投資・資産運用
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2020.7.28

iDeCoを始めたいあなたのために。口座の選び方と運用方法を徹底解説

(写真=photocrew/stock.adobe.com)
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20代など、キャリアを積み始めた世代にとっては、退職後の老後生活はまだ先の出来事かもしれません。しかし、自分たちが定年を迎えるころには「年金や社会保障は機能しているのか」「生活資金が枯渇していないか」といったリスクも懸念される時代です。若い時期からの資産形成が求められています。そこで活用したい制度がiDeCoです。本記事ではiDeCoを始めるために必要な口座の選び方と、投資初心者としてはじめに知っておきたい運用方法の基本を解説します。

若い世代からの資産形成にもぴったりなiDeCo

キャリアを積み始めた世代にとっては、退職後の老後生活はまだ先の出来事かもしれません。「これから一生懸命仕事に取り組み豊かな老後を送りたい」と、漠然とした思いを抱いている人もいるでしょう。一方で自分たちが定年を迎えるころには「年金をはじめとする社会保障は機能しているのか」「長寿によって生活資金が枯渇していないか」といったリスクも懸念されます。

そうした不安をあおるかのように、2019年6月には金融庁が老後生活には1,300万~2,000万円の生活資金が不足するとの見通しを明らかにして大きな話題となりました。学生時代に借りた奨学金の返済や、マイホーム取得に向けた頭金すら準備できていないのに老後資金の準備なんて……と、後回しになっている人も多いのではないでしょうか。

しかし20~30代の働き手であれば、老後までに時間的な猶予があります。この時間を上手に活用し、長期運用によって資産を形成していけば豊かな老後生活を送ることは夢ではありません。その夢を実現可能なものとするため、資産形成をするうえで活用していきたい制度にiDeCoがあります。

iDeCoとは?

iDeCoを理解するために、まずは日本の年金制度についてポイントを押さえておくことが必要です。日本の年金は、しばしば3階建てと表現されます。1階部分が国民年金、2階部分は厚生年金といったいわゆる公的年金です。先に説明した2,000万円不足問題の焦点は、1階と2階の公的年金だけでは老後資金をまかなうことが難しいという内容でした。

そこで公的年金を補足するために活用したいのが、3階部分の年金です。具体的には企業年金やiDeCoが該当します。つまり、iDeCoはベースとなる公的年金に上積みされる年金の部分というわけです。所得に応じて、年金保険料として給与から天引きされる公的年金と異なるのは、iDeCoへの加入そのものは任意という点でしょう。

企業型確定拠出年金に対する「個人型」がiDeCo。企業型と併用できる場合も

利用を希望する場合は、自ら申し込み、毎月一定の資金を拠出することが必要です。運用先も自分で選定し10年以上払い込んだ場合、60歳以降に受け取ることになります。もし勤め先の企業型確定拠出年金に加入している場合、企業型年金規約でiDeCoにも加入できると定められていれば加入可能です。確定拠出年金には個人型となるiDeCoのほかに「企業型」もあります。

両者の間で決定的に異なるのは、「運用する資産の掛け金を誰が負担するか」という点です。個人型は文字通りiDeCoに加入する本人が負担しますが、企業型では勤務先の会社が掛け金を負担します。さらに企業型では、運用するための金融機関をあらかじめ指定しており当該金融機関の運用商品のラインアップから掛け金の配分先を決定することになります。

個人で積立て運用する、自己責任の年金制度

iDeCoの場合は、まずは金融機関を選択するところからスタートしなければなりません。そのうえで、選択した金融機関が取り扱う商品から掛け金を配分していきます。2001年10月に確定拠出年金制度がスタートするまでは、会社が厚生年金基金を通じて安定した年金の運用と給付の役割を果たしてきました。

しかしバブル崩壊後、景気後退により運用利回りが低迷し解散に追い込まれる厚生年金基金も続出。そこで新たに導入された確定拠出年金制度が、その受け皿となったというわけです。これまではまじめに働いていれば会社が年金の運用まで面倒を見てくれた時代は終焉を迎え、十分な年金を受給できるかどうかは、それぞれの従業員の自己責任となっています。

こうした面からも自らの将来を安定化させるために、iDeCoの制度をきちんと理解しておくことが重要です。

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iDeCo口座、金融機関はどう選ぶ?

企業型確定拠出年金は、すでに勤め先が指定の金融機関と契約を結んでいるため、自分で金融機関を選択する必要はありません。また転職して新たな職場でも企業型確定拠出年金が整備されている場合は、その金融機関へこれまで積み立てた拠出金を移行することになります。注意が必要なのは、転職先に企業型確定拠出年金の制度がない場合です。この場合はiDeCoに積み立てた拠出金を移行します。

また転職を機に独立して自営業者となる場合にも、iDeCoへの移行が必要です。iDeCoは1人につき1つの金融機関でしか口座開設ができないため、慎重に選択する必要があります。もちろん、iDeCoに移行する前に企業型確定拠出年金で利用していた金融機関でiDeCoを継続することも可能です。

手数料と商品の取扱数に注目

iDeCoを金融機関で開設したり新たな金融機関に移行したりする際は、口座管理料や運用する投資信託の信託報酬といった手数料の面と、運用する商品の取り扱い数などを比較しながら絞り込む必要があります。手数料を見ると、加入時にのみかかる料金は2,829円と各金融機関で統一の価格です。特に注意したいのは運用期間中にかかる費用で、これは毎月のコストとして計上されます。

年金を受給するまで数十年にわたり積み立てると大きな差が発生するため、注意が必要です。各金融機関ともiDeCoで「積み立てを実施する場合」「積み立てを実施しない場合」でかかる費用が異なってきます。掛け金の積み立てを実施する場合の手数料は、171~629円です。また掛け金の積み立てを実施しない場合の手数料は、66~524円に設定されています。

掛け金の積み立てを実施の有無に関係なく、最安値の手数料を設定している金融機関は以下の通りです。
  • イオン銀行
  • 大和証券
  • 松井証券
  • マネックス証券
  • 三井住友銀行(みらいプロジェクト)
  • 楽天証券
  • auアセットマネジメント
  • auカブコム証券
  • SBI証券
  • みずほ銀行(資産50万円以上)
  • 野村證券(掛け金1万円以上あるいは残高100万円以上)
  • 第一生命保険(資産150万円以上)
  • SOMPOアセットマネジメント(資産200万円以上)など
このうち取り扱う投資信託の本数が多いのは以下のようになっています。
 
金融機関名 2020年3月時点での取り扱い本数
SBI証券 38本
楽天証券 32本
auカブコム証券 27本
野村證券 27本
マネックス証券 25本
イオン銀行 24本
第一生命保険 24本

手数料や取り扱う投資信託の数だけでなく、給与の振り込み銀行や証券口座を開設している場合は、同じ金融機関でiDeCoを管理することも方法の一つです。手数料の安さや商品のラインアップはネット系の証券会社が強みを見せています。このほか地方銀行などの金融機関でもiDeCoの取り扱いを実施しています。

しかし手数料は相対的に割高となっているため、「地元で地域金融機関との付き合いがある」といった事情を除けば、手数料が安く商品ラインアップが充実している金融機関を選択したいところです。

iDeCoでどのように運用する?

実際にiDeCoというプラットフォームを活用して「どのように投資を実践していくのか」というポイントに移っていきましょう。iDeCoで運用できる金融商品は投資信託のみです。したがって、個別企業の株式や債券を購入することはできません。また投資経験のない人にとっては、投資信託の仕組みが複雑に見えがちです。

iDeCoで運用できるのは投資信託のみ

投資信託は、簡単にいえば「運用会社が投資家から集めた資金をまとめてプロが運用する」という仕組み。各金融機関で取り扱う投資信託の本数や商品は異なりますが、その主な種類は以下の通りです。
  • 国内株式
  • 国内債券
  • 外国株式
  • 新興国株式
  • 先進国債券
  • 新興国債券
  • 国内不動産
  • 海外不動産
  • コモディティ
  • 複合資産
  • 預金 など
このうち複合資産は、国内外の株式や債券、不動産などを混ぜ合わせた投資信託での組み合わせ方や、その割合は各投資信託で異なります。iDeCoで取り扱われるのは投資信託のみと解説しましたが、元本保証型の預金タイプや保険タイプの商品もあります。これは銀行などの定期預金と同様に特定の商品で運用するわけではなく、文字通り拠出した掛け金を預けておくだけです。

例えばSBI証券で取り扱われている投資信託の数は、約2,698本となっています。なかには「本数が多すぎて何を選択してよいのか分からないため、投資に踏み切れない」という声も少なくありません。しかしiDeCoで取り扱われている投資信託は20~30本程度に絞り込まれているため、選択に苦労することは少ないでしょう。

では実際にどのようにして掛け金を運用していくのでしょうか。2020年2月中旬~3月中旬の世界の株式市場の大暴落で、投資に対し慎重になっている人もいるかもしれません。しかし20~30代の働き手であれば定年退職はまだ30数年先の出来事のため、ひとときのショックを乗り越えられるだけの時間的猶予は残されています。

一定額の掛け金で、分散して投資する

iDeCoでは、あらかじめ掛け金を配分する投資信託を設定することが必要です。例えば国内株式、国内債券、外国株式、外国債券、複合資産のそれぞれの投資信託に20%と設定します。この割合はいつでも変更することが可能で、購入する投資信託を選択すれば毎月一定額ずつ分けて購入され、残高が積み上がっていきます。

毎回一定額購入すると、投資信託の価額が高いときは少ない口数しか購入できません。しかし価格が低いときにはより多くの口数を購入できるため、買い付ける単価が平準化されます。これが「ドル・コスト平均法」です。ドル・コスト平均法を活用することで、一度にまとめて投資金額を導入し高値をつかまされるリスクを軽減できます。2020年のコロナショックのような相場の急落では、一時的には保有する投資信託に評価損が発生する可能性も否めません。

しかしコツコツと積み立てていれば、相場の回復局面においては含み益が発生することも期待できます。iDeCoで運用するのはあくまで老後資金のため、相場の変化に一喜一憂するのではなく、長期的なスタンスでしっかりと腰を据えることが求められるのです。そのうえで、それぞれの商品のリスクと向き合わなければなりません。

株式>債券、海外>国内。投資におけるリスクの違いを知ろう

一般的に株式は債券よりもリスクが高いとされています。また国内向け投資より、海外向け投資は価格変動リスクだけでなく、為替変動リスクやカントリーリスクもあるため値動きが大きくなる傾向です。リスクが高ければその分リターンも期待できるため、そのバランスを保つことがポイントといるでしょう。したがって1つの投資信託に掛け金をすべて配分するよりは、バランスよく配分するほうがリスクの軽減にもつながります。

老後までまだまだ十分に時間のあるiDeCo運用者であれば、海外株式への配分を厚くするなどしてリスクを許容しながらリターンを狙うことも一手です。逆に老後が近づいてくれば、より一層リスクの低い国内債券などに切り替えることで、運用した資産が大きく目減りする可能性を抑えられるでしょう。20~30種類の投資信託からでも選択が困難と感じる場合には、複合型の投資信託に委ねることも賢明な選択です。

しかし注意が必要なのが、複合型と一口にいっても「株式の割合が高いもの」「債券の割合が高いもの」「各資産に均等に配分しているもの」など多岐にわたっているという点です。自らのライフステージがどの段階にあるかによってリスクの許容度を見極め、どの複合型の投資信託が適切か判断しなければなりません。「運用は自己責任」「運用する投資信託も自分で選択が必要」というiDeCoのリスクを知ったことで利用をためらってしまう人は、節税メリットにも目を向けてみましょう。

iDeCoで知っておきたい3つのメリット

iDeCoでは、「積立時」「運用中」「受取時」の3段階で節税のメリットを享受できます。例えばビジネスパーソンで、以下のようなステータスの人がiDeCoに加入した場合でシミュレーションをしてみましょう。
 
項目 内容
年収 700万円
年齢 30歳
家族構成 独身(一人暮らし)
企業年金 なし

積立時のメリット

この人が例えばiDeCoに毎月2万3,000円の掛け金を拠出する場合、年間で所得税と住民税合わせて約8万3,900円の節税メリットを受けることができます。このほか、簡単にそれぞれのケースをシミュレーションすることが可能なWebサイトがありますので、興味のある方は確認してみましょう。iDeCoは職業によって毎月の払い込みできる上限額が、1万2,000~6万8,000円と異なります。

毎月掛け金は全額所得から控除されるため、所得税と住民税を節税することが可能です。また通常は、金融商品を運用中に配当金を受け取ったり売却益が発生したりした場合は、20.315%の税金(復興所得税を含む)が差し引かれます。しかしiDeCoの場合、運用益には税金が課されません。

運用時のメリット

上記と同じ条件でiDeCoの運用利率を3%として計算すると、60歳までの30年間で運用益が約512万円積み上がります。通常の投資をしていた場合、512万円×20.315%として計算すれば約104万円を納税することが必要です。しかしiDeCoでは運用益が非課税となるため、このメリットを最大限に享受することができます。

受取時のメリット

最後に運用を終えて受け取る際には、「一時金」「年金」「年金と一時金」の3種類から受取方法を選択することが可能です。一時金として受け取る場合、例えばiDeCoの加入年数によって退職所得控除額は以下のようになります。
 
勤続年数 退職所得控除額
20年 800万円
・40万円×20年
30年 1,500万円
・800万円+70万円×(30年-20年)
40年 2,200万円
・800万円+70万円×(40年-20年)

運用して積み立てた資金と会社からの退職金の合計が、それぞれの加入年数の退職所得控除を下回れば、当然ながら非課税です。年金として受け取る場合は、65歳未満は年間60万円以下、65歳以上では年間110万円以下の場合に非課税が適用されます(2020年時点)。運用には自己責任が求められるため、特に投資経験のない初心者には心理的なプレッシャーはかかるかもしれません。しかしその分、iDeCoには十分な節税効果も期待できます。

注意も必要なiDeCo

税制優遇というメリットを知り、iDeCoの活用に一歩前進したかもしれませんが、注意点もあわせて押さえておきましょう。

注意点1:原則60歳まで引き出しはできない

まずはiDeCoで積み立てた資産は、原則60歳まで引き出すことができません。所得控除が受けられるからといって、「毎月無理に掛け金を拠出して生活が苦しくなる」といったような事態に陥らないようにしましょう。

注意点2:運用はすべて自己責任。損失のリスクもある

また運用はすべて自己責任で実施することが原則です。そのため、市場の状況や人生のライフステージで許容できるリスクを適切に判断したうえで運用益を上げることができれば、豊かな老後を送るのに十分な資金を準備することができるでしょう。一方、損失リスクをどうしても許容できない場合は、定期預金型や保険型など、元本保証型の投資信託に掛け金をすべて預けることでリスクヘッジできます。

しかし20年、30年と年数の経過に伴いインフレが進行していけば、資金の価値自体は下がってしまうことも忘れてはいけません。例えば現在100万円で3ヵ月充実した生活が送れたとしても、30年後に大幅なインフレとなっていれば、同じ100万円でも未来の3ヵ月においては今と同じような生活ができる保障はどこにもないのです。また運用によっては、利益が出るどころか損失が発生する可能性もあります。

インフレリスクを軽減するためにも、ドル・コスト平均法でコツコツと資産を積み上げて、ライフステージごとの許容リスクを考慮することが必要です。投資する商品の配分をリスクに応じて調整していけば、仮に今回のようなコロナショックが定年直前に訪れたとしても、その傷を最小限にとどめることができるでしょう。

注意点3:受け取りの際には退職所得控除額に注意

晴れて60歳を迎えてこれまで運用したiDeCoを引き出す際には、節税の項目でも少し述べたように、受け取り方も検討しておくことが必要です。「退職金のように一時金として受け取る」「年金として毎月受け取る」「2つを混合させる」といった3つのパターンがあります。どの方法で受け取るのがいいかは人それぞれです。

例えば会社からの退職金がそれほど支給されず、iDeCoの資産残高が退職所得控除額の枠内に収まるのであれば一時金として受け取るのがよいでしょう。

しかし会社からまとまった退職金が受給できたり、iDeCoの運用が順調で資産を拡大したりしている場合は、退職所得控除額を大幅に上回る可能性があるため、年金としての受け取りや、一時金と年金の組み合わせも視野に入ります。税負担の面以外に、本人の資金需要も勘案することが重要です。

例えば退職を機に事業をするためまとまった資金が必要であれば、一時金として受け取り事業の投資資金に活用できます。定年退職時に資金繰りに余裕があれば、焦らず時間をかけて年金として受給することも方法の1つです。

今後、税制などの制度改正が実施される可能性もあるため、自分にとってベストな受取方法が選択できるよう常にその変化にアンテナを張っておきましょう。

自己責任の先に豊かな老後生活

これまで老後の生活は会社や国が面倒を見てくれると考えていた人も、より豊かな老後生活を送るためには視野を広げていくことが大切です。公的年金だけでは老後資金が足りなくなることが明白となったことで、若いうちからしっかりと計画を立て自己責任で資産を形成していく風潮が高まってきています。

iDeCoは一見すると利用するのが難しそうに感じるかもしれません。しかし実際には、取り扱う投資信託の数は厳選されていたり節税効果も大きいため、老後資金を運用するための選択肢として活用を検討しておきたいところです。

またiDeCoのプラットフォームを通じて、投資について勉強する機会を得ることも期待できます。さまざまな要因からマーケットが不安定なので、投資に対してためらってしまうかもしれませんが、20~30代にとっての投資における最大の武器は「時間」だということも覚えておきましょう。

老後を迎えるまでにまだ30~40年という時間があります。この時間を最大限味方につけてiDeCoを活用すれば、豊かな老後生活という未来だけでなく現在の税負担の軽減などにも効果が期待できるでしょう。
 

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