経済・マーケット
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2020.12.1

【特集#04】2020年はM&Aラッシュ。なぜいま企業買収なのか?

(写真=ANA Financial Journal 編集部)
(写真=ANA Financial Journal 編集部)
著名企業をめぐる買収劇は、ニュースとして大きく報じられます。では、買収した企業とされる企業とでは、株価や業績はどう変動していくのでしょうか。

買収発表で株価が短期的に跳ね上がる

企業の正式発表でも経済紙のスクープ記事でも、買収が判明すると、買収される側の株価は短期的に急上昇するケースがほとんどです。1株当たりの買収価格や買収後の事業プランの判明を待たず、一般投資家から株式を買い取る際のプレミアム(上乗せ価格)に期待した買いが入るためです。

では、その後はどう推移するのでしょう。

伊藤忠商事はファミリーマート買収の狙いについて、「経営の意思決定の迅速化」を強調しています。コンビニ業界首位のセブン・イレブンなどとの差が拡大し、企業価値が低下するのを一刻も早く食い止めるため、伊藤忠はファミリーマートの全株式を取得して経営改善の陣頭指揮を執るというのです。

日本最大の買収成功例は、ソフトバンク(当時)による日本テレコムの買収でしょう。ソフトバンクは高速インターネット接続事業での飛躍を狙い、通信事業者の日本テレコムを買収。日本テレコム系のインターネットサービス利用者を取り込んで高速通信網「ヤフー!BB」に移行させ、その後のソフトバンクグループ躍進の起爆剤になりました。当時と比べると、株価も10倍以上に大化けしています。
 

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“経営の神様”永守重信氏は、多くの会社をM&Aで再生

小型モーター世界首位の日本電産は買収巧者として有名です。1980年代から60件を超える買収を繰り返し、大半の企業を立て直しています。創業者の永守重信会長が買収先に足を運び、従業員とじっくり話し込んで再建策を練り上げていくスタイルで知られています。

2017年に電子部品の開発などを手掛ける米国のエマソン・エレクトリック社のモータードライブ事業などをM&Aした際には、2018年度から大きく売り上げを伸ばすことに成功しました。

ただ多くのケースでは、買収直後はなかなか効果が表れません。経理や人事などの後方部門の統合や配送の合理化、不採算事業からの撤退などは1年では終わらないためです。買収直後は相手先の売上高だけが帳簿に加算される一方で費用が先行し、経営効率が悪化したように見える企業が大半です。

買収資金を借入金で賄った場合は、財務の安定性が損なわれたとして海外の格付け会社から格下げされてしまうこともあります。この間、株価は低迷することもあり、投資家は買収成功を辛抱強く見守ることになります。こうしたことから、効果は一般に、買収完了から1年も2年も遅れてやってくると考えたほうがいいでしょう。

もっとも、買収が100%の経営改善を保証するわけではありません。特に経営難に陥った企業の買収はリスクを伴います。

長期的な視点で見ていきたいM&A後の企業分析

経済界で話題にのぼるのが花王によるカネボウ化粧品の買収です。カネボウは経営不振から事実上解体され、2006年に化粧品部門が花王の傘下に入りました。当初、カネボウの知名度と「経営学の生きた教科書」ともいえる花王の手腕をもってすれば、スピード再建が可能とみられていました。しかし2019年12月期の決算公告によると、売上高は897億円、本業の収益状況を示す営業損益は10億円近い赤字でした。

日産自動車は2020年7月28日に2021年3月期は6,700億円の最終赤字になる見通しだと発表しました。一方でトヨタ自動車は、世界的な不況下でも黒字を確保する見通しです。

日産は経営不振が深刻化した1999年に仏ルノーグループ入り。ルノーから6,340億円の出資金とともに送り込まれたカルロス・ゴーン氏の指揮下で、経営再建を果たしました。ただ、この間のゴーン氏は利益を最優先し、新車開発などへの投資を抑えたことから、現在はヒット車種が不足しているという状況にあります。

このように企業買収が成功するケースもあれば、残念ながら当初の計画通りに進まないケースもあります。そういった意味では、買収後にどのように経営を立て直し、事業を伸ばしていくのかを投資家としては注視すべきでしょう。買収は長い目で見ていく必要がありそうです。
 

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