経済・マーケット
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2019.5.22

年金が抑制?4月導入の「マクロ経済スライド」の中身

(写真=Jirsak/Shutterstock.com)
(写真=Jirsak/Shutterstock.com)
将来の年金に対する不安が広がるにつれて、資産形成への意識が高まりつつあります。かつてのように、年金と退職金で悠々自適な老後がおくれた時代は終わり、これからは自分の将来は自分で守らなければなりません。国が個人に広く投資をすすめている状況を考えると、将来の年金が約束されていないのだと感じざるを得ません。

そのように何かと話題になりやすい年金ですが、2019年度(平成31年度)は、公的年金の支給額を抑制する施策である「マクロ経済スライド」が実施されることになりました。このマクロ経済スライド、実は2004年から開始された制度であるにも関わらず、今回の発動はわずか2回目です。2015年度以来、実に4年ぶりとなります。マクロ経済スライドは賃金や物価の伸びが小さいときには実施されません。

ここであらためて、マクロ経済スライドの中身について紹介しましょう。

4年ぶりに実施される「マクロ経済スライド」

冒頭でも紹介しているように、マクロ経済スライドは年金の支給額を抑えるための制度です。そもそも日本の年金は、急速に進む少子高齢化を背景に、何らかの方法で減額していかなければ制度を維持できない状況にあります。現役世代が「老齢年金」「障害年金」「遺族年金」の支給額を負担する仕組み(賦課方式)のため、少子高齢化によって受給者と担い手のバランスが崩れると年金財政も厳しくなります。

公的年金の担い手が減少する未来が明らかになっている以上、財源の範囲内で給付費をまかなえるよう、あらかじめ調整しなければなりません。そこで、年金額の価値を自動的に調整する仕組みとして、マクロ経済スライドが導入されているというわけです。具体的な調整の内容としては、現役世代の減少や平均寿命の延びを加味しつつ、物価や賃金の変動に応じて年金の支給額を改定するものとなっています。

今回の改定で具体的に何が変わるのか?

マクロ経済スライドの概要をふまえたうえで、今回の改定によって年金額がどのように変化するのか見ていきましょう。ポイントは、物価と賃金をベースとした「増減の割合」と「年金支給額」です。

2019年度の年金額は「0.1%増」へ

とくに今回の改定では、「平成30年平均の消費者物価指数」(生鮮食品を含む総合指数)の内容をふまえ、2019年度の年金額は前年度から“0.1%プラス”されることになりました。これは、物価変動率(1.0%)と名目手取り賃金変動率(0.6%)がともにプラスであり、かつ物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回っているときには、“名目手取り賃金変動率”を用いることが法律で定められているためです。
 
(図=「平成31年度の年金額改定」厚生労働省)
(図=「平成31年度の年金額改定」厚生労働省
さらに、この名目手取り賃金変動率(0.6%)をベースに、マクロ経済スライドによるスライド調整率(▲0.2%)と前年度までのマクロ経済スライドの未調整分(▲0.3%)を加味すると、改定率は「0.6-0.2-0.3%=0.1%」となります。これが、2019年度の改定割合となるわけです。本来、マクロ経済スライドは支給額の抑制として機能しますが、今回は賃金変動率の方が高かったのでプラスになりました。

気になる年金の支給額は?

では、気になる年金の支給額はどのようになるのでしょうか。たとえば、国民年金(老齢基礎年金満額1人分)の場合、2018年度が月額64,941円だったのに対し、2019年度はプラス67円の65,008円となります。一方で厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)は、平成30年度が月額221,277円だったのに対し、2019年度はプラス227円の221,504円となっています。
 
(図=「平成31年度の年金額改定」厚生労働省)
(図=「平成31年度の年金額改定」厚生労働省

年金に頼らない将来の備えを

このように、今回の改定ではわずかなプラスとなった年金支給額ですが、マクロ経済スライドが機能している以上、今後は抑制される方向にはたらくと考えられます。やはり、個々人が年金に頼ることなく生活できるよう備えをし、老後の対策を講じていくことが求められるでしょう。日本の年金の現状をふまえたうえで、早い段階から老後資金を準備するのがよいかもしれません。
 

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