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2020.7.12

オール私立なら2,000万超!幼稚園から大学までの教育費を確保するには?

(写真=arrowsmith2/stock.adobe.com)
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「幼稚園から大学まで、全部私立だと軽く2,000万円は超えるよ」
こんな言葉を耳にしたことはありませんか。しかしその真偽や、具体的に何にいくらかかるのかを把握している人は、あまり多くはないかもしれません。2,000万円に塾や習い事は含まれるのか、中学や高校から私立に行った場合はどうなのか、留学する場合は……など、疑問点はいくつもあります。

ではいつ頃から、どのような方法で教育資金を準備すればいいのでしょうか。現実にどのくらいの教育費がかかるのかを見ていきつつ、豊かな教育の機会を与えるための資産運用を考えてみましょう。

教育費は早め早めの準備が大事

少子高齢化の進行で、今後も子どもの数は減っていきます。しかしその分、各家庭が子ども一人当たりにかける教育費が増えるかというと、そう単純ではありません。経済格差の拡大により、潤沢な教育投資を行う家庭と、子どもに公教育以外の教育機会を与えられない家庭との分化が始まっているからです。

裏返せば、投資を行える階層での競争はさらに激化することが予想されます。「勉強ができる子が通う塾に行かせればいい」「一流大学への入学者を多く出している学校に行かせれば安心」という発想だけでは、お子さんの個性や特性にあわせた教育機会を提供できるとは限りません。

塾のコースを追加する、複数の塾に通う、家庭教師をつける、より高度な学習のために留学させる……など、当初の予定とは異なる「メニュー」があとから追加になることは少なくありません。さらに医学や美術、音楽など、通常の学科よりも資金が必要な分野をお子さんが専攻することも考えられます。

お子さんにマッチした質の高い教育機会を与えるには、日頃からの情報収集が必要なのは言うまでもありません。それと同時に、いつ必要となるかわからない「機会」を提供できるだけの資金の余裕を持つことで、お子さんの可能性もさらに伸ばしてあげることができます。

一人ひとりの個性にあった教育も、高度な専門性を身につけるための教育も決して安いものではなく、急に準備するのは困難です。早め早めの資産運用は、お子さんの個性を伸ばしてあげるための必要な条件といえるのではないでしょうか。
 

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教育費はどのくらいかかるのか?

個性を伸ばすためには、まず平均的なラインを知っておく必要があります。ここではいくつかの条件に沿って、平均的な教育費を見てみましょう。

幼稚園~高校卒業までのコスト

文部科学省の「平成30年度子供の学習費調査(以下、「学習費調査」)」によると、1人の子どもが私立と公立の幼稚園・学校に1年間通った場合に、親が支払う学習費の総額(学校教育と学校外教育の合算)は平均でこのようになっています。

図1:幼稚園~高校までの教育費
 
(出典:文部科学省「平成30年度子供の学習費調査」を元に作成)


実際にはその時々の経済状況で、年齢・学年ごとの費用は増減しますが、全年代を単純に合計すると「すべて公立」で高校卒業まで541万円、「すべて私立」で1,830万円の教育費がかかることがわかります。さらに「学習費調査」では、公立に子どもを通わせる場合、塾や習い事など学校外教育の費用が全体の約4~6割を占めるのに対して、私立では学校教育費が約5~8割と、比率がほぼ逆転する傾向も示されています。

大学でのコスト

では、大学入学から卒業まで、あるいは6年制医歯系学部卒業までのコストはどれくらいかかるのでしょうか。エフピー教育出版が、日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査結果」(平成28年度)と、文部科学省「私立大学等の平成27年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」「文部科学省令」、日本学生支援機構「学生生活調査結果」(平成26年度)から試算したデータを見てみましょう。

図2:大学生の教育費総額(平成26・27・28年度)
 
(出典:生命保険文化センター)

国公立と私立、文系と理系、自宅と下宿でそれぞれに大きな開きが出ることがわかります。親元から国立大学に4年間通った場合の524万円と比べて、親元を離れて私立理系に通った4年間では、実に2倍近くの1,074万円の費用が必要となります。

さらに親元を離れて6年制の私立医歯系に通うと2,957万円かかり、仮に高校まですべて私立に通っていたとすると、教育費の総額は4,800万円を超えることになります。浪人期間があれば5,000万円でも不足ということになるでしょう。

国公立大学院の学費は、国立大学法人法により学部と同額に定められており、入学費は28万2,000円、授業料は年額53万5,800円です(法科大学院の授業料は年額80万4,000円)。私立の入学費、授業料、施設使用費などは学校によって異なりますが、目安としては年間で国公立よりも20万円ほど高くなっています。

大学院生は給付型奨学金制度の利用や、助手・非常勤講師などで収入を得ることも多くなってくるため個人差が大きく、親が支出する教育費の全体は把握しにくいのですが、大学卒業までの教育費プラス数百万円は見込んでおく必要があるでしょう。

実際の教育費をシミュレーション

幼稚園から大学卒業までの教育費総額を、図1と図2の数字をベースにして、パターン別にシミュレーションしてみましょう。ここでは大学を国立大学、私立文系、私立理系に絞って、高校までの公私の組み合わせで教育費がどう変わるのかを見ていきます。

(1)すべて公立
大学も自宅から通った場合は1,065万円、大学から下宿した場合は1,353万円です。「すべて公立」コースは、お子さんの努力がカギになることはもちろんですが、通学可能な地域に有力な国公立大学があり、オープンキャンパスや子ども向けのイベントなどに参加していれば、進学の動機付けにもなりそうです。

(2)高校まで公立、大学から私立
大学生の7割以上は私立大生ですので、このパターンはもっとも標準的といえるでしょう。文系の場合は自宅通いで1,209万円、下宿が1,474万円です。理系では自宅1,350万円、下宿1,614万円となります。「自宅+文系」と「下宿+理系」では、約400万円の差が出てきます。

(3)高校が私立
ここからは表にして見ていきましょう。高校から私立の進学校に通わせるケースもよくあるパターンといえるでしょう。

図3:
 

「国立+自宅」と「私立理系+下宿」では約550万円の差が出ます。いずれにせよ大学から自宅を離れる場合は、最低でも1,500万円の準備が必要です。

(4)中高私立
近年、中学・高校の6年間を連結し、独自のカリキュラムで教育を行う中高一貫校が注目を集めています。中学受験という難関はあるものの、14~16歳という伸び盛りの時期を受験勉強に割くことなく、高度な研究や留学などの体験で充実させられるのも大きな魅力です。表は中高一貫校に限らず私立中学・高校に通った場合の数字ですが、参考にしてみてください。

図4:
 
 

(5)幼稚園だけ私立
望んで私立幼稚園にお子さんを入れる家庭だけでなく、地域によっては大量の待機児童が発生しているなかでも、なんとか私立幼稚園にお子さんを通わせるケースもあるでしょう。次は幼稚園だけ私立、小中高は公立に通った場合のシミュレーションです。

図5:
 
 

ここに挙げたいくつかのシミュレーションについては、2020年4月から始まる国の「私立高校授業料実質無償化」により、額の変動が見込まれます。公立高校はすでに無償化されていますし、助成を受けるには「年収590万円未満(目安)」という制限もあるため、すべての世帯で劇的に教育費が減るわけではありません。

図6:私立高校授業料無償化
 
(引用:文部科学省「2020年4月からの『私立高等学校授業料の実質無償化』リーフレット )


現在、公立高校に通う生徒への国の就学支援金は11万8,800円で、授業料はほぼこの枠内に収まります。しかし図1を見返すと、公立高校の3年間では137万円の教育費がかかっています。つまり、教育費における授業料の割合は大きくはなく、大半を占める学校外教育のコストは、今後も親が工面していく必要がありそうです。

経済の不調が長引き、実質所得の向上がなかなか見込めないなかで、1,200~3,000万円の資金をどのように貯めていけばいいのでしょうか。次に、その具体的なプランを探っていきます。

教育費を確保する手段は?

ここまで公立・私立の組み合わせによる教育費の総額を見てきましたが、言うまでもなくこの額が突然必要になるわけではありません。

高校まで公立に通わせる場合、大学の受験勉強から入試、入学のタイミングで大きなお金が必要になります。対して私立の場合、小中高とも初年度は100~200万円のお金がかかりますし、私立大学の初年度納入金(授業料、入学金、施設整備費)の平均は、文部科学省の平成30年度調査では133万6,033円となっており、やはり入学のタイミングでかかるお金をどう準備しておくかが問題となってきます。

お子さんが2人以上いる家庭の場合はとくに、大きなお金がかかるタイミングをあらかじめ把握しておくことが重要になります。3歳違いのお子さんがいれば入学のタイミングが2回重なりますし、1歳違いや2歳違いの場合は2年連続でお金がかかる期間が複数回発生します。

必要となる小額の費用については日頃の倹約で貯めておくこともできますが、特定のタイミングで必要となる大きなお金は、長期的に計画を立て、積み立てや資産運用により準備する必要性が出てきます。

では積み立てや運用には、どのような方法があるのでしょうか。

児童手当を積み立てる

現在の児童手当では、3歳未満の子どもは満3歳の誕生月まで1人につき月額1万5,000円、3歳以上小学生以下については1人目と2人目までは月額1万円、3人目以降であれば月額1万5,000円が支給されています。

中学生は15歳に達した日以後の最初の3月31日まで、月額1万円が支給されます。このため4月生まれの児童は、3月生まれの児童より11万円多く支給されるなど、実は誕生月によって支給総額には1~11万円の差が生まれます。

児童手当をまったく使わずに、中学卒業まで貯金するとします。4月生まれの場合は2人目までは1人当たり192万円、3人目以降は216万円が貯蓄されることとなります。

児童手当は年間3回に分けて、4ヵ月分が指定の口座に振り込まれます。例えば小学生が2人なら一度に8万円、小学生2人と未就学児1人なら14万円と、一定額が振り込まれます。

これを普段使っている普通口座に入れておくだけでは、日々の出費として消えていってしまうかも知れません。しかし、例えば入金のタイミングで貯蓄口座に自動振替するなどの手続きをしておくことで、「手つかず」の状態を保つことができます。

さらに児童手当を原資に、銀行口座よりも利回りの良い学資保険や投資信託などで運用すれば、より多くの金額を準備しておくことも可能です。児童手当にプラスして数万円の積み立て・運用を行えば、志望専攻の変更で予想外の教育費が必要となった時の備えとなるでしょう。

児童手当には下記の表のような所得制限がありますが、限度額以上の所得がある人の対策としては、児童手当が支給されている「つもり」で月々の積み立て額に追加する、「つもり積み立て」といわれる方法もあります。

図7:児童手当の所得制限
 
(出典:内閣府「児童手当 所得制限限度額表」)
 

学資保険

「子どもが生まれたらすぐに加入する」という人も多いほど、学資保険は非常に普及しています。しかし銀行預金と何が違うのか、あるいは生命保険と何が違うのかを理解しないまま、なんとなく「みんなが入っているから」と、手堅い積み立ての手段として活用している人も多いようです。

まず理解しなければならないのは、学資保険は銀行預金と比べると「元本保証が弱い」ということです。実際に「保険」機能にウエイトを置いた保険では、積み立てた保険金に対する満期の受取金の比率を指す「返戻率(へんれいりつ)」が100%を切っている商品もあります。

返戻率が100%を超えている商品でも、保険会社が倒産すれば保険金は返済されません。金融機関が倒産した場合は、預金口座は一定の元本と利息が保証されますが、生命保険にはそのような仕組みはありません。リーマンショックによって起こった金融危機では、米国保険最大手のAIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)が破綻し、最終的には政府による救済措置が採られたものの、世界同時不況の一因となりました。

さらに、途中解約すれば受取金が元本を割ってしまうので、資金繰りが厳しくなった場合に取り崩しにくいこと、同じ理由で金利が上昇した場合も別の金融商品への乗り換えがしにくいといったデメリットがあります。

では学資保険のメリットは何かというと、第一に無事満期を迎えた場合は銀行預金よりも利回りが良い商品が多いことです。そして第二に、契約者が死亡したり働けなくなったりした場合はそれ以降の保険金が免除されるので、もしものことがあったとしても、お子さんが学業を全うしやすくなります。

返戻率は保険金の額、満期までの期間、解約時の受取金の額などによって変動しますが、現在人気があるのは103~108%あたりの商品です。もし住宅ローンがある場合は、学資保険に加入するよりもローンの繰り上げ返済を行ったほうが、資産全体で見た時の「利回り」が良くなるといったケースもあり得ます。銀行預金と学資保険だけを比較するのではなく、大局的な判断を心がけましょう。

保険としての機能でいえば、貯蓄と生命保険の組み合わせが、学資保険よりも有利になる場合もあります。ご自身のライフスタイルや人生設計と照らし合わせて、加入の是非を考えてみてはいかがでしょうか。

ジュニアNISA

銀行預金や学資保険と比べるとリスクは高い代わりに、運用がうまくいけば利回りもぐっと良くなるのが株式・投資信託です。分配金や譲渡益などの投資収益には20%(特別復興所得税を含めると20.315%)の所得税が課税されますが、2014年から始まった「NISA(少額投資非課税制度)」の専用口座を開設すれば、年間120万円までの新規投資により発生する収益には最大5年間非課税枠が設けられ、個人による投資が活性化しつつあります。

さらに2016年1月からは、未成年者を対象にした「ジュニアNISA(未成年者少額投資非課税制度)」が始まりました。これは、親や祖父母からの贈与金を、親権者が本人の代理として運用し、その運用益を高等教育資金などに充てることを主な目的としています。ジュニアNISAでは、年間80万円までの新規投資による収益が最大5年間非課税となりますが、18歳まで原則として払い出しができません。

図8:ジュニアNISAの仕組み
 
(出典:金融庁「ジュニアNISAの概要」)

ジュニアNISAは2023年での廃止がほぼ決まっており、投資可能期間は2023年までとなっています。廃止後の新規投資による収益はすべて課税対象となりますが、2023年に購入した金融商品については2027年まで非課税で保有することができます。

ジュニアNISAの規定では、3月31日時点で満18歳である年の前年12月31日までは原則として払い出しができないため、推薦入試に合格した場合の入学金に充てられないケースも多く、大きなデメリットとなっていました。しかし政府が2019年末に閣議決定した「令和2年度税制改正大綱」では、ジュニアNISA廃止により払い出し制限も撤廃されると明記されています。

新規投資可能期間は2020年を含めて4年弱しか残っていませんが、今から始めると320万円の元本と延べ8年分の投資収益を、非課税のままで18歳までプールしておくことができることになります。さらに途中での払い出しもできるようになる可能性が非常に高く、皮肉にも廃止が決まったことで使い勝手が改善されたともいえます。

しかしながら元本保証はまったくないために、教育資金を目減りさせてしまう可能性もあります。一般に、資産の3割程度を投資に充てるのが望ましい比率だといわれていますが、教育資金についても「投資は3割まで」を目安と考えたほうが無難ではないでしょうか。

つみたてNISA

NISAをローリスク、小額、長期間にしたものが「つみたてNISA」です。手数料が低く、分配金の支払い頻度が低いなど、長期の積み立てや分散投資に適した投資信託商品が対象となっているため、大きな収益は望めない代わりに投資初心者でも利用しやすいことが大きな特徴です。

つみたてNISAの新規投資額で毎年の上限は40万円、最長で20年間非課税のままで保有することができます(非課税投資枠は20年間で最大800万円)。つみたてNISAは2037年までが期限となっていましたが、「令和2年度税制改正大綱」には5年間の延長が盛り込まれています。またジュニアNISAと違い、払い出しに制限はありません。ローリスクで使い勝手の良い投資信託といえます。

NISA口座は1人1つまでしか開設できず、NISAとつみたてNISAを両方持つことはできません。しかしジュニアNISAも活用すれば、夫婦と子どもで3つのNISA口座を運用することができます。貯蓄や学資保険との比率やリスクのとり方は家庭によりそれぞれですが、教育資金という性格上、複数の方法を組み合わせてリスクを分散させることが重要です。

奨学金

日本での奨学金制度として最も知名度が高いのは日本育英会ですが、2004年に日本国際教育協会、内外学生センター、国際学友会、関西国際学友会と合併し、以降は「日本学生支援機構(JASSO)」となっています。

JASSOの国内向けの奨学金には、給付型奨学金、第一種奨学金(無利息)、第二種奨学金(利息付)の3種類があります給付型の対象者は「経済的理由により進学が困難な状況にある世帯の優れた生徒」で、審査はかなり厳しいものと認識しておきましょう。

第一種奨学金も、高校3年間の成績が平均3.5以上、生計維持者が住民税非課税であるなど、給付型に準じた審査基準となります。

第二種奨学金は学業成績が平均以上で、例えば3人家族の場合は給与所得が1,009万円以下と、審査基準は比較的緩やかです。大学の場合月額2~12万円で貸与額を設定できますが、年3%を上限とした利息を付けて返済する義務があります。

平成28年度の調査では、48.9%の学生が奨学金制度を利用しています。その一方で、大学在学時に貸与されていた奨学金を就職後に返せなくなる人が増えており、大きな社会問題ともなっています。貸与型奨学金の活用は、お子さんの意思を十分に確認した上で、無理のない貸与額を設定することが重要です。

またお子さんの成績が優秀であれば、大学独自の奨学金制度や、地方自治体の奨学金、企業・民間団体による奨学金制度が利用できることもあります。JASSOなど他の奨学金との併用ができないなどの制限もありますが、よく調べた上で無理のない利用を検討していけば、有力な教育資金となることでしょう。

教育資金はいくつかの選択肢を組み合わせて準備しよう

教育費は、漠然と考えているよりも大きくなる傾向にあります。「教育費=学資保険で積み立てるもの」といった固定観念を取り払い、さまざまな組み合わせを吟味してみましょう。そうすることでお子さんにもっと大きなチャンスを与えられるような、親としての可能性も広がっていくのではないでしょうか。
 

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