キャリア・教育
-
2019.12.26

今の会社を「辞めたほうが良い」と言えるケースは

(画像=LightField Studios/Shutterstock.com)
(画像=LightField Studios/Shutterstock.com)
(本記事は、渡部 卓の著書『40代から伸びる人 40代で止まる人』きずな出版の中から一部を抜粋・編集しています)

転職に失敗はない

変化を肯定するという意味で、キャリアを考える上で一般的なのは「転職」でしょう。私自身、いまほど転職が一般的ではなかった1990年代からいくつか会社・業界を変え、会社を興したりもしたので、転職・起業・独立は推奨派です。

先にも述べたように、私が最初に転職したのは30代になってからでしたが、これは別に「最初の会社には10年くらい在籍してじっくり仕事をしたい」と思ったわけではありません。

当時はまだ現在のような転職支援サービスもなかったからです。いまでしたら20代で転職するのもいいでしょう。

私が思うのは、「転職に失敗はない」ということです。

転職を決意しても、多くの人は不安を抱くはずです。もしかしたら給料が下がるかもしれないし、人間関係がうまくいかなくなるかもしれない。そもそも、転職先の会社の企業文化と合わないことだってありえるでしょう。

しかし、「変わること≒良いこと」という見方に立てば、どうでしょうか。環境を変えることで、自分が働く上で本当に大事にしたいことがわかってきます。

たとえば、ある人は「自分のやりたいことができなくても給料が高いほうがいい」と考えるかもしれませんし、「給料は安くなってもいいから、やりがいを持って働けるほうが幸せだ」ということに気づくかもしれません。これらも、いくつかの職場を経験して比べてみて、はっきりすることです。
その意味で、すべての転職は、少なくとも失敗ではありません。

ですから、転職が早すぎるとか、転職の回数が多すぎるといった心配は無用です。私はいままで7回転職していますが、失敗は一度もないと思っています。

あるいはこう考えてもいいでしょう。「転職は旅行だ」ととらえるのです。場所を移し、新しい経験をするという意味では転職は旅行に似ています。

旅行に成功も失敗もあるでしょうか?もちろん、ホテル選びに失敗したとか、旅行先の天候が悪かったといった、ちょっとした失敗はあるでしょう。でも、それも含めて旅行です。

ホテルの夕食がいまいちだったからといって「ああ、この旅行は失敗だった......」と頭を抱える人はいません。ホテルの外で食べるなり、もっと食事がおいしいホテルを探せばよいだけの話です。

転職に成功も失敗もないというのも同じです。仮に年収が一時的に落ちたとしても、そのことによって転職のすべてが失敗だったことにはなりません。

転職は旅行のようにおもしろく、そこには新しい発見があります。そうとらえれば、気も楽になるのではないでしょうか。

自分が成長できているかどうかチェックする

転職はそもそも成功、失敗や、適切な回数、タイミングなどの基準が当てはまらないものです。

もちろんその人のタイミングによっては、転職しないほうが良いケースもあるのは事実です。いまの職場から移ったほうが良いか、それともとどまったほうが良いか自問自答するとき、そのセルフチェックには、「自分が成長できているかどうか」を目安にするとよいでしょう。

たとえば半年前、1年前の自分自身と比べて、いまの自分はどれくらい成長しているか。ビジネスパーソンとしてどのくらい新しいことに挑戦し、できることが増えたか、人脈が増えたか、などを確認しましょう。

もし、やっていることが半年前や1年前となにも変わらず、自分の能力や心持ちなども変化していないなら、受動的な現状維持状態になっている可能性があります。それを理解した上で受け入れるならいいですが、その状況に対して不安を抱いていたり、もっと自己の成長を望んでいたりするなら、転職のための行動に移すべきといえます。

ここで留意すべきは、あくまでも比べる対象は自分自身である、というところです。ありがちなのは、自分と年齢が近い社内の人間、あるいは同級生の年収などを自分と比較して焦りだし、転職を考えるケースです。

年収はその人の実力以外にも業界や会社の規模などによって変わるものですから、単純に比較できません。「隣の芝生は青い」ということわざもあるように、他人と自分を比較して行動していると、いつまでも満たされることがないのです。

なお、転職は最終的にはご本人が決めるべきですが、今の会社をほぼ辞めたほうが良いと言えそうなケースもあります。それは過労やハラスメントによってうつ状態になっている社員が多く発生しているような場合です。

2015年のクリスマスに、某大手企業の入社間もない女性社員が自らの命を絶つという、とても痛ましい事件がありました。大々的にニュースになったのでご存じの方も多いでしょう。彼女の自殺の原因は過労だったのではないかと言われています。

過労やハラスメントなどによってうつ病になったり、それに近い状態になると、判断能力も著しく低下します。亡くなった彼女がどういうメンタルの状態だったかはわかりませんが、辞めたほうが良いという判断がすでにできなくなっていたのかもしれません。

私は産業カウンセラーとビジネスコーチの資格を持っており、メンタルヘルスも専門です。もし私が彼女の労働環境や過重労働の話を、悩み始めた段階で聞けたら、会社を辞めることをすすめたり、労働環境の改善を会社側に提言したりすることができたかもしれません。

ところが、現実には彼女のように追い込まれている人に対して「もっとがんばれ、我慢のしどころだ」「(追い込まれて判断も決断もできない状態なのに)転職したほうが良い」と安易に、そして不適切に言ってしまう人が後を絶たないのも事実です。そもそも、そのような状況になるまで放置することは、経営の本質が問われます。

もし、いまの仕事がつらくて、毎日が憂鬱だとしたら、それは転職を考える立派な理由になり得るのです。

 
渡部 卓(わたなべ・たかし)
1979年大学卒業後、モービル石油(株)に入社。その後、米コーネル大学で人事組織論を学び、米ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院で MBAを取得 (1986~88年)。1990年日本ペプシコ社入社後にアメリカ本社勤務を経て、AOL、シスコシステムズ、ネットエイジでの幹部を経験し、2003年(株)ライフバランスマネジメント代表取締役社長に就任。2014年4月帝京平成大学現代ライフ学部教授(常勤)就任。 職場のメンタルヘルス・ハラスメント対策、人生 100年時代のワーク・ライフコーチングの第一人者として、講演、企業研 修、新聞・雑誌連載、TV出演等マスコミでの実績は海外も含めて多数に上る。

文・ZUU online 編集部/ZUU online
40代から伸びる人 40代で止まる人
渡部 卓(わたなべ・たかし)
1979年大学卒業後、モービル石油(株)に入社。その後、米コーネル大学で人事組織論を学び、米ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院で MBAを取得 (1986~88年)。1990年日本ペプシコ社入社後にアメリカ本社勤務を経て、AOL、シスコシステムズ、ネットエイジでの幹部を経験し、2003年(株)ライフバランスマネジメント代表取締役社長に就任。2014年4月帝京平成大学現代ライフ学部教授(常勤)就任。 職場のメンタルヘルス・ハラスメント対策、人生 100年時代のワーク・ライフコーチングの第一人者として、講演、企業研 修、新聞・雑誌連載、TV出演等マスコミでの実績は海外も含めて多数に上る。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます