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2020.11.29

【特集#02】2020年はM&Aラッシュ。なぜいま企業買収なのか?

(写真=ANA Financial Journal 編集部)
(写真=ANA Financial Journal 編集部)
2020年は企業買収の「当たり年」といわれています。上場企業が東証を通じて情報開示しただけでも、合併や買収についての決定は上半期(1~6月)だけで400件を超え、ここ10年で最多です。では、なぜ企業は買収を急ぐのでしょうか。

欧米に比べて、割安に放置されている日本企業

最大の理由は、企業経営者に対する株主からの強烈なプレッシャーでしょう。

どの企業でも経営陣に課せられた最大の使命は、業績を伸ばして株主に利益を還元することです。研究開発に力を入れるのも、従業員の待遇を改善するのも、消費者によろこばれる良質な商品やサービスを提供するのも、すべて株主の利益につながるからです。企業買収も例外ではありません。

現在、多くの日本企業の株価は低水準にとどまっています。今年は景気や企業業績の先行き不安が強く、実力より低く評価されている企業が多いのです。

企業評価の尺度としての一般的な指標に、株価純資産倍率(PBR)があります。企業の持つ現金や不動産、特許権などの資産から、借入金などの負債を差し引いた純資産に対して、株価が何倍かを示す指標です。

東証1部上場企業のPBRは2,172社の平均で1.2倍(2020年8月25日現在)です。100円の資産価値のある企業に120円の株価が付いているイメージです。

PBRが1倍未満、つまり100円の資産価値に対して株価が100円未満の企業は1,120社もあります。PBRが0.8倍なら、100円の品物に80円の値札が付いているようなものです。

ドイツやフランスは平均PBR1.5倍、米国では3倍台後半と高く、世界的に見れば、日本株は極端な割安状態で放置されていることがわかります。経営陣にとってPBRが低い企業の買収は「安い買い物」であることが多いのです。
 

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金融庁や東証が示す「株主本位の経営」のスタンスもM&Aを後押し

また、買収に対する意識の変化も見逃せません。2000年前後の金融危機局面で「ハゲタカ投資ファンド」が存在感を増した経緯から、日本では企業買収には否定的なイメージがありました。しかし、最近では、金融庁や東証が「株主本位の経営」を前面に押し出しているため、企業経営者や投資家の買収に対する心理的なハードルが大きく下がりました。

さらに、買収を支える資金も豊富にあります。企業は内部留保を蓄えてきましたが、有望な新規事業はそう簡単に見つけられるものではありません。しかし、ビジネスをゼロから立ち上げるのではなく、他社の一部門または会社を丸ごと買収すれば、短期間で利益を出すチャンスが手に入ります。買収によって株式を買い、経営権を得るのですが、感覚としては「時間と成長機会を買う」ことになります。

企業買収に加わって利益を得ようとする投資ファンドも、買収の活発化にひと役買っています。先日は米系大手投資ファンドのカーライルが、日本に1兆円を投じると報道されました。産業構造や生活スタイルが急激に変化し、事業の見直しに踏み切る企業が続出すると予想されているためです。背景には世界的な超低金利が長期化し、有利な資金運用先を求める投資マネーの膨張があります。

日本はこれまで企業買収が少なかったため、投資ファンドにとって有望な案件が大量に埋もれているともいわれています。今後、買収がますます増えていくことでしょう。
 

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