば、非課税枠120万円以上の資金を非課税で運用することができます。しかも、ロールオーバーの金額に上限はありません。
もう一点、NISA口座内での取引で発生する利益や配当金は非課税ですので、当然のことながら確定申告の必要はありません。確定申告の負担がなくなるのもメリットといえます。
NISAのデメリット
一方のデメリットは、NISA口座内の取引は損益通算の対象とならないことがあげられます。通常、株式投資などで得た利益と、損失が出た際は相殺することが可能ですがNISA口座内で損失が出た場合、特定口座や一般口座の利益と相殺することは認められないのです。また、損失を翌年に持ち越すこともできません。
もう1つのデメリットは、NISA口座は1人1つの金融機関でしか開設できないことです。ただし、1年ごとに金融機関を変更することはできます。金融機関を変更したい場合は、変更したい年の前年10月1日から翌年9月30日までに手続きする必要があります。
変更したい年の1月1日以降、変更前の証券会社のNISA口座で買付があった場合は、その年の金融機関の変更はできなくなります。したがって、極端な話ですが新年最初の取引でNISA口座を持つA証券で買付すれば、その1年はA証券でNISA口座を運用することが確定してしまうので注意が必要です。
NISAとは?制度概要を知ろう
はじめに、米国株にも投資できるNISA(少額投資非課税制度)の概要を確認しておきましょう。
NISAの制度概要
NISAとは、年間120万円までの証券投資から発生する売却益や配当金・分配金が非課税になる制度です。日本政府が「貯蓄から投資へ」の流れを国民に促すため、2014年1月にスタートしました。最初は一般NISAだけでしたが、2016年に未成年を対象にした「ジュニアNISA」がスタート。2018年には積立投資に特化した「つみたてNISA」が加わり、2020年現在では3種類になっています。
概要は下表のとおりですが、それぞれ非課税枠や非課税期間が異なりますので、資金運用の目的に合わせて選択するとよいでしょう。
▽NISA制度の概要(2020年度)
|
一般NISA |
つみたてNISA |
ジュニアNISA |
非課税枠 |
120万円 |
40万円 |
80万円 |
対象年齢 |
日本在住の20歳以上 |
日本在住の20歳以上 |
日本在住の0~19歳 |
非課税期間 |
5年間 |
20年間 |
5年間 |
最大投資可能額 |
600万円 |
800万円 |
400万円 |
非課税対象商品 |
国内株式、外国株式、公募株式投資信託、ETF |
公募株式投資信託 |
国内株式、外国株式、公募株式投資信託、ETF |
一般NISAとつみたてNISAは併用することができません。どちらかを選ばなくてはなりませんが、年間の非課税枠の大きさで選ぶなら一般NISAが有利です。一方、長い目で見た最大投資可能額ではつみたてNISAが多くの非課税枠を使うことができます。もう1つのジュニアNISAは2023年で終了することが決定しています。
NISAは中長期投資に向いている
NISAは5年間にわたり120万円の非課税枠があるため、投資スタイルが中長期の人に向いています。たとえば、株価2,400円の株式を100株購入すると投資額は24万円です。同様の株価の株式を短期間に5回売買すれば、その都度課税されますが、NISAであれば120万円までが非課税になります。頻繁に売買を繰り返すことで利益を得るデイトレードには向いていませんが、高収益企業の5年後の成長を待って現物株で保有するなどの運用方法が向いているといえるでしょう。中長期投資こそNISAの主旨に最も適した投資スタイルです。
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米国株は右肩上がりで上昇しており魅力的な投資対象
ここまでNISAの概要と米国株投資のメリット・デメリットをみてきました。GAFAMを中心に今後も米国株式市場が世界の株式市場をリードしていく図式に変化はなさそうです。日本株がバブル崩壊前の株価をいまだに回復できないなか、米国株は史上最高値を更新しています。米国株は右肩上がりで上昇しており魅力的な投資対象といえます。
もし、これまで日本株のみに投資してきたのであれば、米国株をポートフォリオに加えることで運用成績を向上させられるかもしれません。あなたもNISAを使い、魅力的な米国株に投資して、グローバル投資家の仲間入りをしてみてはいかがでしょうか。
※本記事は2020年10月19日現在の情報をもとに構成しています。投資にあたっては、証券会社のホームページで最新の情報をご確認ください。
文・丸山 優太郎
日本大学法学部新聞学科卒業。おもに企業系サイトで執筆。金融・経済・不動産系記事を中心に、社会情勢や経済動向を分析したトレンド記事を発信している。
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