iDeCoの運用商品は、大きく分けて定期預金や保険商品などの「元本確保型商品」と、リスクを取って利益を求める「投資信託」の2種類に分類できます。今回はiDeCoを投資信託で運用するメリットと、元本確保型商品との比較をご紹介します。
運用益が非課税というメリット
iDeCoは税制面で優遇されている制度ですが、「運用益が非課税で再投資できる」こともメリットの1つです。金融商品の運用益には通常20.315%の税金がかかりますが、iDeCoでは非課税になるのです。
長期で運用するほど効果が大きい
運用益が非課税になるメリットは、運用期間が長くなるほど大きくなります。例として、ある投資信託を毎月1万円ずつ買い、その投資信託を年率3%で運用した場合の非課税の効果を見てみましょう。
▽投資信託を積立購入した場合の運用益非課税の効果
|
1年後 |
5年後 |
10年後 |
20年後 |
35年後 |
運用益課税 |
12万1,556円 |
63万7,522円 |
135万4,971円 |
307万1,032円 |
653万9,412円 |
運用益非課税 |
12万1,954円 |
64万7,460円 |
139万8,030円 |
327万6,863円 |
737万3,313円 |
長期の積み立てを行うiDeCoでは、ある年に利益が出ると次の年はその利益にさらに利益が乗ってきます。資産が雪だるま式に増えていくわけです。これを複利効果といいます。上の表を見ると、最初はわずかな違いでしたが、20年後、35年後には大きな差になることがわかります。
元本確保型商品では複利効果は期待できない
元本確保型商品には元本割れのリスクはありませんが、利益を求める運用はできません。投資信託の場合と同様に、適用利率が0.02%の商品の運用益に課税される場合と非課税の場合を比べてみましょう。
▽元本確保商品を積立購入した場合の運用益非課税の効果
|
1年後 |
5年後 |
10年後 |
20年後 |
35年後 |
運用益課税 |
12万6円 |
60万223円 |
120万924円 |
240万3,761円 |
421万1,605円 |
運用益非課税 |
12万8円 |
60万280円 |
120万1,160円 |
240万4,720円 |
421万4,570円 |
元の運用益が少ないため、運用益が非課税になってもメリットが小さいことがわかります。
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資産配分はiDeCo口座と銀行口座で考える
投資信託では運用益が非課税になるメリットをより生かせますが、「それでも元本確保型商品も持っていたい」と考える人は多いでしょう。その場合はiDeCoだけにこだわらず、銀行預金なども含めて資産配分を考えましょう。
逆に考えれば、元本確保型商品は運用益が小さいので「運用益に課税されることのデメリットが少ない」ともいえます。よって、銀行口座では定期預金などの元本確保型商品を選び、iDeCoでは利益が期待できる投資信託などを選ぶといった具合に、それぞれの口座の特徴を生かして資産を配分することも大切です。
スイッチングで利益の確保を
投資信託を運用していると、利益をいつ確定すればいいか迷うこともあるでしょう。iDeCoでは、投資信託を元本確保型商品に「スイッチング」することで利益を確定できます。ここで重要なのは、あまり欲張らず、自分の目標とする金額に達したらスイッチングをしてしまうことです。
目標金額は、必要になる老後資金や現在の蓄え、退職金の見込み額などを考慮して、自分自身でしっかり設定しておきましょう。
それぞれの制度の特徴を活かして資産全体のバランスを取ろう
iDeCoの運用益が非課税になるメリットは、投資信託でより生かせることを説明しました。もちろん投資信託は必ず利益が出るものではないですし、iDeCoには他の税制優遇もあるため、元本確保型商品を運用してもメリットはあります。資産運用を考える際は、自分の投資スタイルを考慮して、iDeCoだけでなく他の金融商品も組み合わせて、資産全体のバランスを取るようにしましょう。
文・松岡 紀史
所属・ライツワードFP事務所代表
筑波大学大学院経営・政策科学研究科(現システム情報工学研究科)でファイナンスを学ぶ。元システムエンジニア。節約や貯金など地道な作業の大切さと、「投資だけ」「保険だけ」に偏ることのないバランスの取れた資産運用を広めるため、執筆・セミナー・個別相談などを行っている。ライツワードFP事務所代表
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