投資・資産運用
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2020.10.1

【特集#1】投資マネーのダイナミズムを追う

(写真=ANA Financial Journal 編集部)
(写真=ANA Financial Journal 編集部)
世界的な経済停滞により、私たちの投資環境は激変しています。原油価格は一時マイナスを記録し、株と金が同時に高騰するような、いままでに経験をしたことのない市場の動きが見られています。この教科書にも載っていないこれらの新しい市場動向を、私たちはどう考えればよいのでしょうか。本特集では、株式市場や金市場、穀物市場をテーマに、4回にわたって解説していきます。1回目となる今回は株式市場と金市場の同時高騰に理由を探ります。

米国株が騰勢を強め、金価格も史上最高値を記録。その理由とは

世界的に景気の先行き不安が続く中、今夏にかけて米国株が騰勢を強め、金価格が史上最高値を更新しました。本来、株式は景気拡大局面で値上がりし、金は経済不安が増すにつれて買われる傾向があり、教科書的には両方が値上がりしないはずです。いまの市場の動向は、一見すると経済の常識に反する奇妙な現象ですが、背景には日米欧など主要国の中央銀行による大量の資金供給と超低金利政策があり、決して不可解なことではないようです。
 

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FRBの大胆な金融政策で米国債金利が0.5%まで低下

米国では中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)が短期金利の誘導目標を0~0.25%に設定しています。事実上のゼロ金利政策です。大量の資金を供給して金利を引き下げ、融資や投資のハードルを低くして景気を刺激するのが狙いです。

低金利政策は米国景気の下支えに一定の効果を発揮していますが、困ったこともあります。元本の安全性が高いとされる国債や社債の利回りが極端に低くなってしまったのです。10年満期の米国債の利回りは2018年11月には3.2%台でした。満期まで保有しておくだけで、毎年3%を超える金利収入と満期の元本償還を米国政府が保証してくれていたのです。

しかし、FRBは景気の減速傾向が著しくなった2019年7月、10年半ぶりに政策金利の引き下げを開始。2020年3月に資金供給量を増やす量的金融緩和の第1弾として7,000億ドル(1ドル=105円換算で73兆5,000億円)の大量資金供給を打ち出すと、10年国債金利は0.5%まで低下しました。

2020年7月末時点でも大きな変化はなく、米国の10年国債金利は0.6%付近で推移しています。米国の圧倒的な経済力と軍事力を背景に、米国債は世界中から資金を集めてきましたが、金利が低くなるにつれて投資するメリットも薄れてきたのです。

世界のマネーは安全な国債から株や金のリスク商品へ

事情は日本でも同じです。黒田東彦氏が日銀総裁に就任し、2020年3月で8年目に入りました。景気悪化で物価や賃金が下がり、さらに景気が悪化するデフレの悪循環に戻らないよう、日銀は消費者物価上昇率の目標を年2%に設定。大量の資金を供給して金利を引き下げる「異次元金融緩和」を続けてきました。

2020年7月末時点で日本国債の利回りは10年物でほぼゼロ%。20年物でも0.4%前後にとどまり、お金を増やす金融商品としての魅力はかなり乏しい状態が長引いています。国債の利回りはあらゆる金利の基準となるので、企業の融資利率や住宅ローン金利が低下する利点がある反面、社債の利回りや預金金利も限りなくゼロに近い超低水準になり、資金運用が困難になる弊害があります。

欧州も異例の超低金利が常態化しつつあります。10年物国債の利回りは欧州最大の経済規模を誇るドイツでマイナス0.5%、フランスでマイナス0.2%、イギリスでプラス0.1%しかありません。国債を買って金利収入を得るという最も手堅い投資手法が事実上機能しなくなっているのです。

一方、世界的に資金運用のニーズは衰えを知りません。一握りの富裕層や巨大金融機関だけでなく、大多数の庶民が加入する公的年金基金や老後の安心に備える保険、貯蓄商品を販売する民間保険会社も預かった資金を増やす使命があります。

しかし、世界的な低金利政策の結果、国債を買って良好なリターンと安全性の両立を狙った運用をするという選択肢は消えてしまいました。値上がり益の獲得を重視する資金が米国株市場に流入し、安全性を最重視する資金が、時代を越えて価値を保ってきた金に向かっているのが世界のマネーの大きな流れとなっているのです。
 

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