経済・マーケット
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2020.11.28

【特集#01】2020年はM&Aラッシュ。なぜいま企業買収なのか?

(写真=ANA Financial Journal 編集部)
(写真=ANA Financial Journal 編集部)
2020年は企業買収(M&A)が続出し、上半期(1~6月)は大小合わせて400件を超えました。これは、ここ10年でも最多ペースです。なぜいま、企業買収が盛んに行われているのでしょうか。株式投資家だけでなく、ビジネスパーソンとしても知っておきたい昨今の企業買収の流れを解説します。

企業買収には、いくつかの形態が存在する

企業買収については、さまざまな形態があります。1つは親会社が子会社の経営権を掌握する子会社買収です。ソニーは8月末までに、ソニー銀行などを運営する金融子会社ソニーフィナンシャルホールディングスの買収手続きを完了。また8月25日には、伊藤忠商事がコンビニ大手のファミリーマート買収に必要な株式公開買い付けが成立したと発表しました。

次に事業単位での買収です。こちらは重点事業以外の部門を切り出して、他社に売却するのが主な目的です。売り手は本業に特化できる一方、買い手は技術や設備、販売網などを短期間で入手できる利点があります。

製薬大手の武田薬品工業が8月24日、栄養剤「アリナミン」や風邪薬「ベンザブロック」などを扱う大衆薬部門を米国投資会社に約2,400億円で売却すると発表したのが最近の好例です。武田薬品のクリストフ・ウェバー社長は記者会見で、大衆薬部門を売却した理由について「医療用医薬品に注力する」ためと説明しています。

一方、MBO(経営陣による買収)といって、経営陣が自らの会社の全株式を取得し、株式の上場廃止を選択するケースも増えてきました。株主を限定することで、迅速な意思決定ができる利点があります。経営陣と資金量の豊富な投資ファンドが手を組んで、一般投資家から株式を買い集めるのが一般的です。医療事務や介護サービスのニチイ学館は5月にMBOを宣言し、8月18日に株式の買い付けが成功したと発表しています。
 

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経済小説やドラマの中で舞台になる「敵対的買収」も

また、相手企業の同意を得ない「敵対的買収」も増えてきました。経済小説のなかの出来事のように思われていた敵対的買収ですが、昨年、伊藤忠商事がスポーツ用品大手のデサントを買収し、日本の著名企業同士で初の敵対的買収の成功例となりました。今年は焼き肉店「牛角」を核とするコロワイドが、和風定食チェーンの大戸屋ホールディングスに対して、相手側の同意を得ない「敵対的買収」を仕掛けています。

一方で、このところ目立っているのが、株式を上場する子会社の買収です。昨年は三菱ケミカルホールディングスが、田辺三菱製薬の全株式を取得して完全子会社化。このほか、日立グループも上場子会社の再編を進めています。

親子上場で指摘される課題と企業統治の考え方

上場企業の子会社が株式を上場する「親子上場」には、最近、株主から厳しい目が注がれています。「株主による企業統治」という資本主義社会の根本原則が揺らぎかねないためです。日本では昨年末時点で300社を超える上場子会社があり、親子上場がほとんどない欧米投資家には不評です。

上場子会社では、筆頭株主である親会社が社長ら役員を送り込むことが多く、資本と経営者の両面から実質的に強い支配下に置かれています。このため、子会社の経営陣は親会社の意向を優先し、個人や海外投資家などグループ外の少数株主の利益が軽視されかねません。

一方、東証と金融庁は企業統治の基本ルールを定めた「コーポレートガバナンス(企業統治)コード」を策定し、株主本位の経営を徹底するよう求めています。また親子上場を続ける企業に対し、海外投資家が年1回の定時株主総会で、役員の選任議案に反対の姿勢を見せるケースも増えています。こういった背景から、一般株主の不信を招く親子上場は解消が相次いでいるのです。
 

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