ベンチャーキャピタルは豊富な資金力と高度な情報分析力で、優秀なスタートアップ企業を見つけて投資をします。
個人投資家が同じ投資をしようとしても、資金力と情報量の差から難しいのです。
しかし、ベンチャーキャピタルの投資テーマを分析することで得られるメリットもあります。
そこで今回は、世界最大規模のベンチャーキャピタル、セコイア・キャピタルについて解説します。
セコイア・キャピタルとは
セコイア・キャピタルとはアメリカを代表するベンチャーキャピタル(投資会社)で、これまでにAppleやGoogle、Yahooなど250以上のテクノロジー企業に投資をしてきました。
2019年10月25日に亡くなった「シリコンバレーの父」ことドン・バレンタインが創業したベンチャーキャピタルで、運用額は約183兆円にのぼり、世界最大のベンチャーキャピタルとも呼ばれています。
1970年代にアメリカで設立されると、主にテクノロジー企業に投資を行い、近年はアメリカ以外にイスラエル、インド、シンガポール、香港、中国などアジアでも幅広く活動しています。
特に2005年に中国で設立した現地法人「セコイア・キャピタル・チャイナ」は、中国で最も活発な投資活動を行っており、中国国外でも名前の知られるIT関係の企業のほとんどに関わっているといっても過言ではありません。
最近ではインド・東南アジア向けに約1,450億円規模のファンドを2つ設立し、同地域のスタートアップ企業に向けての投資を推進すると発表しました。
セコイア・キャピタルの投資企業
セコイア・キャピタルは主にスタートアップ企業に投資をしています。
スタートアップ企業には5つのフェーズがあり、大まかに分類すると以下のようになっています。
- シードフェーズ…事業者は自分のアイディアを投資家やベンチャーキャピタルにPRして出資を募る。
- アーリーフェーズ…起業直後の状態。設備費用などで赤字を出しており、ビジネス自体は本格的に動いていない。
- エクスパンションフェーズ…ビジネスが加速する時期。サービスや商品のリリースが広がり、利用者の反応からマーケティングが行えるようになる。
- グロースフェーズ…エクスパンションで得たデータをもとに規模を拡大し、人員やプロジェクトが増えていく時期。
- レイターフェーズ…スタートアップ企業が安定した時期に入り、大きな変化が起きにくい。スタートアップというカテゴリーから外れる。
一般的なベンチャーキャピタルは、第三段階のエクスパンションフェーズや第四段階のグロースフェーズから本格的な投資を始めますがセコイア・キャピタルは違います。
セコイア・キャピタルではシードフェーズでは10万~100万ドル、アーリーフェーズでは100万~1,000万ドル、グロースフェーズでは1,000万~5,000万ドルを基本として、フェーズを問わずに投資をしています。
スタートアップ企業はアーリーフェーズが最もリスクの高い時期といわれていますが、そのタイミングでも投資を続けるのは、やはり世界最大級のベンチャーキャピタルならではの資本力です。
セコイア・キャピタルのホームページでは、現在投資中のスタートアップ企業がリストとして公開されています。
具体的な投資額は不明ですが、2010~2020年までに投資をした企業のなかで、有名になった企業をいくつか紹介します。
Robinhood(ロビンフッド)
Robinhoodとは、手数料なしで株や仮想通貨などの売買ができるサービスで、金利3%の預金口座を提供するサービスもあり、アメリカの若い世代を中心にユーザーを増やしています。
高価な株式も0.000001株から購入できるというハードルの低さと、新型コロナによって将来への不安が増した世代や人々が投資を始めるようになったことで、累計ユーザー数は1,000万人を突破。
評価額は86億ドル企業となり、あと少しで100億ドル企業に手が届きます。
Ant Financial(アント・フィナンシャル)
アリババグループの金融関連会社で、世界でユーザー数12億人を突破したAlipayの提供を行っています。
現在では中国の主要フィンテック企業として注目されており、アジア各国のフィンテック関連会社やデジタル決済会社に出資をしており、影響力を拡大しています。
2019年2月にはロンドンにある決済企業を買収しており、アメリカよりも規制の緩いヨーロッパ市場にも活動を広げると予想されます。
Coupang(クーパン)
Coupangは韓国の最大手ECサイトを運営している企業です。
韓国版Amazonとも呼ばれており、ファッションやコスメ、日用品、食料品まであらゆる製品が購入できます。
韓国人の50%がアプリをインストールしていると言われるほどユーザー数が多く、ラインアップが豊富で価格が安いのが特徴です。
記事執筆時点では韓国のみの利用となっており、日本から購入する際にトラブルがあると報告されています。
しかし2018年にSoftbankのビジョンファンドが20億ドル出資するなど、日本のファンドからの注目度もあり、今後日本でのサービス展開を示唆するコメントも発表されています。
有名ベンチャーキャピタルの投資先を分析するメリット
個人投資家とベンチャーキャピタルでは、資金力や情報収集・分析に大きな差があり、同じように投資をすることは不可能です。
しかし、セコイア・キャピタルのような有名ベンチャーキャピタルがどこに投資をするのか分析するのは、個人投資家にとって大きなメリットになります。
例えば、「セコイア・キャピタル・チャイナ」が2019年に投資を複数回行ったテーマは、中国市場のファッションとオンライン学習です。
中国資本による海外ブランドの買収は進んでおり、フランスの「ランバン」やアメリカの「セント・ジョン」、イタリアの「カルーゾ」などの有名ブランドの株主に、中国資本が入っています。
中国のデパートや街角にブランド製品が置かれるようになり、中国人は日本まで来なくてもブランド物のウェアやアイテムが手に入るようになっています。
同時に中国では若者を中心に中国ブランドのファッションも人気を集めており、中国のEC市場規模は年々増加しています。
セコイア・キャピタルはその流れに目を付けており、中国のファッションに関係するスタートアップ企業に対して出資をしております。
中国では毎年6月初旬に全国一斉で大学入試が行われます。
そのため春節が終わると、試験まで半年を切るので受験生は勉強に集中しますが、新型コロナの影響で学校や塾に通えません。
また、都市部にばかり人口が集中してしまい、高度な授業は都市部に限定され、都市郊外や地方に住む子供との教育格差も問題視されています。
これらの問題を解決できる方法として、子供向けのオンライン学習が注目されましたが、セコイア・キャピタルでは2019年ごろから投資を始めています。
このように有名ベンチャーキャピタルの投資傾向やテーマを分析することで、次にどんなテーマの分野が伸びてくるのか見極めることができます。
まとめ
以上が、セコイア・キャピタルの投資テーマを分析して投資家が得られるメリットの解説になります。
セコイア・キャピタルほどのベンチャーキャピタルになれば、時流を見極めて投資をするだけでなく、自分たちで時流を作るだけのパワーもあります。
新型コロナで大きく揺れ動く世界情勢で、企業やテーマを分析するのが難しいときは、ベンチャーキャピタルがどんな投資先を選定しているのか分析してみるのも勉強になるでしょう。
文・The Motley Fool Japan編集部/The Motley Fool Japan
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