キャリア・教育
-
2019.11.21

【前篇】「本当は、ずっと愚かで、はるかに使えるAI-近未来人工知能ロードマップ-」著者、山田誠二教授が語る2020年以降の世界

(写真=TAW4/Shutterstock.com)
(写真=TAW4/Shutterstock.com)
日常生活の中で、多くの人が知らないうちにAIを利用しています。スマートスピーカー、来客対応を行うロボットにもAIが利用されています。AIの台頭で社会が大きな変革を迎えようとしている今、人間はどのようにしてAIを活用していけばいいのでしょうか。

「本当は、ずっと愚かで、はるかに使えるAI-近未来人工知能ロードマップ-」の著者であり、人工知能に関する研究を行っている国立情報学研究所の山田誠二教授に、AIの現状とこれからの社会でAIが担っていく役割について聞きました。

「AI=人間より優れたもの」とは限らない

哲学者ジョン・サールは「強いAIと弱いAI」という考え方を提唱しました。人間のような知能と意思を持つ人工知能を強いAIと呼び、データを分析して答えを導き出し、人間の指示に従う人工知能を弱いAIと呼んでいます。

強いAIは、プログラムに組み込まれていない想定外の状況が起こっても、人間のように過去の経験に基づいて対応できるといいます。しかし、強いAIの実現はほぼ不可能だと、著書の中で山田教授は語ります。人工知能やロボットと聞くと、多くの人はこの強いAIを思い浮かべがちです。見た目も知能も人間と変わらない、それどころか人間を上回るようなものと考えている人もいるでしょう。

ところが現在、幅広く利用されているのは弱いAIと呼ばれるものです。自動翻訳機や自動車の自動運転機能、対話ができるスマートスピーカーやロボットなども、AIが自ら意思を持って行っているわけではなく、人間がプログラムした通りに動いているだけなのです。

人間のように過去の経験から対応を考えたり、常識から外れないように行動したりといったことはAIにはできませんが、与えられたプログラムのみをこなす場合は人間よりも優れた能力を発揮します。今後の世界でAIはどのようにして普及し利用されていくのか、主にビジネス面での活用について山田教授に聞いてみましょう。

工場が自動化。その時人間はどうする

――第4次産業革命やインダストリー4.0など、AIを活用する動きが盛んになっています。実際にはどのように活用されているのでしょうか。

山田:ドイツが進めるインダストリー4.0は、工場の全自動化と最適化を目指しています。AIは、工場内の機器が3ヵ月以内に故障する確率を予測して、故障する前に修理部品を発注しておくという作業や、何月にこれだけの受注がありそうだと予測してそれを少し上回る生産スケジュールを立てる、という作業が得意です。工場の運用の最適化は、今や人間よりもAIが行ったほうが効率的です。需要予測などを取り入れている企業はすでにあります。

大企業だけでなく、中小企業でもAIを導入して作業を自動化し生産性を向上させる必要がありますが、導入には数百万円単位のまとまった資金が必要になるため、費用対効果的にそれほど進んでいないというのが現状です。

――工場の全自動化が進む中で、従業員に求められる新しいスキルなどはあるのでしょうか。

山田:どのような企業にもAIに詳しいエンジニアやAIリテラシー(利用する能力)を持つ人材が必要になるのは確かです。AIリテラシーがないと仕事がなくなるということではなく、AIリテラシーを身につけていたほうが仕事面において有利になると思います。

近未来の世界はどうなっているのか

――著書の最初にある「近未来AIロードマップ」の中に、2040年以降は「AIと暮らす」ようになると書かれています。AIと暮らす生活とはどのようなものなのでしょうか。

山田:自宅でも職場でも、AIに囲まれた生活になるという意味で、「AIと暮らす」と表現しました。AI同僚やAI部下などが生まれ、活躍しているでしょう。現在でもAIは身近な場所で働いてくれています。音声チャットツールの中には、異なる言語を同時通訳してくれるものもあります。メーラーの迷惑メールフィルタリング機能にもAIが使用されています。

最近では、AIを天候予測に利用する動きが活発化したり、株の取引をAIが行ったりと、あらゆる場所でAIが活用され始めています。

AIとともに暮らしていく中で、大切なのは人間がAIについてよく理解することです。これから、人間はAIと協力してお互いの欠点を補いあいながら、それぞれ単体で取り組む以上の能力を発揮できると考えています。これをインタラクティブAIと呼びます。

現在、「XAI(説明可能なAI)」という、AIが出した答え・判断を説明するためのAIの研究が進められています。これは人とAIがともに信頼して活動するために必要なものです。なぜAIがその答えを出したのか、その理由が明確に分からなければ、人間はAIの判断を信用できません。またAIも、人間を理解するために人間の行動を予測できようになる必要があります。互いを理解して信用できるようになった先にあるインタラクティブ(双方向性)AIが実現することで、暮らしや仕事にもよい変化が現れるでしょう。

AIの現在と未来が見える「本当は、ずっと愚かで、はるかに使えるAI-近未来人工知能ロードマップ-」

AIと聞いた時、思い浮かべるイメージは人によってさまざまです。ロボットや機械学習やディープラーニング、あらゆるものの自動化、あるいは人間を超越したものだと考える人もいるでしょう。今回紹介した本のタイトルの通り、AIは多くの人が思っているよりもずっと愚かで、しかし使いようによってははるかに使えるツールなのです。

ただし、AIを「使えるツール」として利用するためには、人間がAIをよく理解しておかなければなりません。「AIのことがよく分からない」「もっと知りたい」のであれば、入門書としてこちらの本をおすすめします。

関連記事>>【後篇】AIで新たに生まれる「仕事」 人工知能の専門家に聞く「第4次産業革命の先」とは

著者プロフィール
【山田誠二】
1989年大阪大学大学院博士課程修了、同大学助手、講師、1996年東京工業大学大学助教授を経て、2002年より現職。専門は人工知能、HAIヒューマンエージェントインタラクション。ここ10年の研究テーマは「人間と協調する人工知能」であり、現在HAI、IIS知的インタラクティブシステムを中心にさまざまな研究プロジェクトを推進中。人工知能学会前会長・顧問。
 

>>その他のおすすめ記事
富裕層だけではない!?幼稚園からお受験させるのはどんな家庭?
英語の次に学ぶべき「第三言語」は何か?+αで習得するメリット
そのまま40代を迎える前に。30代が身につけておくべき3つのビジネススキル
30代から考えたい「必要な人脈」と「不必要な人脈」
外資系企業へ転職するために必要な2つの基本的なスキルとは