経済・マーケット
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2019.10.24

暴動で香港からマネーは流出するのか?富裕層が注目する次の場所はあるのか?

(写真=Lewis Tse Pui Lung/Shutterstock.com)
(写真=Lewis Tse Pui Lung/Shutterstock.com)
資産3,000万ドル(約32億円)以上の超富裕層が世界一多く住んでいる香港ですが、中国本土への犯罪容疑者引き渡しを認める「逃亡犯条例」の改正案をめぐり、暴動がくすぶり続けています。

香港に富裕層が集まる背景とともに、治安の悪化がマネー流出の引き金となる可能性や、次なる「富裕層の集まる都市」について考察してみましょう。

超富裕層人口がニューヨークを抜いて世界1位に

米資産調査企業ウェルスXの調査報告書によると、2017年、香港に住む超富裕層は前年比3割増の1万人に達し、2011年以降1位を維持していたニューヨークを超える数値になりました。

元々香港には、イギリスの植民地時代を乗りこえ、国際性豊かな貿易・金融都市としての繁栄を築き上げてきた歴史があります。近年は、株式市場の盛況や、中国経済との経済関係が拡大したことが、超富裕層の増加を後押ししたものと推測されます。

中国本土の急速な経済成長も要因の一つとして挙げられているものの、本土の超富裕層は一つの地域に集中することなく全国に拡散しているため、トップ10入りを果たしたほかの中国の都市はありませんでした。

「タックス・ヘイヴン」としても有名

もう一つ、香港が超富裕層を魅了する理由があります。「オフショア」「タックス・ヘイヴン(租税回避地)」などと呼ばれる、富裕層への税優遇です。香港は経済成長促進の一環として、徹底した規制緩和や低税率を海外からの投資誘致手段に用いてきました。

非課税あるいは低税率といった優遇措置を設けている国や地域は、世界中に複数存在します。香港のほか、シンガポール、パナマ、マカオ、ケイマン諸島、バミューダ諸島などが、タックス・ヘイヴンとして知られています。

「一国二制度」の崩壊が富裕層を流出させる?

ところが、2019年6月、「逃亡犯条例」改正案反対派の市民数千人が立法会周辺で繰り広げたデモが、上環から九龍側へと範囲が広がり、「富裕層を香港から流出させる引き金となるのではないか」との見方が強まっています。

逃亡犯条例の改正は、1997年の中国返還後も続いてきた「一国二制度」を、事実上崩壊させる可能性を秘めていると言われています。

香港・中国間で犯罪者の引き渡しが許可された場合、例えば、「香港の富裕層が香港に保有している資産を、中国政府の命により凍結することも可能になる」という専門家の意見もあります。近年、中国による支配力が増してきていることもあり、香港に代わる資産の移転先を求める富裕層が増えているのも不思議ではありません。
 

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富裕層が資産を移転させる最有力候補地は?

数あるタックス・ヘイヴンの中でも、香港に代わる富裕層の資産の移転先として特に注目されているのは、シンガポールです。急速な経済成長や国際的な見通し、海外企業の誘致に積極的なビジネス環境、安定した政治および社会情勢、高度な教育水準などから、アジアの国際ビジネスハブとして高評価を受けています。

また、高級不動産は香港よりはるかに安いため、富裕層にとっては不動産投資先としても非常に魅力的な環境です。米大手不動産サービス企業のクッシュマン・アンド・ウェイクフィールドによると、2018年にシンガポールで高級不動産を購入した富裕層は、中国人が最も多かったといいます。

さらに、条約締約国間で税務調査に必要な情報(金融資産の出入りや法人所有者に関する情報など)を交換する「租税情報交換協定(TIEA)」を、香港が中国を含む75区域と締約しているのに対し、シンガポールが締約している61区域には、香港と北京が含まれていません。つまり、中国当局にとって、シンガポールは金融資産の動きを監視しにくい国となり得るかもしれません。

こうした背景から、今後、香港からシンガポールへ資産を移転させる富裕層が増えるものと推測されます。
 

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