投資・資産運用
-
2020.6.13

なぜ証券口座を複数持つと便利なのか。そのメリットとデメリットを大研究

同じ証券会社では1つの証券口座しか開設できませんが、違う証券会社でも口座開設できますので、証券口座は複数持つことが可能です。実際にいくつかの証券会社で口座をお持ちの方もいらっしゃると思いますが、今回は証券口座を複数持つことによってどのような利便性やメリットがあるのか、また、デメリットや1つの証券口座だけを持っている場合との違いなどについてもお伝えします。

なぜ証券口座を複数持つと便利なのか

冒頭でもお伝えしましたが、証券口座は複数の証券会社で開設することが可能です。ただし、「NISA口座」は1人1口座となっていますので、複数の証券口座を持っている場合にはどこの証券会社の口座でNISA口座を開設するかを決める必要があります。

複数持つことによって便利になるのか、逆に管理が面倒になるのではないかなど、様々な疑問があると思いますが、後述するようにメリットもあればデメリットもあります。また、1つの証券会社で口座開設をした場合にも「一般口座」と「特定口座」を活用することができますので、まずは一般口座と特定口座の違いについてお伝えします。

証券口座における「一般口座」とは

証券口座の開設の申込をすると、必ず開設されるのがこの一般口座です。この口座内で株式・投資信託・債券などの金融商品の取引を行った場合には、商品ごとの譲渡損益はもちろんのこと、1年間の譲渡損益も自身で計算をして、翌年に確定申告を行う必要があります。譲渡益が出た場合には所得税・住民税を納め、譲渡損が出た場合には損益通算や繰越控除の手続きを行うなど、資産・損益の管理から申告の手続きを自身で行うことになりますので、一般口座を活用する場合には投資や税金などの知識や経験が必要となる場合があります。

証券口座における「特定口座」とは

一方で特定口座は証券口座開設時に、開設をするかしないかを選択できる口座となります。特定口座には「簡易申告口座」と「源泉徴収口座」の2種類があり、どちらの口座を開設するか選択します。一般口座で取引を行った場合には、前述の通り損益の管理や確定申告の手続きを自身で行う必要があります。対して特定口座は、個人の投資家の資産管理や申告・納税手続きなどを簡素化するために創設された制度となります。なおこの2つの口座は、年の一番初めの取引を行う前であれば、年ごとにどちらかを選択できます。

特定口座の「簡易申告口座(源泉徴収なし)」とは

この口座で金融商品を売却することによって生じた損益については、一般口座で売却した他の金融商品の所得と区分して計算されます。この計算は証券会社が行ってくれるため、一般口座のように取引ごとの損益の管理をする必要がありません。さらに1年間の取引は「特定口座年間取引報告書」にまとめられて毎年交付されますので、年間の損益計算も必要ありません。この報告書を提出することによって確定申告が行えますので、申告時の手間も大幅に軽減できます。

特定口座の「源泉徴収口座(源泉徴収あり)」とは

この口座内で金融商品を売却した際、利益が出た場合には所得税(復興特別所得税を含む)・住民税合わせて20.315%が自動的に源泉徴収され、残りの額が利益として口座に残ります。反対に損失が出た場合には、それまでに徴収された税金の還付が口座内で行われます。このように譲渡益と譲渡損との通算が「売却取引の都度」行われるのが源泉徴収口座となります。簡易申告口座と同様に1年間の取引内容は「特定口座年間取引報告書」にまとめられますが、年間の収益がプラスの場合には取引ごとに源泉徴収が行われ税金を納めていますので、原則確定申告が不要となります。

このように1つの証券口座を開設すると、一般口座と特定口座の2つの口座を持つことになります。複数の証券口座を持つということは、この2つの口座×口座開設数の口座を管理していくということです。次にこの点も踏まえて、メリットやデメリットについてお伝えします。
 

こちらもおすすめ
銀行口座に手数料が掛かるかも?「お金の置き場」はどこがいいのか
IPO投資とは?メリットとデメリット、おすすめの証券会社を大解説!

複数の証券口座を持つことのメリット

メリットとしては大きく次の5つが挙げられますが、複数の口座の活用によってそれぞれの証券会社の特徴を「良いとこ取り」ができます。1つの証券会社では得られないサービスや情報なども入手できます。

メリット1:様々な商品を購入できる

購入できる金融商品の種類や数は証券会社ごとに異なります。例えば国内株式1つを見ても現物・信用取引や、証券取引所を経由しないで時間外に売買できる「PTS取引」、IPO・立会外分売・ETF・ETN・REITなどはそもそも取り扱いがあるのか、取り扱っている場合にはその商品数なども証券会社によって変わってきます。

他にも投資信託や債券をはじめ、外国株式・海外ETF・先物取引・金・銀・プラチナ・CFDなど、様々な金融商品がありますので、どの商品に投資をしたいのか、自身が投資したい商品は取り扱っているのかを検討・確認した上で口座開設をする証券会社を複数選ぶことができます。

メリット2:手数料の比較ができる

手数料プランも証券会社ごとに異なります。例えば国内株式であれば「1注文の約定金額」に対して手数料がかかるプランや、「1日の約定金額の合計額」に対して手数料がかかるなど、取引の回数や金額によってプランを選択できます。

この約定金額別の手数料は証券会社ごとに差があるので、自身が「どの金融商品に投資するのか」「購入金額はいくらか」「取引回数は多いのか」など、購入する金融商品の種類・購入額・購入頻度に合わせて、できるだけ有利な手数料を取り扱っている証券会社で取引を行うことができます。

メリット3:複数のツール、システムやサービスの利用が可能

証券会社は独自の運用サポートツールや分析ツールを提供しています。無料で利用できるものや条件を満たせば活用できるものなどさまざまです。これらを証券会社ごとに比較・検討をして、自身に合ったツールで情報収集が行えます。

また、メルマガやオンラインセミナー、決算情報や投資レポートなど、私たち一般投資家では収集できない量の情報を得ることもできます。証券会社によって情報収集の方法や情報量が異なりますので、複数の会社の情報を得るほうが有益でしょう。

メリット4:万が一のトラブル時にも対応可能

頻繁に起こることではありませんが、1つの証券会社だけで口座開設をしていた場合、例えばその会社のシステムがダウンした場合には取引が行えなくなってしまう可能性もあります。投資の機会や利益を遺失することになるかもしれませんので、複数の口座を持っていればこのようなリスクを回避することも可能となります。

メリット5:IPOへの複数申込も可能に

IPO(新規株式公開)は、例えば他の取引所に上場していない会社が、東京証券取引所に初めて上場することを指します。この新規に公開される会社の株式は、主幹事・副幹事・幹事となる複数の証券会社ごとに割り当てられる株数が異なります。この幹事となった証券会社の口座を持っていれば新規公開株式を購入できます。

また、主幹事の証券会社には株数が多く割り当てられますので、その証券会社の口座を持っていれば当選確率は高くなります。主幹事以外の証券会社にも株数が割り当てられますので、購入したい新規公開株式がある場合には、複数の証券会社から申し込むことで、当選確率を上げられます。

この新規公開株式の取扱数が証券会社によって異なります。できるだけ取扱数が多い証券会社を複数選ぶほか、申込時に購入金額を事前入金しておく必要はあるのか、当選したら必ず購入しなければならないのか、当選後に購入の取消に対するペナルティがあるか、などのルールも証券会社によって異なります。これらの点を事前に確認しておきましょう。

証券口座を複数持つことのデメリット

このようなメリットがある半面、複数の証券口座を持つことによるデメリットや注意点もありますが、自身で気をつけていれば問題ない項目も含まれていますので、1つずつ確認していきましょう。

デメリット1:何もしないと税金を多く払ってしまう可能性が

例えば2つの証券口座を持っていて、それぞれ特定口座の源泉徴収口座(源泉徴収あり)で1年間取引をしたケースでお伝えします。

仮にA証券では200万円の利益、B証券では100万円の損失が出たとします。トータルで100万円の利益となり、もし1つの口座で取引をした場合には20.315万円が源泉徴収されますが、2つの口座で取引した場合、A証券では40.63万円の源泉徴収、B証券では源泉徴収無しとなります。

1つの口座で取引をした場合には、100万円-20.315万円=79.685万円が手元に残りますが、2つの口座で取引をした場合には、200万円-100万円-40.63万円=59.37万円しか手元に残りません。このように、複数の源泉徴収口座(源泉徴収あり)で取引をした場合には、それぞれの口座で源泉徴収が行われ、他の口座の損益は一切考慮されないことになります。この結果、何もしないと1年間のトータルの利益に対して多く税金を払ってしまうことになります。

デメリット2:損益通算には確定申告が必要に

このようなデメリットを回避するためには、複数の証券口座の利益と損失について「損益通算」を行う必要があります。前述の例でいうと、1年間のトータルの利益は200万円ではなく100万円なので、多く支払った20.315万円を還付してもらうことになります。この手続きは確定申告によって行いますので、1年間で利益が出た口座と損失が出た口座の両方がある場合には、確定申告を行う手間が生じます。1つの口座の場合には証券会社が口座内で行ってくれる損益通算を、確定申告によって自身で行うことになります。さらに後述する「譲渡損失の繰越控除」を行う場合にも確定申告が必要となります。

デメリット3:資産の管理、把握は必須

このように複数の証券口座で取引をした場合には、それぞれの口座の損益について管理・把握をしておくことが必要です。例えば複数の源泉徴収口座(源泉徴収あり)すべてで利益が出た場合には、基本的に何も行う必要はありませんが、複数の証券口座の一般口座・特定口座を含めたすべての口座のうち、どれか1つの口座に損失が出た場合には損益通算をしないと損をしてしまうことになります。

また、1つの証券口座の場合には、同じサイトですべての保有商品を確認できますが、複数の証券口座を持った場合には証券会社ごとのサイトで確認する必要があります。「現在トータルでいくらの損益があるのか」といったことも1つの証券口座と比較して把握しにくくなりますので、年間の収益の把握はもちろんのこと、日頃から定期的に確認作業を行うなどの資産管理は必須となります。

デメリット4:ID、パスワード管理に手間がかかる場合も

こちらは注意していれば問題ありませんが、IDやパスワードを忘れた場合には再発行などの手間がかかります。その間は取引ができなくなってしまいますので、これらの管理は厳重に行う必要があります。また、複数の証券口座を持つ場合にはパスワードを定期的に変更する他、同じパスワードを使用しないなど、セキュリティ面も考慮する必要があります。

デメリット5:証券会社からのお知らせは確認が必要

証券会社からの案内など、重要事項のお知らせは閲覧が必須の証券会社もあります。すべての事項について閲覧済みにならないと取引ができない証券会社もありますので、証券口座を複数持った場合にはそれぞれのサイトに定期的にログインを行い確認する必要があります。久しぶりにログインしたら重要事項の確認に思いのほか時間がかかった……というケースも考えられます。

以上のようなメリット・デメリットが挙げられますので、メリットとデメリットのどちらが大きいかの判断基準にしてみてください。

証券口座を複数持った時の確定申告の方法

複数の証券口座を持った時に確定申告を行うケースは主に次の場合が考えられます。
  1. 一般口座のみ
  2. 一般口座+簡易申告口座(源泉徴収なし)
  3. 一般口座+源泉徴収口座(源泉徴収あり)
  4. 一般口座+簡易申告口座(源泉徴収なし)+源泉徴収口座(源泉徴収あり)
  5. 簡易申告口座(源泉徴収なし)のみ
  6. 簡易申告口座(源泉徴収なし)+源泉徴収口座(源泉徴収あり)
  7. 源泉徴収口座(源泉徴収あり)のみで1つ以上の口座に損失が出た場合
中にはここまで複雑に口座開設をするケースは少ない組み合わせもありますが、1つでも一般口座または簡易申告口座(源泉徴収なし)を持っていて、その口座内で金融商品を売却した場合には確定申告が必要となります。また前述の通り、源泉徴収口座(源泉徴収あり)のみの場合でも、複数の口座間で「損益通算」をする場合には確定申告を行う必要があります。

さらに、一般口座と特定口座では確定申告の際に提出する書類が異なりますので、ここではそれぞれの確定申告の方法について概要をお伝えします。

1.一般口座での確定申告


・(1)「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」の作成
一般口座で売却した金融商品について個別に計算等を行い、次の項目を記載します。
  1. 譲渡年月日(償還日)
  2. 譲渡した投資信託の銘柄
  3. 数量(口数)
  4. 譲渡先(金融商品取引業者等)の所在地・名称等
  5. 譲渡による収入金額
  6. 取得費(取得価額)
  7. 譲渡のための委託手数料
  8. 取得年月日
一般口座で購入した金融商品については、商品ごとに、以上のような情報を売却時に把握しておく必要があります。さらに同一銘柄の株式等を複数回購入した場合には、すでに保有している株式などの取得金額と新たに購入した株式などの取得金額を、そのつど加重平均していく「総平均法に準ずる方法」で計算する必要があります。そのため、取得価額の計算方法が複雑になる場合があります。このような計算を売却した商品ごとに行い合計し、1年間の「譲渡収入」「譲渡所得」が決まります。商品ごと・証券会社ごとの損益通算は、この明細書を作成することによって行われます。

・(2)給与等、他の収入・所得額の記載
確定申告を行う場合には、給与などの他の収入についても申告書に記載する必要があります。ただし、給与などの収入金額が年末調整を受けたものだけである場合には「給与所得の源泉徴収票」の内容を転記すればよいので、詳細な計算の必要はありません。

・(3)「所得から差し引かれる金額」の記載
基礎控除や社会保険料控除・生命保険料控除など、所得から差し引くことができる金額を記載します。こちらも給与所得のみで年末調整を受けている場合には、その内容を転記することができます。

・(4)譲渡収入、譲渡所得の記載
譲渡所得は給与所得等の他の所得(総合課税)と分けて課税される「分離課税」となっていますので、「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」で計算した譲渡収入と譲渡所得を別の表に記載します。

・(5)税金の計算
給与所得等の総合課税と譲渡所得の分離課税について、それぞれ別々に税額を計算します。2つの税額を合計した後1.021を掛けた金額が「復興特別所得税」を含めた所得税の総額となります。その金額から給与所得等ですでに源泉徴収をされている金額を差し引いて「申告納税額」が決定します。

2.特定口座での確定申告

基本的な流れは一般口座の場合と同様ですが、(1)「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」の作成の手間が大幅に軽減されます。売却した金融商品ごとに収入金額や取得費等を計算する必要がなく、証券会社ごとに作成された「特定口座年間取引報告書」の内容を転記すれば明細書の作成が行えます。

このように確定申告を行うことによって、複数の証券会社の口座間の損益通算を行うことができます。

さらに1年間の全体の譲渡所得に損失が出た場合には、上場株式の配当金や投資信託の分配金などの利子所得・配当所得(配当所得は申告分離課税の選択が必要)と損益通算を行うこともできます。また、この損益通算を行ってもまだ控除しきれない損失がある場合には、翌年以降3年間にわたってその損失を繰り越すことができ、翌年以降に利益が出た場合にはその額から繰越額を控除できます。この特例を「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」といいます。

この特例を活用する場合にも次のように確定申告の手続きが必要となります。

・(1)上場株式等に係る譲渡損失と上場株式等に係る配当所得等との損益通算
(1)-1.この損益通算の規定の適用を受けようとする年分の確定申告書に、この規定の適用を受けようとする旨を記載します。

(1)-2.「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」および「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」を添付して確定申告書を提出します。

・(2)上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除
(2)-1.上場株式等に係る譲渡損失の金額が生じた年分の所得税について「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」および「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」を添付して確定申告書を提出します。

(2)-2.その年以降連続して「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」を添付して確定申告書を提出します。上場株式等の譲渡がなかった年も譲渡損を翌年へ繰り越すための申告が必要です。

(2)-3.この繰越控除を受けようとする年分の所得税について「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」および一般株式等に係る譲渡所得等の金額または上場株式等に係る譲渡所得等の金額がある場合には「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」を添付して確定申告書を提出します。

このように一般口座や簡易申告口座(源泉徴収なし)では、確定申告をすることで複数の証券口座の損益を通算します。源泉徴収口座(源泉徴収あり)のみを開設している場合にも、1つ以上の口座に損失が出た場合には確定申告を行うことで、源泉徴収された税金の一部の還付を受けられます。さらに証券口座全体の損益がマイナスとなった場合には、確定申告によって損失を繰り越すことも可能です。

口座を複数持つかどうかは、自分の運用スタンス次第

証券口座を複数持つことで様々なメリットやデメリットが考えられます。管理が大変、確定申告の手間が多いなど、1つの証券口座を持っている場合と比較してマイナスの面もありますが、積極的な運用を考えるとメリットもたくさんあるので、結局のところ自身の考え次第という面もあります。したがってデメリットを上回るメリットを感じた場合には、複数の証券口座を持つことも検討してもよいかもしれません。
 

>>その他のおすすめ記事
滝川クリステルさんが1.5億円保有する「国債」ってどんな商品?
【連載#2】3億円失う人も…”億り人”で居続けることの大切さ
【連載#3】100万円を4,000万円にする「マーケットの渡り方」
【連載#4】忙しいビジネスマンでも株で“億り人”になれるワケ
総資産を1億にする資産運用法とは?

関連記事