経済・マーケット
-
2020.9.29

アメリカのベンチャーキャピタルが重要視するSaaS企業の40%ルールを解説

(画像=Getty Images)
(画像=Getty Images)
SaaSの40%ルールとは、テクノロジーに特化したグローバルなベンチャーキャピタル「Battery Ventures」が2015年に提唱したSaaS企業への投資をするかどうかの指標の一つです。

北米のベンチャーキャピタルの間で注目を集めており、最近では日本の個人投資家の間でも話題になっています。

そこで今回は、SaaSの40%ルールとはどのような内容なのか、SaaSの意味や40%の分析方法などをくわしく解説します。

SaaSとは

SaaSとは「Software as a Service」の略称で、サース、またはサーズと呼びます。

ECサイト構築に関係したITの専門用語で、販売者(ベンダー)が提供するクラウドサーバーにあるソフトウェアを、ユーザーはインターネット経由で利用できるサービスを指します。

簡単に特徴をまとめるとSaaSは「インターネット環境があればどこからでもアクセスでき」、「複数のグループや人たちで管理できる」サービスになります。

ポイントはユーザー側にソフトウェアをインストールしてもらうのではなく、ネットワーク経由でソフトウェアを利用することにあり、低価格でサービスを提供します。

たとえば、サイボウズ株式会社の「グループウェア」は参加しているチーム全員がスケジュールの設定やメッセージを共有したりできるサービスです。

まさにSaaSの特徴を満たしたクラウドサービスで、サイボウズはSaaS企業の代表例となっています。

SaaS企業とは

SaaS企業はSaaSを主体に扱う企業のことで、SaaS企業の強みはソフトウェアの構想から開発、管理、アップグレードを自社の管轄で行っていることです。

そのため、一つでも企業を代表するソフトウェアの開発に成功すれば、ビジネスモデルを確立できる可能性が高いです。

また、サービスを提供する範囲に国境がなく、インターネットを介して提供するため配送コストなどがかからないというのも大きなメリットです。

新型コロナの拡大により、自宅で仕事をする方が急増しました。結果として、ビジネスに関係するSaaS企業の需要が急速に高まり、個人投資家の投資対象として注目を集めています。

たとえば、ビデオ会議システム「ZOOM」を運営するズーム・ビデオ・コミュニケーションズの2020年2月~4月までの売上高は前年同期比270%増の3億2816万ドルまで上昇。

ビデオチャットアプリの「Skype」や「Slack」も、自宅で仕事をする方やオンライン飲み会をしたい新規ユーザーを獲得しました。

SaaSの40%ルール

SaaSの40%ルールとは、SaaS企業の売上高の成長率と営業利益率の値が40%超えると健全な企業という考え方になります。

「企業の売上高の成長率」+「営業利益率」=40%以上

つまり、下記のようなシチュエーションなら、対象となるSaaS企業に投資をする価値はあるという考え方です。
  • 売上高成長率前年比100%ならば、営業利益率はマイナス60%まで許容範囲
  • 売上高成長率前年比40%ならば、営業利益率は0%以上
  • 売上高成長率前年比0%ならば、営業利益率は40%以上
  • 売上高成長率前年比-20%ならば、営業利益率は60%以上
売上高成長率が高ければ営業利益率は低くても問題なく、売上高成長率が低くても営業利益率が高ければ問題ないということになります。

ポイントは営業利益率がマイナスというのは、すなわち営業赤字が出ていても、売上高成長率が高ければSaaS企業では問題ないという風潮が根強いことにあります。

SaaS企業は赤字になりやすい

まず、前提としてSaaS企業は赤字になりやすいです。

なぜなら、SaaSのビジネスモデルは従来のパッケージ販売と異なり、月額制のサブスクリプションのため、支払ったコストに見合った売上を得るまでに時間がかかります。

パッケージ販売なら購入された翌月に1万円の売り上げが発生しますが、サブスクリプションだと1万円を回収するのに10ヵ月はかかってしまいます。

売上を回収するまでの10ヵ月の間に開発コストやユーザー獲得のコストなどが負担としてのしかかるため、SaaS企業は赤字になりやすいという弱点があります。

顧客数が一定に達するまでは、赤字が続くのはSaaS企業の特徴です。

株式投資には株価が割安なのかどうかを計る指標として「PBR」や「PER」がありますが、SaaS企業は赤字になりやすいビジネスモデルのため、PBRやPERで分析することができません。

そのため、PBRやPERの代わりとなる指標としてSaaSの40%ルールが登場しました。

SaaSの40%ルールのシミュレーション

SaaS企業は定額制のサブスクリプションのため、基本的に利用しているユーザーが減らなければ毎年の売上高の基盤となります。

たとえば、一人当たりの年間売上高が1万円のSaaSがあったとします。1年目は1万人を獲得した為、1年目の売上高の合計は1億円になります。

2年目はユーザーを7000人獲得するために宣伝を大量にしたため、営業利益は-5000万円となりました。

赤字企業ですが、SaaSの40%ルールに則れば、
  • 売上高成長率:(1億7000万円-1億)÷1億×100=70%
  • 営業利益率:(-5000万÷1億7,000万円)×100=-29.4%
  • SaaSの40%ルール:70%+(-29.4%)=51.6%
となり、ルール上は健全な企業だといえます。

このシミュレーションを踏まえたうえで、実際のSaaS企業で40%ルールを分析してみましょう。

実際のSaaS企業で40%ルールの分析

今回はクラウドベースの監視や分析のプラットホームを手掛けるアメリカのソフトウェア企業、データドッグ(NASDAQ:DDOG)の決算を例にして解説します。

データドックの2019年(1月1日~12月31日)通期決算は、売上高が約3億6278万ドルで、営業利益が-約2014万ドルになります。

やはり赤字企業ですが、SaaSの40%ルールに則れば、
  • 売上高成長率:(約3億6278万ドル-約1億9807万ドル)÷約1億9807万ドル×100=83%
  • 営業利益率:(-約2014万ドル÷約3億6278万ドル)×100=-5.5%
  • SaaSの40%ルール:83%+(-5.5%)=77.5%
となります。

SaaS企業の40%ルールに則ればデータドックは健全な企業となり、2019年の通期決算や2020年1~3月期決算が発表されて以降、上昇傾向にあります。

記事執筆時点での株価の最高値が98.99ドルで、年初の36.70ドルと比べると倍以上も上昇しています。

データドックに限らず、SaaS企業の40%ルールに当てはまるIT企業は、新型コロナの影響下でも新規ユーザーを獲得して、順調に株価や業績を伸ばしています。

まとめ

以上が、SaaS企業の40%ルールの解説になります。

SaaS企業は従来の企業と異なり、赤字を出しながらも成長できるビジネスモデルのため、従来の分析方法だと投資対象になるかどうかの判断が付きにくいです。

SaaS企業の40%ルールは、判断しにくいケースに明確な線引きをする指標となっています。

しかし、あくまでも指標のため、40%ルールだけに固執するのは止めましょう。


文・The Motley Fool Japan編集部/The Motley Fool Japan

 

>>その他のおすすめ記事
中国向けECビジネスを加速させる「自動輸送ロボット」
日本は借金大国?世界の債務残高はどのくらいなのか
災害時にハイブリッド車からの給電で気をつけることとは?
水に浮く世界最小4人乗り「FOMM ONE」が日本でも発売か?
LINE PayボーナスからLINEポイントへのインセンティブ変更で何が変わる?

関連記事