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2020.7.31

株式投資の「税金」完全ガイド 確定申告は必要?

(写真=krisana/stock.adobe.com)
(写真=krisana/stock.adobe.com)
株式投資の利益にかかる税金は難しいといわれます。しかし、要所さえ押さえればそれほど難しくはありません。また、ポイントを知っていれば節税もできます。今回は、株式投資にかかる税金について網羅的に解説します。

株式投資の「税金」の基本を押さえよう

株式投資で売買を行ったり配当を受け取ったりすると、そこには税金がかかります。税金の話をすると「えっ、難しそう……」と感じる人が少なくありません。しかし、実際の株式投資にかかる税金はそれほど難しくありません。なぜかというと、給料や不動産投資の所得と違い、原則として株式の利益の枠内で課税関係が完結するからです。

株式投資で得た利益にかかる税金は、「所得税」と「住民税」

株式投資で得た利益には税金が2つかかります。1つは所得税、もう1つは住民税です。いずれも後述する「総合課税」または「分離課税」で課税されます。なお、所得税は国に納める税金、住民税はお住まいの都道府県や市区町村に納める税金です。

課税の仕方には「総合課税方式」「分離課税方式」がある

課税の仕方には、総合課税方式と分離課税方式の2種類があります。

総合課税で課税するとき、所得税は5~45%の間で7段階に分けられた税率が所得額に応じて適用されます。所得が多ければ多いほど、高い税率で所得税を計算するのです。なお、総合課税で計算するときは、ほかの所得と合算したうえで税率を決めます。一方、住民税は一律10%の税率で計算します。

分離課税で課税するときは所得税と復興特別所得税は税率15.315%で、住民税は税率5%で一律に計算します。分離課税のときはほかの所得と合算しません。

株式の「売却益」か「配当」かで所得の種類が変わる

税金を計算するうえでは、株式で得た利益の種類も重要です。利益が売買によるものなのか(売却益)、配当によるものなのか(配当金、配当益)で、所得税法上、所得区分や税金の計算が変わるからです。両者の違いは下記の通りです。

・株式の売却益は「譲渡所得」→分離課税
株式の売却益は譲渡所得に該当し、後述する「分離課税」で課税します。

・株式の配当益は「配当所得」→総合課税または分離課税
株式の配当益は「配当所得」に該当し、「分離課税」「総合課税」のいずれかで課税します。なお、分離課税を選択すると株式の売却損との損益通算が可能になり、総合課税を選択すると配当控除が可能になります。損益通算も配当控除も節税策です。ただ、同時に選ぶことはできず、より有利なほうを投資家自身が選ぶことになります。

株式投資で100万円儲かったらいくら税金がかかるのか?

ではここで、株式投資で100万円儲かったケースについて考えてみましょう。この100万円がもし株式の「売却益」や「配当益」で「分離課税」を選ぶと、税金は次のようになります。
  • 所得税: 100万円×15.315%=15万3,150円
  • 住民税:100万円×5%=5万円
  • 合計:20万3,150円
対して、配当益について総合課税を選んだ場合、ほかの所得と合算されたうえで5~45%の税率が適用されます。住民税については10%の税率なので10万円の課税です。

もし仮に、課税所得が150万円であり、そのうち配当所得が100万円だとすると、配当控除10%が適用されるため、配当にかかる所得税は単純に〔100万円-(100万円×10%)〕×税率5%=4万5,000円になります。つまり配当益にかかる税金は、所得税4万5,000円+住民税10万円の合計14万5,000円ということです。

ただ、実際の総合課税の計算では、社会保険料控除や扶養控除、基礎控除を加味したうえでの税額計算となるため、一概にこの計算通りになるとはいえません。
 

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株式の売却益と配当益とで課税方式はこう変わる

以上が株式の利益にかかる税金の基本です。さらに、ここから申告するかしないかで扱いが変わっていきます。

一般口座は慣れている人向け、特定口座は初心者向け

株式投資は証券会社に口座を開いてから行うことになります。この口座には「一般口座」と「特定口座」の2種類があります。

一般口座は自分自身で年間の損失・利益を計算し、翌年2月16日~3月15日の間に確定申告を行う必要のある取引口座です。すべての所得計算や税金計算を自分で行わなくてはならないため、投資初心者向きとはいえません。一方、特定口座は証券会社で年間の損益を計算してくれるので、初心者に適しているといえます。

特定口座での「源泉徴収あり」「源泉徴収なし」の違い

特定口座の場合、「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」が選べます。

両者の一番の違いは「確定申告が必要かどうか」です。「源泉徴収あり」ならば、確定申告が不要になります。特定口座内で納税が完結するため、たくさん儲かっても翌年の住民税や保育料に影響することはありません。ただし、「源泉徴収あり」は利益が出るたびに税金が引かれた金額が手元に入るということなので、年間の利益が20万円以下だとムダな税金を払うことになります。

一方、「源泉徴収なし」を選ぶと、証券会社から送られてくる年間取引報告書をもとに確定申告をしなくてはなりません。また、利益によっては翌年の住民税や保育料が高くなることがあります。その反面、年間の利益が20万円以下なら確定申告をしなくてよく、余計な税金を払わなくてもいいというメリットがあります。

「申告不要」と書かれていても申告してもいい

「利益がたいして出ないなら『特定口座の源泉徴収なし』を選んだほうがトクなのかも」と思う人もいるかもしれません。「特定口座の源泉徴収あり」の「申告不要」はあくまでも「申告してもしなくてもいい」という意味に過ぎません。つまり、申告してはいけないのではなく、申告してもいいのです。

申告したほうがいいケースは、節税になるときです。次のようなとき、「特定口座の源泉徴収あり」で取引して確定申告をすると、節税になります。
  • 年間の利益が20万円以下であるため税金の還付が期待できるとき
  • 課税所得額が一定額以下であるため「所得税は総合課税で確定申告」すると還付が期待できるとき

売却益の課税方式は2択、配当益の課税方式は3択

以上をまとめると、株式の売却益・配当益それぞれで選択肢が次のように分かれることになります。

・売却益
「申告不要の分離課税」or「申告する分離課税」

・配当益
「申告不要の分離課税」or「申告する分離課税」or「申告する総合課税」

つまり、株式の売却益は分離課税方式以外の課税方式はありません。一方、配当益については「申告するかしないか」「総合課税か分離課税か」を選ぶことができるのです。

配当金を総合課税で申告すると税金が得する人とは

配当金には3つの選択肢があることをすでにお伝えしました。付け加えると、配当金は所得税と住民税とで「申告する・しない」「総合課税・分離課税のどちらで申告するか」などと、かなり選択肢が広いのです。その分、節税の余地があるわけですが、手間もかかります。

配当金の課税方式は所得税と住民税で別々にできる

2017年度の税制改正により、上場株式等の配当等と特定口座の株式売却益は所得税と住民税とで別々の課税方式を選べるようになりました。源泉徴収ありの特定口座で受け取った配当金については、所得税は総合課税方式で確定申告し、住民税では申告不要とすることができるわけです。

ただ、通常、所得税の確定申告を総合課税で行うと、自動的に住民税にも総合課税が適用されてしまい、特定口座の源泉徴収ありならば5%の税率で済んだところが10%で課税されることになってしまいます。節税目的の場合、所得税で総合課税の確定申告を行ったなら、住民税では「申告不要」の確定申告をあえて行う必要があるのです。

課税所得900万円以下の人は「所得税は総合課税で申告」「住民税は申告不要」がトク

株式の配当金に関しては、課税所得900万円以下の人は「所得税は総合課税」「住民税は申告不要」にすると節税できます。この背景には税率の差があります。

分離課税で適用される税率は所得税が15.315%、住民税が5%です。一方、総合課税で適用される税率は住民税が一律10%(配当控除率を加味すると7.2%)ですが、累進課税が適用される所得税の税率を見ると、次のようになります。
  • 課税所得額195万円以下……5%(配当控除率・復興特別所得税を加味すると0%)
  • 課税所得額195万円超330万円以下……10%(配当控除率・復興特別所得税を加味すると0%)
  • 課税所得額330万円超695万円以下……20%(配当控除率・復興特別所得税を加味すると10.21%)
  • 課税所得額695万円超900万円以下……23%(配当控除率・復興特別所得税を加味すると13.273%)
  • 課税所得額900万円超1,000万円以下……33%(配当控除率・復興特別所得税を加味すると23.483%)
比較すると、課税所得900万円までは総合課税の所得税(総合課税13.273%以下に対し、分離課税は15.315%)のほうが税率は低く、分離課税の住民税の税率(総合課税7.2%、分離課税5%)のほうが低いことがわかります。そのため、課税所得900万円以下の場合は「所得税は総合課税で申告」「住民税は申告不要」としたほうが節税になるのです。

※この方法を選択すると、株式の譲渡損失との損益通算や3年間の繰越控除による節税はできません(後述)

株式で売却損が出たら使える「損益通算」とは

株式投資では、売買をして損失が出ることがあります。一見もったいなく見えますが、この赤字を確定申告すれば配当益と損益通算できます。ただ、この損益通算をするには分離課税を選ぶことが必要です。

株式等の損益通算とは何か

上場株式や投資信託、特定公社債等の売却損失は、ほかの有価証券の売却益や配当金・収益分配金と相殺することができます。これを「株式等の損益通算」といいます。損益通算をすることで、株式等による利益全体の金額を減らせば課されるべき所得税・住民税の金額も下がるので、すでに源泉徴収された税金の還付を受けることができるのです。

ただ、配当金や収益分配金は分離課税の対象となるものだけが対象です。配当控除を選んだものとは損益通算できません。

不動産所得や事業所得とは違うことに注意

ここで「損益通算」と聞いて、事業所得や不動産所得の損益通算と同じく、ほかの給与所得や雑所得の黒字と株式の譲渡損を相殺できるのではないかと感じた人もいらっしゃるかもしれません。しかし、株式の譲渡損失はあくまでも同じ金融商品の譲渡益や配当益との相殺ができるに過ぎませんし、分離課税の対象となる譲渡益・配当益のみです。

「損益通算」で引き切れなければ「損失の3年間繰越控除」で節税可能

上場株式等の損失を活用して節税するのは損益通算だけではありません。その損失が発生した年の売却益と相殺しても残ってしまうなら、翌年以後3年間繰り越すことができます。つまり、翌年や翌々年に生じた売却益や配当益・分配益・公社債の利子等と相殺し、さらに節税することが可能になるのです。こちらも損益通算と同様、分離課税であることが条件になります。また、損失を繰り越す期間は確定申告書を提出しなくてはなりません。

確定申告の注意点

株式の売却や配当について確定申告するときはいくつか注意点があります。

「利益20万円以下は確定申告不要」の正確な意味

株式や投資信託の投資を行っている中でよく見る説明書きの1つに「利益20万円以下は確定申告不要」というのを目にします。これはどういう意味なのでしょうか。

1つの会社に勤務し、給与所得を受け取っているサラリーマンについては、ほかに不動産所得や譲渡所得、配当所得や雑所得があっても、給与所得以外の所得の合計額が20万円以下なら所得税法上、確定申告はしなくていいとされています。所得とは平たくいうと利益のことです。そのため、資産運用をしても、その譲渡所得と配当所得の年間合計額が20万円以下なら確定申告はしなくていいこととなっています。

ただ、本記事稿の最後のほうでもお伝えしますが、申告不要なのは所得税だけです。住民税は給与所得以外の所得額の年間合計額が20万円以下であっても確定申告はしないといけません。

分離課税の申告では配偶者控除や扶養控除で節税できない

これまで説明してきたように、株式の運用益を確定申告する際には、総合課税と分離課税に分かれます。分離課税で申告する場合、配偶者控除や扶養控除で節税することはできません。これらの所得控除はあくまでも総合課税での制度だからです。

3年間の繰越控除をするなら取引していなくても申告しよう

また、分離課税で株式の譲渡損失を3年間繰り越すならば、資産運用をしていない年も確定申告をしましょう。そうでないと損失を繰り越すことができません。

配当控除と売却損失の繰越控除の選択は同時にできない

ときどきある誤解が「配当控除と売却損失の繰越控除を同時に行えるはず」というものです。すでにお伝えしたように、上場株式の配当には「申告不要」「総合課税で確定申告する」「分離課税で確定申告する」の3つの方法があります。総合課税を選べば配当控除が、分離課税を選べば売却損失と売却益・配当金との損益通算や繰越控除ができるわけです。

ただ、この節税メリットを両方とることはできません。つまり、同じ年に生じた配当金の一部を総合課税にし、ほかを分離課税にするということは不可能なのです。確定申告するならば、配当金全部について総合課税か分離課税かのいずれかで申告することになります。

上場株式等の売却損益は未上場株式との売却損益と相殺できない

上場株式等の損益通算や繰越控除の対象となるのは、2016年1月1日以降、次の3つに限られます。
  • 上場株式等の売却利益・配当(分離課税)
  • 公募株式投資信託の売却利益・収益分配金(分離課税)
  • 特定公社債等の売却利益・利子等(分離課税)
未上場株式の売却益も上場株式と同じく、税率20.315%(所得税率と復興特別所得税率が15.315%、住民税率5%)の分離課税で課税されます。ですが、未上場株式の売却損益と上場株式の売却損益は相殺できません。さらに、未上場株式の損失と未上場株式の配当や公社債の利子等と相殺することもできません。

NISA(ニーサ)なら、株の売却益・配当金が非課税に

最近注目を集めている株式投資方法がNISA(少額投資非課税制度)です。通常、株式や投資信託に投資をすると売却益や配当益に分離課税が適用され20.315%の税率で所得税・住民税がかかります。しかし、NISAの非課税口座内では一定期間、その運用益には所得税も住民税もかかりません(配当金の受取方法が株式数比例配分方式となっている場合)。

NISAには3つの種類があります。年間の投資枠のもっとも大きい「一般NISA」とコツコツ長期投資に向いている「つみたてNISA」、そして未成年向けの非課税投資枠である「ジュニアNISA(未成年者少額投資非課税制度)」です。つみたてNISAでは指定された投資信託以外は投資を行うことができず、株式の売買は行えません。それぞれの詳細は次のようになります。

一般NISAとは

一般NISAとは2014年1月にスタートした、個人投資家向けの税制優遇制度です。毎年120万円の非課税の枠内で株式・投資信託といった金融商品を運用できます。この一般NISA口座内で生じた譲渡益や配当益・分配益は非課税です。最長5年間投資を行うことができますが、一般NISAそのものの投資可能期間は2023年までであり、2024年から新NISAへ移行、2028年までとされています。現行の一般NISAは2024年から開始される新NISAへ移行が可能で、課税のしくみも引き継がれる見込みとなっています。

つみたてNISAとは

一般NISAよりもより長期間、かつ少額投資をコツコツ行いたいなら、つみたてNISAのほうがふさわしいかもしれません。つみたてNISAは2018年1月からスタートしました。非課税対象となるのは一般NISAと異なり投資信託の譲渡益と分配益のみとなります。また、年間の非課税投資枠も小さく、毎年40万円が上限となりますが、最長20年の非課税投資期間があるので、全体で見ると最大800万円まで非課税で運用することができます。こちらの投資可能期間は一般NISAよりも長く2037年まで、さらに2020年の税制改正により5年の延長がなされ、2042年までとされています。投資のできる商品は指定されている投資信託だけとなることに注意しましょう。

ジュニアNISAとは

ジュニアNISAは0歳から19歳までの未成年者限定の非課税口座です。非課税対象となるのは一般NISAと同じく、株式と投資信託の譲渡益・配当益・分配益となります。非課税投資枠は毎年80万円、非課税期間は最長で5年間です。本人名義での口座開設が原則ですが、さすがに幼少の子どもに資産運用は難しいので、両親や祖父母といった二親等内の親族が本人の代わりに口座管理してよいこととされています。こちらの投資可能期間は一般NISAと同じく2023年までです。

NISAの注意点3つ

以上、非課税のメリットが大きいNISAですが、注意点が3つあります。

1つめは非課税であるため、損失が出ても損益通算はできないという点です。非課税になるというのは利益が出たときだけでなく損失が出たときも含みます。非課税口座内の年間の損益を相殺して赤字になったとしても、特定口座や一般口座で生じた運用益との繰越控除や損益通算はできません。

2つめは1人1口座しか開設できないという点です。複数の証券会社に口座をもっていても、NISA口座を開設できるのは1つだけです。また、すでに持っている一般口座や特定口座で保有している株式や投資信託を移管することはできません。非課税枠内で運用できるのはあくまでも新規で購入した金融商品のみとなります。

3つめは非課税枠の再利用や繰越ができないという点です。NISA口座内の株式や投資信託を売却してもその非課税枠の再利用はできません。また、未使用の非課税枠を翌年に繰り越すことも不可能です。

税金の仕組みを理解して節税に生かす

株式投資によって得た利益には、さまざまな節税対策が活用できます。取引する口座の種類、そして得られた損益に合わせ、確定申告をしっかり活用して、適切な節税を行いましょう。公的な制度であるNISAは節税とはなりませんが、そもそも運用益には課税がされない、という大きなメリットがあります。1人1口座の開設が可能ですので、上手に組み合わせて資産形成を進めていきましょう。
 

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