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2020.10.21

モルガン財閥成功のカギは、国家支援と国家プロジェクトへの投資にあり!

(写真=Nejron Photo/stock.adobe.com)
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モルガン財閥は、金融財閥として長きにわたり国際社会に影響を与え続けてきました。約200年前にイギリスのウェールズから移住後、アメリカ3大財閥と呼ばれるまでに飛躍したモルガン家における成功の秘訣とはいったいどういったことなのでしょうか。モルガン家の歴史とあわせて確認していきます。
 

アメリカ3大財閥の1つ、モルガン財閥

アメリカには「モルガン財閥」「メロン財閥」「ロックフェラー財閥」と、主に3つの大きな財閥があります。財閥とは、同族支配による巨大な独占企業集団のことです。金融業を行ったり政治と結びついたりするなど財閥は経済や国家に大きな影響を与えることも少なくありません。

アメリカ三大財閥

・モルガン財閥
モルガン財閥は、アメリカ3大財閥の1つといわれています。詳細は後述。

・メロン財閥
メロン財閥のメロン一族は、政治家出身。北アイルランドをルーツとし、アメリカのピッツバーグで財を成した財閥です。アルミニウムや石油といった産業資本への投資に加え、金融業への積極的な取り組みや政界への進出などにより3大財閥と呼ばれるまでに成長しました。

・ロックフェラー財閥
ロックフェラー財閥は、石油への投資により莫大な富を得た財閥です。財閥として確固たる地位を築いた後は、大学や医療研究所を設立するなど社会事業に積極的に貢献。また一族から副大統領を輩出するなど政界とも深い関わりを持っています。

モルガン家のルーツはイギリスのウェールズ

モルガン財閥は、イギリスのウェールズをルーツとする国際的な金融財閥です。始祖であるマイルス・モルガンがコネティカット州に移住してきたところから、モルガン財閥はスタートします。1636年にアメリカへ移住後、マイルス・モルガンから三世代にわたり農業や保険業・不動産業などで資産を蓄え、徐々に金融業へと進出していきました。
 

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モルガン家を財閥へと躍進させたJ.P.モルガン

金融財閥として歩み始めたモルガン家を財閥へと躍進させたのは、マイルス・モルガンから5世代目にあたるJ.P.(ジョン・ピアポント)モルガンです。J.P.モルガンは、父ジュニアス・スペンサー・モルガンがはじめた銀行業をどのように拡大させていったのでしょうか。

ドイツのゲッティンゲン大学卒業後、父の銀行に入行

J.P.モルガンは、ドイツのゲッティンゲン大学卒業後、1856年に父が経営する銀行ピーボディ・モルガン・アンド・カンパニーに入行しました。入行当初はロンドンで実務を行っていましたが、その後アメリカのニューヨーク支店に移り、銀行や金融についてさらに学びます。1861年には24歳の若さで父の銀行の子会社となるJ.P.モルガン商会を設立しました。

なおピーボディ・モルガン・アンド・カンパニーは、1864年に共同経営者であるピーボディが引退したことでJ・Sモルガン商会と改称されます。

戦争での資金調達により国際金融財閥としての礎を築く

J.P.モルガンは、父の銀行で働いた経験を生かし世界の国や地域を相手とした金融事業を展開します。中でも戦争時の資金調達は、モルガン財閥の礎を築くのに大きな役割を果たしました。

・南北戦争
南北戦争とは、1861~1865年にアメリカで起きた戦争です。奴隷制度に反対するA・リンカーンが率いる北部と奴隷制度擁護を主張する南部との間で争われ、北部の勝利で終戦。南北戦争は、史上初の本格的な近代戦だったといわれています。機関銃やライフル・艦艇といった新しい武器が使用されただけでなく、鉄道や電信といった新たな産業技術も戦争の勝敗に大きな影響を与えました。

モルガン財閥は、南北戦争において北部への軍需品調達により大きな利益を獲得。終戦後、アメリカの中心となっていく北部をバックアップしたことは、モルガン財閥の存在感を増す出来事だったともいえるでしょう。

・普仏戦争
普仏戦争は、1870~1871年にドイツ統一を目指すプロイセン(2020年現在のドイツ北部からポーランド西部)とフランスで起きた戦争です。戦争はプロイセンの勝利で幕を下ろします。しかしフランスに対し国際協調融資を組んだモルガン財閥は、この戦争により金融財閥としての国際的な地位を手に入れることとなりました。

南北戦争および普仏戦争終戦後、J.P.モルガンはアメリカの名門一族が保有する銀行ドレクセル・ハージェスの共同経営者となります。また父のジュニアス・スペンサー・モルガン他界後には、ニューヨーク、フィラデルフィア、パリ、ロンドンの同族企業をJ.P.モルガン商会に統合するなどして、金融財閥としてさらに大きくなっていきました。

鉄道や鉄鋼など国家事業への融資で影響力を拡大させる

南北戦争後、J.P.モルガンは鉄道事業に目をつけます。近代化が進む当時のアメリカでは鉄道事業が活発化していたからです。J.P.モルガンは、鉄道事業に対し多額の資金を融資することで12の鉄道会社をグループの支配下に置くことに成功。鉄道会社への支配を完成させるとJ.P.モルガンは石炭や機械・鉱業・公益事業といった国家プロジェクトに関わる企業に本格的に融資をはじめます。融資の事例を2つ見てみましょう。

・ゼネラル・エレクトリック
ゼネラル・エレクトリックは1892年、J.P.モルガンの出資により設立された会社です。設立当初はエジソンが発明した白熱電球のメーカーでした。しかしその後、多くの企業を買収することで宇宙開発機器や軍需・医療用機器なども生産する企業へと躍進。2020年現在は、金融や情報サービス・放送サービスも手掛けるなど事業内容はさらに拡大しています。

・U・Sスチール
U・Sスチールは、1901年にJ.P.モルガンによって設立された鉄鋼メーカーです。「J.P.モルガン」「A・カーネギー」「W・H・ムーア」の3つの資本グループが支配する11の鉄鋼会社を統合し、世界初の10億米ドル企業として誕生しました。設立当時は、アメリカ国内の鉄鋼生産能力の約65%を占めていたといわれます。

上記の2社以外にもゴムや石油・石炭・製紙・食品などさまざまな企業へ融資を行ったJ.P.モルガンは、経済界での影響力を強めていきました。また金融事業のさらなる強化を目指してファースト・ナショナル・バンクやナショナル・シティ銀行と資本提携を結びます。これによりモルガン家による金融独占体制が確立されたのです。

J.P.モルガン2世、金融独占体制を確立しウォール街最大の金融財閥へ

積極的な金融事業により、1912年にはモルガン財閥がアメリカ粗鋼生産の53%、鉄道路線の34%、機械生産の60%を配下していたといわれます。そのころ、モルガン財閥の事業はJ.P.モルガンから息子のJ.P.モルガン2世に引き継がれました。J.P.モルガン2世は父から引き継いだ企業への融資だけでなく、イギリスやドイツ・フランスをはじめとする各国政府への国債の引き受けおよび融資も拡大します。

また1914~1918年に起こった第1次世界大戦では、連合国によるアメリカでの軍需物資買い付けを援助し財閥の資産と影響力をさらに拡大させました。このようにモルガン財閥は、大企業および国家への融資や戦争への物資調達を行うことで最盛期を迎え、1920年代にはウォール街最大の金融財閥へと成長したのです。

モルガン財閥による金融独占への批判が逆風に

金融財閥として成長を続けてきたモルガン財閥ですが1930年代に入ると金融独占への批判を受けるようになります。

1929年の世界大恐慌をきっかけに反独占の動きが強まる

モルガン財閥への批判が出るきっかけとなったのは、1929年に起きた世界大恐慌です。世界大恐慌によりアメリカの株価は最大で90%弱下落し、失業者は約1,200万人(失業率約25%)となったといわれています。またその間の世界貿易は70%以上減少したともいわれ世界各国で封鎖的な経済へと突入。世界的な大恐慌により経済が危機的状況になるなか、金融資本を独占するモルガン財閥への批判は強くなっていったのです。

J.P.モルガン商会、銀行法(グラス・スティーガル法)制定により分割

1935年にJ.P.モルガン商会は1933年に施行された銀行法により、商業銀行「J.P.モルガン」と投資銀行(証券業)「モルガン・スタンレー」への分割を余儀なくされました。これは、当時大統領であったF・ルーズベルトが経済を立て直すために実行したニューディール政策の一環として、銀行の健全化と預金者保護を図るため行われたものです。

銀行法の制定とJ.P.モルガン商会の分割によりモルガン財閥はその後しばらく停滞することになります。

分割後は銀行業務を中心に展開

1929年に起きた世界大恐慌以降も、モルガン財閥は金融業を中心にビジネスを行います。

・商業銀行であるJ.P.モルガンは、銀行法撤廃に向けた動きを強化
1959年、商業銀行「J.P.モルガン」はニューヨークの商業銀行「ギャランティ・トラスト」と合併し「モルガン・ギャランティ・トラスト」となります。また1969年には、持株会社「J.P.モルガン」を設立。J.P.モルガンは、1989年に債券引受業務、1990年株式引受業務へ参入し国内証券取引でのシェアを拡大します。

また1988年にはメキシコ政府に26億米ドルの信用供与、1995年以降はロシアに30年返済で25億米ドルの基金を支出するなど多くの地域や国に財政支援を行いました。このような各国への支援を行うなかで、1990年には「証券取引の売り上げが総売上高の10%を超えない」という条件付きでFRB(連邦準備制度理事会)から証券引受業務を認められます。

また1999年にはついに銀行法(グラス・スティーガル法)の一部が廃止され、預金やローンだけでなく株式・社債の引き受け保険など幅広い金融商品サービスの取り扱いが可能となりました。なお当時のJ.P.モルガンの総資産は、2,608億9,800万米ドルだったといわれます。

・投資銀行のモルガン・スタンレーは超優良企業群へ
投資銀行のモルガン・スタンレーは1960年代以降、成長が期待される「高度技術産業」「航空宇宙」「軍需産業」「ハイテク産業」の各企業とアライアンスを図ります。これは、同時期に絶頂期を迎えたロックフェラー財閥に対抗するためでもありました。モルガン・スタンレーがアライアンスを行った企業の一部を以下に紹介します。
 
企業名 詳細
IBM 1911年に設立した世界最大級のシステムインテグレーター企業
メルク 1889年にニューヨークで設立した医薬品メーカー
AT&T 1885年に電話を発明したグラハム・ベルの会社の子会社として設立。アメリカ最大の電気通信企業。携帯電話事業やインターネット事業を行う

このような大企業との活発なアライアンスにより、モルガン・スタンレーは1980年代までに超優良企業群と認められるまでになったのです。

2000年以降は合併・買収によりアメリカの巨大銀行持株会社となる

2000年以降は、金融機関の規模拡大と総合化が世界的に進みました。

ロックフェラー財閥傘下のチェース・マンハッタンと合併

世界的な金融機関の再編が進む中、モルガン財閥は徐々にほかの銀行に対抗することが困難となっていき、2000年ついにJ.P.モルガンはチェース・マンハッタンに吸収合併されました。チェース・マンハッタンは、ロックフェラー財閥のグループ銀行です。当時はライバルである2大財閥の銀行合併ということで話題となりました。

しかし結果的にはチェース・マンハッタンの強固なリテール地盤とJ.P.モルガンの投資業といった2つの強みを持つ巨大な金融機関が誕生することになりました。合併により誕生したJ.P.モルガン・チェースの総資産額は、約7,150億米ドル程度(2000年末)だったといわれます。これは、当時のシティグループやバンク・オブ・アメリカに次ぐ規模です。

またその後も積極的に買収を行い、2004年6月には当時のアメリカで第6位となる金融機関バンク・ワン・コーポレーションも合併しています。

2008年サブプライムローン関連企業を救済買収

J.P.モルガン・チェースが2008年に行ったのは、サブプライムローン関連企業の買収です。サブプライムローンとは、アメリカで取り扱われていた低所得者向けの住宅ローンのこと。審査基準が緩く借り入れやすい一方で、金利が高く設定されることが特徴です。サブプライムローンは2000年以降の住宅価格の値上がりに伴い、利用者が増えて残高を増やしました。

しかし2005年ごろから住宅価格が値下がりし始めたことで、滞納や債務不履行が多発し金融問題に発展します。特に2007年後半からは、住宅債権を証券化し売買していたヘッジファンドや金融機関の破綻が相次いだため、深刻な金融問題となったのです。このサブプライムローン問題で、破綻した金融機関の救済に乗り出したのがJ.P.モルガン・チェースです。

2008年3月に証券会社ベアー・スターンズを救済買収、同年9月アメリカ貯蓄貸付組合(S&L)最大手のワシントン・ミューチュアルの銀行業務を19億米ドルで買収しています。これらの買収によりJ.P.モルガン・チェースの預金額は9,000億円を超えてアメリカ最大となりました。

2020年石炭産業への新規融資の停止を発表 国際社会への影響は?

2020年4月、J.P.モルガン・チェースは石炭産業への新規融資の停止を発表。すでに取引がある石炭採掘会社への融資は、2024年までに段階的にゼロにすることも明言しています。そのほか、石炭発電が活発な開発途上国などの石炭火力発電プロジェクトの融資停止も決定。一方で2020年度中に、グリーンエネルギー関連の開発に2,000億米ドルの資金供与をすることも発表しています。

このようにJ.P.モルガン・チェースは近年、環境を重視した経営方針を明らかにしています。これは、環境や社会問題への取り組み「ESG(イー・エス・ジー)」が注目されているからといえるでしょう。

国際的に注目されるESG投資とは?

ESG投資とは、企業の財務内容や収益だけでなく環境保護や社会貢献といったESGを考慮し、投資対象を選定する投資方法です。ESGとは、具体的に企業の持続的な成長のために欠かせない以下の頭文字から成り立っています。
  • Environment:環境
  • Social:社会
  • Governance:ガバナンス
企業の持続的な成長に欠かせない環境への取り組みとは、環境汚染の防止や植林活動などです。社会への取り組みは、文化や人権の保護、疾病・貧困対策などがあげられます。ガバナンスとは、企業内部における統制や監視のことです。具体的には、社外取締役および社外監査役の設置などがあげられるでしょう。

ESG投資とは、こういったESGに真摯に取り組む企業に投資することで経済的なリターンを狙っていく投資方法です。ではなぜいまESG投資が注目されているのでしょうか。

ESGへの取り組みは国連サミットでのSDGsの採択から本格化

ESGへの取り組みは、2015年に開催された国連サミットにおいて「SDGs」が採択されたことにより本格化しました。SDGsは、「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包括性のある社会の実現のために、2023年を年限とする17の国際目標をいいます。SDGsで設けられた17の国際目標は、以下の通りです。

 
SDGsの17の目標
1 貧困 貧困をなくそう
2 飢餓 飢餓をゼロに
3 保険 すべての人に健康と福祉を
4 教育 質の高い教育をみんなに
5 ジェンダー ジェンダー平等を実現しよう
6 水・衛生 安全な水とトイレを世界中に
7 エネルギー エネルギーをみんなにそしてクリーンに
8 成長・雇用 働きがいも経済成長も
9 イノベーション 産業と技術革新の基盤を作ろう
10 不平等 人や国の不平等をなくそう
11 都市 住み続けられるまちづくりを
12 生産・消費 つくる責任つかう責任
13 気候変動 気候変動に具体的な対策を
14 海洋資源 海の豊かさを守ろう
15 陸上資源 陸の豊かさを守ろう
16 平和 平和と公正をすべての人に
17 実施手段 パートナーシップで目標を達成しよう
出典:外務省
これらの目標からも分かるようにSDGsでは、すべての人が安心して安全・平等に生活できる社会の実現を目指しています。環境破壊や人権軽視などが多く問題化する現代におけるSDGsを実現するための手段として、ESGが注目されるようになったのです。

ESG投資の現状を確認しよう

ESGは、投資において年々重要視されるようになっています。なぜならESG投資をすることで投資をしながら環境や社会への貢献ができるからです。またESGに積極的に取り組む企業を選ぶことで、コンプライアンス違反など不祥事により業績が急落するようなリスクも抑えられます。ESG投資額は実際にどのくらい増えているのでしょうか。

世界のESG投資額を集計している国際団体「GSIA」が発表した2018年度の報告をもとに、以下の表1で紹介します。

表1.ESG投資額の推移
年度 ヨーロッパ アメリカ 日本
2016年 12兆400億米ドル 8兆7,230億米ドル 4,740億米ドル
2018年 14兆750億米ドル 11兆9,950億米ドル 2兆1,800億米ドル
成長率 11%(ユーロ換算) 38%(米ドル換算) 307%(円換算)

このようにESG投資額の推移を見ても世界的にESGへの関心が強まっていることが理解できるのではないでしょうか。J.P.モルガン・チェースはこのような現状を踏まえ、ESGの取り組みの1つとして石炭産業への新規投資を停止したと考えられます。

日本のメガバンクも石炭産業への融資停止に追随

表1で紹介した通り、日本でもESG投資額が急激に拡大しています。このような流れを受けて日本のメガバンク3行は、石炭火力発電事業への新規融資を「実施しない」「原則行わない」と発表。商社大手の丸紅や三菱商事、三井物産も石炭発電事業を大幅に縮小すると表明しています。今後は、そのほかの企業にも石炭事業縮小の流れが波及する可能性も十分にあるでしょう。

モルガン財閥成功の秘訣は、国際的な流れを読んだ臨機応変な投資

イギリスから移り住んだモルガン家は、J.P.モルガンの代で国際金融財閥としての地位を確固たるものとしました。成功の秘訣は、国際的な流れを読んだ国や国家事業への投資を行ってきたことです。そんなモルガン財閥は2020年となったいま、石炭への新規融資停止を発表するなどESGへの取り組みを強化しています。

世界最大の金融財閥であるモルガン財閥がこのような方針をとっていることを考えると、世界的なESG重視の動きはさらに拡大していくかもしれません。今後は、投資方法の1つとしてESG投資にも注目してみましょう。
 

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