投資・資産運用
-
2020.8.5

景況感不透明でも株価回復。海外売り方を抑え込んだ「日銀ETF買い」の威力

(写真=picture cells/stock.adobe.com)
(写真=picture cells/stock.adobe.com)
直近の経済環境は相変わらず予断を許さず、実体経済はL字またはU字回復を予測する声が圧倒的です。反面、株価は3月中旬より下旬にかけての急落局面から値を戻し、V字回復の様相すら見せています。株価の反転に一役買ったとされているのが、「クジラ」です。

暴落の瀬戸際から急回復

2020年3月23日(月)朝、市場関係者は東京市場が開くのを固唾を呑んで見守っていました。

その前の週までの世界相場は、FRB(連邦準備制度理事会)をはじめとする主要国中央銀行が緊急利下げ・資金供給といったあらゆる手立てを講じても下げが止まらず、18日(水)にはNYダウが1割近く急落、またもサーキットブレーカーが発動されます。

早朝時点でのシカゴ日経平均先物も1万5,060円(1月高値の2万4,115円から4割安)をつけ、誰もが東京市場の波乱を覚悟していたのです。ところが相場は動かず、むしろ上昇します。アジア株もダウ夜間取引も下落している中で異例の展開です。「クジラが動いたか……」。手練れのウォール街トレーダーたちはうめきました。
 

こちらもおすすめ
初心者なら試してみたいETF投資、買うならこの証券会社
ETFて?減配…?配当の基礎知識!

日銀の介入で相場を下支え

クジラとは、金融市場において大きな影響を与えうる、巨額の資金を有する機関投資家のことです。日本においては日本銀行や年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などが該当します。

株価の戻りに慌てた短期筋は、損失覚悟で踏み上げ(空売りした株の買戻し)に走り、株価上昇に拍車をかけました。海外短期筋が仕掛ける空売りを抑え込み、相場下支えに一役買ったのが、世界にも例を見ない中央銀行による巨額のETF(上場投資信託)購入です。

日銀は3月の決定会合で、ETFの年間購入目標を12兆円にまで倍増させ、19日には1日あたりで最高額2,000億円を購入、この情報が市場関係者に伝わり売りに対する心理的な重しとして働いたようです。

その後は金融・財政当局の積極的な緩和策も奏功し、相場は暴落の瀬戸際から急回復を果たします。

官製相場は思わぬ副作用も

一方、中央銀行による株やETF買いは市場をゆがめる「禁じ手」とされ、FRBやECB(ヨーロッパ中央銀行)も手を出していません。

海外投資家に日本市場が敬遠されたり、日銀によるETF保有により企業のガバナンスに影響を与えたりといった副作用が懸念されるため、今後の動向には注視が必要です。

直近の“おうち時間”急増により株式投資を始めた投資初心者も多いことでしょう。株の値動きの一要因として、日銀の動きについてもぜひ知識を深めておきましょう。

 
文・野口 孝雄
上場企業(大手日用品メーカー)にて、事業戦略・財務に携わる。とくに財務部門所属時には、株主総会運営・決算開示を経験、経営分析の力をつける。個人としての投資経験に合わせ、「投資される」企業側からの視点を加味した、独自の切り口によるコラムを真骨頂としている

>>その他のおすすめ記事
滝川クリステルさんが1.5億円保有する「国債」ってどんな商品?
【連載#2】3億円失う人も…”億り人”で居続けることの大切さ
【連載#3】100万円を4,000万円にする「マーケットの渡り方」
【連載#4】忙しいビジネスマンでも株で“億り人”になれるワケ
総資産を1億にする資産運用法とは?

関連記事