投資・資産運用
-
2020.9.30

株初心者でもはじめられるIPO投資とは?知っておきたいメリットとデメリット

(写真=SB/stock.adobe.com)
(写真=SB/stock.adobe.com)
IPOは新規公開株ともいわれ、未上場企業が株式市場に上場することをいいます。IPO投資は将来有望な企業に初期から投資できるため人気がありますが、初心者がはじめる前には、そのメリットとデメリットをきちんと把握しておきたいものです。今回はIPOの仕組みとそのメリット・デメリット、IPO投資ができる証券会社とサービスを紹介します。
 

どこの株式市場でも売り出していない株を取引できるIPO

IPO(Initial Public Offering)は「新規上場」や「新規株式公開」という意味で、IPO株(新規上場株、新規公開株)を指す場合もあります。新規上場とは、まだどこの株式市場にも株を売り出していない株式会社が、新たに株式を株式市場に供給し、一般投資家が株取引できるようにすることをいいます。こうして投資家に広く投資の機会を提供することで、その会社は市場から直接、資金調達できるようになります。

一般的にIPO株とは、新規上場したばかりの株式ではなく、新規上場を予定する会社の「公募」または「売出」株式をいいます。新たに株式を発行することを「公募増資」、既存の株主が保有株式を市場に放出することを「売出」といいます。新規上場時には多くの会社は公募増資を行い、資本金の確保や事業の拡大のための投資に充てることが多いようです。


こちらもおすすめ
IPO株とは!スケジュールと買い方、おすすめ証券会社徹底解説
株初心者が成功するために知っておくべきこと10選

IPO株の公開価格はどうやって決まる?

IPO株はまだ株式市場に出回っていない株式なので、はじめに取引する価格(公開価格、公募価格)を決める必要があります。この価格の決め方は、現在「ブックビルディング方式」という方式が主流になっています。

IPO株の価格の決め方1:ブックビルディング方式(需要積み上げ方式)

ブックビルディング方式とは、株式を買う投資家にどれほど需要があるのかという状況を見ながら公募価格を決定するものです。この方式では、まず新規上場をする会社の公募増資と売出について、証券会社が仮の発行条件を投資家に掲示します。次に投資家は、仮条件の範囲内で価格や株数などを需要申告期間(ブックビルディング期間)に提出します。証券会社はこの投資家の需要を調査・把握したうえで、公開価格を決定します。

具体的には、ある会社が新規上場をする場合、証券会社は大口の機関投資家などからの意見を元に、仮条件の価格を「1,000~1,800円」などと設定します。次に、ブックビルディングに参加する投資家はこの仮条件の範囲内で希望価格を提出します。1,600円で買うという人がもっとも多ければ、それに近い価格が公開価格になります。

IPO株の価格の決め方2:入札方式(需要積み上げ方式)

公開価格の決定方式には「入札方式」もあります。これは文字どおり、投資家が一定期間に希望価格を入札し、その結果をもとに公開価格が設定される方式です。入札方式は非常にシンプルでわかりやすく、また資金調達が目的の企業にとっても、株式を有利な条件で引き受けてもらえるなどのメリットがあります。しかし公開価格が高騰しやすいために、上場後に株価が急激に下落して、その後の資金調達に支障をきたすなどの問題点が指摘されています。

ブックビルディング方式は入札方式のような極端な価格の高騰が起こりにくく、多くの投資家の意見を取り入れることで需要と供給のバランスが取れた価格を決めることができます。結果として、公開後の売買高の低下を回避できることがメリットだと考えられています。

買付時の手数料無料、成長企業への投資、値上がりの期待。IPO投資のメリット

IPO株を購入する、IPO投資のメリットを知っておきましょう。

IPO投資のメリット1:買付時の手数料が無料

ブックビルディング方式では、発行株式数より注文株式数が多ければ抽選になります。現在では多くの場合で抽選になっています。無事に当選し購入する意思を示すと、公開価格でIPOを購入できます。通常の株式買付で発生するような手数料はありません。

IPO投資のメリット2:成長の期待が持てる企業に投資できる

IPO投資の大きな魅力は、今後の成長が期待される企業に投資できる点です。一般的に、株式市場に新規上場する会社は、これから事業を拡大したり、会社の規模を大きくしたりしていきたいといった伸び盛りの会社が多いのです。

IPO投資のメリット3:初値が公開価格より高くなることも

ブックビルディング方式では抽選になることが多いため、抽選に外れる人も出てきます。こうした公開価格で購入できなかった投資家が新規上場日に買い注文を出した結果、人気のある企業の銘柄は初値で公開価格を大きく上回ることもあります。

公募価格割れのリスクや購入の辞退ができないことも。IPO投資のデメリット

IPO投資は、まだ公開されていない株式を購入するため、買付方法が通常の株式投資と異なるなど注意点もあります。IPO投資をはじめる場合は、デメリットも十分に理解しておきましょう。

IPO投資のデメリット1:公募価格割れのリスクがある

「初値が公開価格より高くなることがある」とお伝えしましたが、当然、初値が公開価格より下回ることもあります。これを「公募価格割れ」といいます。購入した価格より株価が低ければ、利益を得ることはできません。特にすぐに株式を売りたいと考えている人にとって、公募価格割れのリスクは大きな不安要素になります。

ブックビルディング方式では前述のように投資家が仮条件の範囲で購入希望価格を決めますが、この仮条件の上限近くで公開価格が決まらないものは、それほど競合相手がいない銘柄といえます。もちろん公募価格割れをしても株価が上昇するまで株を保有し続ければいいのですが、その企業が本当に将来的に成長していくかは慎重に見定める必要があります。

IPO投資のデメリット2:抽選に当たらなければ買えない

ブックビルディング方式では発行株式数より注文株式数が多ければ抽選になり、当選しないとIPO株を購入できません。IPO投資が活況な昨今は多くのIPO株で抽選が行われており、また当選するのも難しくなってきています。

当選確率を上げるためには複数の証券口座から申し込む、あるいは複数のIPO株に申し込むなど抽選回数を増やす必要があります。しかし、証券口座によっては抽選に参加するだけで口座に入金が必要な場合もあります。これらの抽選のために入金するお金は、そのあいだ運用で増えるわけではありません。そのため、どの程度のお金をIPOに回すかは、IPO投資のメリットとほかの運用のメリットを比較して決めることになります。

IPO投資のデメリット3:当選したら購入を辞退できないこともある

ブックビルディング方式で当選しても、その銘柄の価格が公開価格を下回る可能性があると、購入を辞退したくなるかもしれません。しかし、証券会社によっては当選後の辞退はできないこともあります。事前にブックビルディングの参加条件をよく確認しておきましょう。

IPO投資のデメリット4:価格が乱高下しやすい

IPO株をすぐ売却するのではなく、しばらくのあいだ保有しておこうと考えている人にとっては、価格が乱高下しやすいこともデメリットの1つです。新規上場したばかりの株式は注目が集まるので、取引量も多くなります。結果、価格の変動が大きくなりやすいと考えられています。

IPO投資におすすめの証券会社

IPO投資も株式投資の一種なので、取引をするためには証券会社に証券口座を開設する必要があります。

IPO投資では証券会社選びが大切

IPO投資では、特に証券会社選びが大切です。証券会社によってIPOの取扱銘柄数には差があり、そもそもIPOを取り扱っていない証券会社もあるからです。ここでは、IPO投資のための証券会社を選ぶ際に重視したい、3つのポイントを紹介します。

・証券会社選びのポイント1:IPO株の取扱銘柄数
取扱銘柄数が多い証券会社ほど、抽選機会に恵まれることになります。そのため、IPO株を取り扱ってきた実績は証券会社を選ぶ際に最も大切なポイントです。

・証券会社選びのポイント2:主幹事数が多いか
企業が新規上場する際にさまざまなサポートを行う証券会社は「幹事証券」と呼ばれ、そのなかでも中心的な役割を担う証券会社を「主幹事証券」といいます。

IPO株はいくつかの取扱証券会社に配分され、基本的にそれ以外の証券会社からは購入することはできませんが、証券会社により配分される株数に差があります。主幹事になった証券会社はほかの取扱証券会社に比べ多くの株数が割り当てられるケースが多いです。一般的には、IPO株の割り当てが多ければ多いほど、当選して購入できる人も多くなるため、当選する確率は高くなります。

・証券会社選びのポイント3:抽選方法
人気のあるIPO株は抽選になることが多いのですが、抽選方法は証券会社によって異なります。例えば、1単元あたりの当選確率が平等でも、1単元しか抽選申し込みできないのか、複数できるのかで確率は変わってきます。もし投資資金が豊富にあるのなら、複数単元を申し込むほうが当選確率は高くなります。一方、少額からはじめたい人であれば、1銘柄につき1単元しか申し込めないシステムのほうが当選確率は公平になるでしょう。なお、預かり資産の額によって当選確率が変動する証券会社もあります。

IPO投資を利用できる証券会社5選

IPO投資は、証券会社によって取り扱いの有無、そして取り扱い数に違いがあります。そこで、IPO投資の取り扱い実績のある代表的な証券会社5社から、IPO株の取り扱いにおいて主幹事数と、取扱銘柄数を調べてみました。すべて2019年の実績です。証券会社それぞれの特徴を見てみましょう。

▽表.IPO投資を利用できる主な証券会社
 
  主幹事数 取扱銘柄数
SMBC日興証券 20社 64社
SBI証券 6社 84社
マネックス証券 0社 45社
野村證券 17社 -(公式情報無し)
大和証券 19社 47社
※主幹事数、取扱銘柄数は2019年の実績

SMBC日興証券

SMBC日興証券の特徴は、主幹事になる回数と取扱銘柄数の豊富さです。2019年の主幹事数は20社とトップの実績を残しました。支店やオンライントレードで取引ができますが、オンライントレードはすべて抽選方式です。ただし、配分は同社が販売する株数のうちの最大15%が目処になります。そのうち、10%は同一条件・同一確率の「同率抽選」のため、資産残高に関係なく誰でも当選する可能性があります。また残り5%は、預かり資産によって当選確率が最大25倍に変わる「ステージ別抽選」が行われています。

SBI証券

SBI証券は主幹事数こそ大手総合証券会社には及ばないものの、取扱銘柄数が最も多い証券会社です。2019年に新規上場した株式をほとんど取り扱っているので、SBI証券の口座を持っていれば、たいていのIPO銘柄に申し込むことができるでしょう。

SBI証券の大きな特徴は、抽選に外れてもチャンスが広がる「IPOチャレンジポイント」です。これは新規上場株式の、ブックビルディング後の抽選・配分に外れた回数に応じて加算されるポイントです。このポイントを利用すると、次のIPO投資の申し込み時にIPO銘柄の当選確率が高くなります。

マネックス証券

マネックス証券は2019年の主幹事実績はありませんが、大手証券会社に引けを取らない取扱銘柄数があります。マネックス証券のIPOの特徴は、抽選が平等なことです。特に最近ではIPO投資の人気が高く、申し込みが集中するために多くの場合で抽選になります。証券会社によっては預かり資産の額やIPOの申込数が多い人ほど当選しやすくなるシステムを採用していますが、マネックス証券ではそれらに関係なく、すべての人に平等のチャンスがあります。

野村證券

国内最大手の証券会社である野村證券は、主幹事数が毎年トップクラスである点が特徴です。大規模なIPO案件で主幹事を務めることも多くあります。

IPOの抽選には通常「前受金」という事前入金が必要になりますが、野村證券ではオンライン抽選の場合は前受金が不要です。当選してから購入代金を入金すればいいので、証券口座内の資金を気にせず申し込むことができるのは大きなメリットです。

大和証券

大和証券も主幹事数が非常に多く、また取扱銘柄も豊富です。大和証券では、同社が販売するIPO株数のうち10~15%は平等抽選になっています。この抽選で申し込めるのは、1銘柄につき誰でも1単元のみです。つまり、資金量に応じて当選確率が変わることがないのが特徴です。

また販売予定数の10%は、プレミアムサービスのステージや、過去の取引実績などに応じて累積した交換ポイントの残高に応じて当選確率が変動する「チャンス抽選」になっています。

投資予算が少なくても大丈夫。少額からはじめられるIPO投資サービス3選

IPO投資には、通常、まとまった資金が必要になります。例えば公開価格が1,500円の銘柄でも1単元(100株)では15万円必要になりますし、IPO投資で当選確率を高めようとすれば、複数の証券会社、または複数の銘柄に抽選を申し込む必要があるので、そのぶん必要資金は増えていきます。しかし、IPO投資のみにそれだけの資金を回せる人は、それほど多くないのではないでしょうか。ここでは少額からはじめられるIPO投資サービスを紹介します。

SBIネオモバイル証券「ひとかぶIPO」

SBIネオモバイル証券(ネオモバ)が提供する「ひとかぶIPO」は、あまり投資資金が潤沢ではない20代、30代向けのサービスです。本来、株式投資は単元株(100株)で取引する必要があります。しかし、「ひとかぶIPO」では1株から1株単位で申し込みができるので、少額からIPO投資をはじめることができます。

配分は抽選方式なので、誰でも当選する可能性がありますし、「若年優遇」や「取引継続優遇」などのユニークな優遇枠で若年層の人にもチャンスが広がっています。

One Tap BUY「誰でもIPO」

One Tap BUYが提供する「誰でもIPO」も、新規上場株式を1株から1株単位で100株(1単元)まで購入申し込みができます。したがって、1株あたりの公開価格が高い銘柄でも少額から申し込めて、リスクを小さくすることができます。

また、こういった1株単位で販売するサービスでは、当選者が多くなりやすいというメリットもあります。通常のIPOの抽選は単元(100株)単位の割り当てになるので、ある証券会社の割り当てが1万株の場合、当選者は100人になります。対して「誰でもIPO」では1株単位の割り当てになるので、最大1万人に当選する可能性があることになります。

株式投資型クラウドファンディング「ファンディーノ」

IPOとは異なりますが、日本クラウドキャピタルが提供する、株式投資型クラウドファンディング「ファンディーノ」では、オンライン上で非上場企業の株式を買うことができます。いわば、IPOを目指す企業の株に投資できるということです。

企業は事業計画やミーティングなどを通して審査され、投資をする人はその審査に通った未上場企業のなかから、投資したい会社を選びます。投資額は10万円程度からです。

IPO投資をNISAではじめるメリット

新規上場を目指す企業は成長企業であることが多いため、大きく株価が上がることが期待できます。株価上昇による利益が大きいほどNISAの特徴が生かせるので、ここではIPOをNISAではじめるメリットについて紹介します。

NISAとは

NISAは少額から投資を行う人のための非課税制度で、2014年からスタートしています。最大の特徴は、年間120万円の非課税投資枠内であれば、株式や投資信託から得られる配当金や分配金、譲渡益に対して最長5年間税金がかからないことです。

通常、投資をして得た利益には20.315%の税金がかかります。例えば1株1,000円の株式を100株買って、その株価が1,200円になった場合、利益の2万円(200円×100株)に対して20.315%である4,063円税金が引かれます。しかし、NISA口座で運用していれば、税金が引かれず利益の2万円をそのまま受け取ることができます。

IPO投資とNISAの相性がいい理由

新規上場企業は、そもそもこれから株式市場に上場して資金を調達し、事業の拡大や設備投資を行おうとしている、いわゆる成長が見込める会社です。一般の会社よりも株価の値上がりが期待できるといえるでしょう。

NISAの「利益に税金がかからない」という特徴は、利益が出ないことには生かせませんが、逆に利益が大きければ大きいほどメリットは大きくなります。10万円の利益に課税される税金は2万315円ですが、50万円の利益であれば10万1,575円です。つまり、50万円の利益が出た時は、NISAで運用していたというだけで本来の手取りより約10万円も多くなるのです。

また、NISAのメリットが生かせるのは最長5年間です。通常の株や投資信託の場合、5年以内に価格が値上がりしていなければ売るタイミングが難しくなります。その点、IPO投資では上場直後の初値が上がることも多く、短期間で売ると決めておけば5年間という制限を気にする必要もありません。

IPO投資を中心にNISAを利用したい場合の注意点

NISAを利用してIPO投資をはじめる場合に、いくつか注意点があります。

まず、IPO株を取り扱っている証券会社は多くなく、扱っていたとしても数に限りがあることは紹介しました。しかし同じ証券会社の口座でも、NISA口座ではIPO投資ができない場合があります。加えて、NISA口座でIPO投資ができたとしても取扱銘柄数が少ないこともあるので、より慎重に証券会社を選ぶ必要があります。

また、NISAを利用すると「つみたてNISA」という積立方式専用の非課税制度が利用できなくなります(NISAか、つみたてNISAのどちらか一方を選ぶ必要があります)。つみたてNISAは、少額から投資信託で長期的にコツコツ積み立てをするための制度です。年間の非課税投資枠は40万円と少額になりますが、非課税期間が20年とNISAに比べて長くなっています。IPO投資と積み立て投資はまったく異なる投資方法ですので、どちらが自分に合っているかはしっかり考えておきたいところです。

まとめ:IPO投資はデメリットを理解したうえで検討を

IPO投資とはどういうものか、その価格の決まり方とメリット、デメリットを紹介してきました。現在は多くのIPO銘柄は抽選になっており、確実に買えるとは限りません。ですが、これから成長が見込める企業で、大きな利益が期待できる魅力にあふれています。

ただし初値が購入価格を下回ったり、抽選に参加するために前受金がかかったり、まとまった資金が必要になるなどの注意点もあります。これらのリスクを少なくするために、最近では前受金不要や少額からIPO投資に参加できるサービスも増えてきました。投資初心者の人はこういったサービスの利用も視野に入れ、デメリットを理解したうえで購入を検討してみてください。
 
文・松岡 紀史
所属・ライツワードFP事務所代表
筑波大学大学院経営・政策科学研究科(現システム情報工学研究科)でファイナンスを学ぶ。元システムエンジニア。節約や貯金など地道な作業の大切さと、「投資だけ」「保険だけ」に偏ることのないバランスの取れた資産運用を広めるため、執筆・セミナー・個別相談などを行っている。ライツワードFP事務所代表

>>その他のおすすめ記事
滝川クリステルさんが1.5億円保有する「国債」ってどんな商品?
【連載#2】3億円失う人も…”億り人”で居続けることの大切さ
【連載#3】100万円を4,000万円にする「マーケットの渡り方」
【連載#4】忙しいビジネスマンでも株で“億り人”になれるワケ
総資産を1億にする資産運用法とは?

関連記事