経済・マーケット
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2020.2.27

エルメス帝国を築いたドゥーマス家のビジネス戦略

(写真=Karolis Kavolelis / Shutterstock.com)
(写真=Karolis Kavolelis / Shutterstock.com)
総額492億ドル(約5兆円 *1米ドル=109円換算)もの純資産を保有し、「世界一裕福な一族」に名を残すドゥーマス家。王族ご用達の馬具工房にすぎなかったエルメスを世界の高級ブランドに進化させた5代目CEOジーン・ルイス・ドゥーマスの偉大な功績と、6代にわたり家族に受け継がれるビジネス戦略の秘訣を探ってみましょう。

大胆なアプローチでイメージチェンジに成功

エルメスは1837年、高級馬具メーカーとして、ジーン・ドゥーマスの祖父が設立しました。1920年代に入る頃には、自動車が普及し馬具の市場が縮小したことや、ウェールズ公から要望があったことにより、旅行用・スポーツ用の皮製品メーカーへと、事業を多角化させます。

ジーンの父親で4代目CEOだったロバートは、ベルトやスカーフといった小物を、エルメスの商品ラインに加えます。しかし、エルメスに定着していた馬具メーカーのイメージは、まだまだ根強いものでした。エルメスを「世界中の女性が憧れる高級ブランド」へと変貌させたのは、1978年に経営権を受け継いだジーンです。

ロバートの他界によりトップの地位に就いたジーンは、エルメスのイメージを一新し、若い顧客を獲得する戦略として、エリック・ベルジェールやバーナード・サンツといった、才能あふれる先鋭デザイナーを起用。

パイソンのオートバイのジャケットやダチョウの皮のジーンズなど、新しい高級ラインを導入し、ファッション業界に旋風を巻き起こします。

やがて、「ケリーバッグ」や「コンスタンス」「バーキン」といった、大ヒット作を次々と世に送り出し、高級ブランドとしてのエルメスの地位を揺るぎないものにしました。
 

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「得意分野」を活かした一族経営

シャネル同様、エルメスは長い歴史を経た現在も、一族経営に徹している数少ない小売業の一つです。

2010年に他界したジーンは、エルメスにとって5代目の経営者でした。自身がエルメスに入社後、父親の元でビジネスのノウハウを学んだように、息子のピエール・アレクシス・ドゥーマスを一族の経営に引き入れ、アート・ディレクターに任命しました。

現在のCEOの地位は、ジーンの甥である、アクセル・ドゥーマスが受け継いでいます。ピエールは父親の地位を、自分ではなくアクセルが受け継いだことについて、「経済力とカリスマ性にあふれており、父のように強い商業的ビジョンをもっているから」と、ビジネスの視点から客観的に分析しています。また、自分自身の役割が「エルメスの強い創造性を維持すること」だと、自認しています。

また、ジーンの妻であるレナは、自らインテリア・デザインの事業を運営し、150以上のエルメスの店舗をデザインするなど、洗練されたアートセンスでエルメスに貢献しました。

エルメスには16人の後継者がいますが、血族の絆にのみ依存するのではなく、それぞれの得意分野をビジネス戦略に活かして一族経営を貫いている点が、エルメス帝国の繁栄の基盤となっているのかもしれません。


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